BtoBメーカーのウェブ活用

第2回:企業購買プロセスのウェブ化(1)

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

課題(Assignment)段階のウェブ活用

購買プロセスの初期フェーズでは、顧客は必ずしも自身の欲するものを把握している訳ではない。あるのは解決すべき“課題”である。故に製品を売り込む側は、顧客の課題を把握しなければならない。だが、顧客に「どんな課題がありますか?」と聞いても、顧客自身がそれを整理できている訳でもないので、対話を繰り返しながら課題を明らかにする必要がある。

これは一見、営業マンでなければ不可能なようだが、潜在顧客との貴重な接点であるウェブサイトを活かさない手はない。課題発掘のための最も基本的な手がかりは、問合せである。問合せは、顧客自身が記した課題解決要求であり、課題を把握する重要な手がかりとなる。ウェブ主管部門は、担当部署への転送で精一杯かもしれないが、一度特定期間の問合せを仔細に分析してみたい。ニーズやクレームにも地域性やトレンドがあることがはっきりわかるはずだ。また、頻繁ではなくとも、意外な顧客からの質問や製品の使用法など、想定外のニーズを発見できるのも問合せだ。

また、SNS(Social Networking Service)における業界コミュニティも、顧客の本音や問題意識を知る手がかりとなる。BtoCでは、SNSを口コミの場として活用する方策が議論されるが、顧客が見えにくいBtoBの場合は、顧客の関心事を知る貴重な機会と考えたい。ちなみにSNS最大手のmixiでは、石油化学、工作機械、電子部品、医療機器など、ありとあらゆるBtoBコミュニティが形成されている。

課題発掘につながるウェブ施策の上級編としては、社内スタッフによるブログが挙げられる。米大手プロセス制御用計装機器/システムベンダーのEmerson Process Managementでは、分散制御システムのマーケティング責任者が、業界で話題のトピックについて自社スタッフのコメントを引用しながら意見を述べたり、自社で取り組んでいるプロジェクトを紹介している。(図1)

図1.メーカーのブログ:Emerson Process Management(別ウィンドウが開きます)

自動車メーカーのブログは車種ごとに立っており、内容も当該車種に特化しているため、その車に興味を持っている人の背中を最後に一押しする、もしくは、すでに所有している顧客のためのコミュニティという側面が強い。しかしEmersonのブログは、製品群の担当者が執筆しているため話題の範囲が広い。また、ブログの記事はアプリケーションや産業分野別に分類されており、特定製品を推すのではなく、自社の知見・経験を“さらす”場となっているため、Emersonの分散制御システムの総合力を知るためのちょっとしたデータベースといった趣だ。ブログには担当者のコンタクト先が記載されており、潜在顧客の課題を吸い上げるための重要な役割を果たしている。

本ブログは2年半前の2006年3月の開始以来、1日1本のペースで更新されており、現在は約1,000の記事が公開されている。また、特定製品群のマーケティング責任者が担当しているため、話題が広く、またマネジメント視点も備えている。そして、上級管理職の主体的関与は、社内の専門家の協力をタイムリーに仰ぐ上で、重要な役割を果たしている。

このようにEmersonのブログは、かなりしっかりした体制の下で運営がなされている。基本的に情報発信には消極的な日本企業が、今すぐ、ここまでの体制を整えることは容易ではないだろう。しかし、需要者がどこにいるのかわかりづらいBtoBメーカーにとって、営業マンによる課題発掘だけでは、大海に垂らす1本の釣り糸に等しい。それを補う撒き餌的手段が展示会だが、それでも短い開催期間、限られた情報量、来場の手間、開催コストなど、様々な制限がある。その点、本当にニーズがあるか良くわからない情報までを含めて“さらせて”おけるブログの、極めて長持ちする撒き餌としての効果には留意しておきたい。

「産業広告 2009年9月号」に掲載記事より

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