BtoBメーカーのウェブ活用

第2回:企業購買プロセスのウェブ化(1)

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

ウェブを通じて自社のことを余すことなく伝える

BtoBメーカーのウェブ活用を考える本連載の第1回では、情報量や場所・時間の制限を受けないウェブは顧客接点の少なさを補うものであること、およびウェブの持つ双方向機能が複雑な製品・サービス検討プロセスをカバー出来ることを述べ、BtoB企業におけるウェブ活用の潜在性の高さを説明した。

同時にBtoBメーカーでウェブの事業活用が進まない理由として、長期的なウェブ戦略の不在、広報・ブランディング寄りのウェブ活用視点、そしてアクセス数の獲得に偏った施策立案を挙げ、ウェブサイトに来訪した潜在顧客に製品・サービスを深く知ってもらう仕組みについては、まだまだ大幅な工夫の余地があることを指摘し、もっと積極的で広範な情報発信の必要性を訴えた。

そこで、第2回の今回と第3回では、ウェブの特性を活かして自社製品・サービスのことを余すことなく伝えるために出来ることを、企業購買プロセスの段階別に探ってみる。

リアルで行なっていることはウェブでも全てやる、を発想の出発点に

ウェブの潜在性を引き出すためには、全くゼロから何をすべきかを考える必要はない。もちろん、ウェブだからこそはじめて実現できるサービスもあるのだが、まずは、リアルで行なっている施策の全てをウェブで実現させる検討を始められたい。現在リアルで行なっている施策とは、顧客が真に必要とするものだけが淘汰されて残ったものであり、同等のサービスをウェブ上でも実現することが、ウェブ活用の第一歩となる。

残念ながら現状は、リアルの施策とウェブの施策との間に大きな乖離がある。メーカーが中間流通業者に配慮し、自社運営のECをウェブサイトの目立たない所で、実勢価格よりも高めの値段設定をして運営しているのは最たる例だろう。この場合、ウェブはリアルのチャネルを邪魔しないように抑制された形でしか活用されていない。それが最終顧客のためにはならないとしても、だ。現実の世界でこうした配慮が必要なことは理解できる。

しかし、これでは顧客視点に欠けていると言わざるを得ない。結局ウェブ施策立案にあたって、既存のやり方やチャネルへの気遣いが真っ先に立つために、ウェブをフル活用すると、最終顧客の満足度をどこまで極大化出来るか、という検討がほとんどなされていないのである。事業部門でのウェブ活用が進まないのは、ウェブが重要なチャネルと認識されていないからだが、それは上記の様な理由から、自身の事業におけるウェブの可能性についての徹底的な検討が行なわれていないことに起因している。

では、事業の中で、ウェブはどう位置づけられる可能性があるのだろうか。筆者は、様々なメディアの特性を包含するウェブは、企業の対外コミュニケーションチャネルの中でも、頭一つ抜けた存在になると予想している。さらには、企業内での利用の歴史が浅いことを踏まえると、最も活用余地の高いメディアだと考えている。筆者は、決してウェブ万能主義者ではない。ウェブもまたコミュニケーションチャネルの1つであり、伝達すべき内容やターゲットに応じてウェブも含めた様々な選択肢の中から適切なメディアを選ぶべきであることは論を待たない。

しかし、PCや携帯など、いつでもどこからでもウェブアクセス出来る現況下では、BtoBメーカー自身が運用するウェブを上回る速報性を持つメディアは無い。また、カタログをはじめとする紙メディアでは、情報量にどうしても制限が伴う。展示会は直感的な理解に優れるが、動画や3Dアニメで、より豊富なラインナップをウェブで提供することも出来るし、好きな時に閲覧できるなど、利用者にとっての利便性は高い。営業マンのきめ細かな対応も、ウェブでは難しいと感じる向きもあるかもしれないが、営業マンが記憶しきれない細かな情報や主要製品以外の情報は、ウェブであれば即時提供できる。また、楽天ではウェブに問合せが来てから2分以内に電話をすることで、顧客との距離をぐんと縮めることに成功している。これは、ウェブが営業マンほど迅速・細やかではない、という思い込みを逆手に取って顧客に良い驚きを与える、興味深いやり方と言えるだろう。

このように、あらゆるメディアの特徴を合わせ持つウェブは、様々なタイプのコミュニケーションを担えるため、購買検討プロセスのほとんどはウェブ化出来るはずなのだ。BtoCの例を見ても、リアルとウェブを区別しないサービスが伸びている。当初ネットスーパーは、生鮮食品を自分の目で確かめずに買うことなど難しいと言われていたが、商品選択に気を使い、顧客が自分で選ぶのと同等の品質を実現したことで、消費者に受け入れられた。米GMは2009年8月現在、乗用車の契約までをもウェブ上で済ませる実験を進めている。

結局、同じ行為をするのにリアルを使うかウェブを使うかは、顧客が選択すれば良いことであり、既存チャネルを存続させるために、ウェブで本来出来ることまでをも抑制するのは、大きな機会損失だ。ネットスーパーやGMの例を見ても、ウェブで出来ない領域はどんどん小さくなっており、BtoBでも同様の動きとなるのは時間の問題だろう。

そこで、企業購買プロセスの各段階がどうウェブ化出来るのか、BtoBの特殊性を念頭に開発されたASICAモデルをベースに考えてみたい。

「産業広告 2009年9月号」に掲載記事より

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