BtoBメーカーのウェブ活用

第1回:ウェブ活用の現状と可能性

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

BtoBで活用できるウェブの特性2:双方向性機能

ウェブのもう一つの特徴は双方向性にある。情報が一方通行ではなく、顧客の要求に応じた反応を返せることがその意味だが、BtoBメーカーのウェブサイトにおいて重要な役割を果たす双方向性機能は、製品選択支援やシミュレーション、そしてサポート系ツールである。

製品選択支援と一言で言ってもその可能性は様々だ。最もオーソドックスなのは、例えば電子部品を選択する場合に、スペックなどの諸条件を入力することで、最適な部品を提示する機能であろう。また、最近は比較機能も実装されるようになってきた。これにも色々な種類があり、自社類似製品との比較のみならず、過去製品や他社製品との比較まで行えるものもある。また取り付け可能なオプション品を選べる機能や取り付け後の見積もりを行う機能は、PCサイトでおなじみだが、海外のBtoBメーカーサイトでも見かけるようになってきた。

シミュレーションもウェブの登場によって気軽に利用ができるようになった双方向性機能だ。シミュレーションの操作はウェブ上で実施することもあれば、シミュレーションソフトをダウンロードさせて、ユーザーのPC上で実施させる場合もある。機械のライフタイムコスト、購入・リーシング費用、性能チェック等が典型的なシミュレーションだが、CADデータを提供し、簡易的に設計を行なったり設置・稼動に無理がないかのチェックを支援することも、広い意味でシミュレーション機能と言えるだろう。このような複雑なやり取りは従来であれば、営業マンに尋ねた後にしばらく時間をおいて回答があったり、営業マンが持ち歩くPC上でシミュレーションを行っていた訳だが、営業マンを介していては、時間がかかったり、設定条件の数には限度があるなどの制限があった。いつでもどこからでも存分に試してみることが出来るウェブ上のシミュレーションは、顧客の興味を冷めさせない上で、重要な役割を果たすはずだ。

表2.双方向性機能
双方向性機能 具体例 メリット
製品選択支援 条件入力による製品選択 機種名、用途、要求性能などによる検索で、膨大な製品群の中から適切な製品を探しだせる
自社製品比較 複数の類似製品から、より適切な製品を見つけることができる
過去製品比較 今使っている製品と比較すれば、検討製品の性能がイメージしやすい
他社製品比較 購買プロセスにおける競合比較の資料作成が容易になる
シミュレーション 製品のライフタイムコスト 購入後の試用期間をも含めたトータルの費用を簡易的に知ることができる
オプション取り付け・見積もり 膨大なオプションの中から取り付け可能なものを選択し、総費用をチェックできる
購入・リーシング費用 支払い条件の設定で購入・リースにかかる費用がわかる
性能チェック 特定条件下での性能をチェックできる
サポート 部品購入 必要な部品の検索・購入がいつでもできる

BtoBメーカーのウェブ活用が進まない理由

ただし残念ながら、日本のBtoBメーカーのウェブサイトを見渡すと、制約のない情報発信にせよ、機能提供にせよ、その特徴を存分に活かしたウェブサイトはあまり見当たらない。先述の営業マン重視のカルチャーもその一因だが、その他にもいくつかの理由がある。

一つには、長期的なウェブ戦略が存在しないことが挙げられよう。これはBtoB、BtoCを問わない問題だが、ウェブ活用のプレゼンスが企業の中で急速に上がる中、ウェブ担当者は日々のメンテナンスに精一杯で、自社の事業にウェブをどう絡ませていくのかということを、じっくりと考える余裕がないのが実情だ。

二つ目に、主管部署の問題がある。ウェブサイトは1990年代半ばから企業に使われるようになった新しいメディアだが、社外と広くコミュニケーションできる側面が広報に近いと解釈されたことから、コーポレートコミュニケーション系の部署が主管していることが多い。結果的にどちらかと言うと、IRを始めとするコーポレートの情報配信やブランディングに絡む施策が中心で、いかに多くの人に見てもらうか=アクセスを集めるに力点を置いている傾向が見られ、個々の製品情報提供のあり方ついては、事業部に任されている状況がある。

三つ目に、企業のウェブ活用の議論が、依然、購買プロセスの前工程に偏っていることが挙げられる。つまり、ウェブサイトに顧客を呼び込む施策については、検索エンジン対策やリスティング/バナー広告、CGM(Consumer Generated Media:インターネット上の口コミメディア)に他メディアとの連携など、様々な方法が議論されている。しかし、ウェブサイトに来た顧客に製品のことを深く知ってもらうためにどのようなコンテンツや機能を掲載するかについては、それ程話し合われていない印象がある。特に双方向性機能については、製品のデータベースが必要になるケースもあるなど、コスト的にも期間的にも負担がかかるため、こうしたサイト内でのおもてなし施策よりも、比較的低予算で短期に実施が可能な呼び込み施策に力を入れがちとなる状況がある。

「産業広告 2009年8月号」に掲載記事より

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