BtoBメーカーのウェブ活用

第3回:企業購買プロセスのウェブ化(2)

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

承認(Consent)段階のウェブ活用

BtoBの購買プロセスであるASICAモデルの承認ステップでは、候補を絞り込んだ購買担当者は、同僚や上司などの関係者から承認を得なければならない。本人が良いと感じればすぐに購入できるBtoCにはない、BtoBに特徴的なステップだ。

説得の対象となる関係者は、その製品を利用する立場か否かによって、大きく2つに分かれる。同僚はその製品を使う立場であることが多い。担当者は同僚も含めた利用者グループの中から製品選択・購買を任されたに過ぎず、担当者も同僚も製品選択の視点は、性能や使いやすさ、納期という点で一致している。ただし同僚は、担当者が選んだ製品とは異なる候補を挙げてくる場合があるため、担当者の製品がなぜ他よりも優れるのかということが説明できなければならない。

一方、予算権限者である上司の視点は、予算をいかに無駄なく効果的に使うかということにあるため、メーカーの知名度や実績、安定性、および費用対効果に着目することになる。製品に関する知識が豊富とは限らない上司には、その製品を選ぶ理由を簡潔に伝えなければならない。

この多様な視点に応える上でも、情報量や時間に制限のないウェブサイトは、とても役に立つ。部内の同僚や上司に対し、その製品の購入を推奨する場面を想像してみよう。担当者は自身で、製品の基本的な情報や選択理由をプレゼン資料にまとめなければならない。ウェブサイトならば、こうした情報を加工可能な形で提供することが出来る。スペックのエクセル形式でのダウンロードは基本的な機能だが、欧米では、シミュレーション結果やウェブ上で作成した比較表のダウンロード機能を備えるサイトも増えている。残念ながら、日本のBtoBサイトのスペック情報は、加工性の低いHTML(通常のウェブページ)かPDFで提供されていることが多い。紙の時代は完成された形での情報提供しか出来なかったが、ウェブを通じたコミュニケーションにおいては、情報利用者の加工ニーズにも応えていかねばならない。

上司が最も関心があるのは、導入の効果だ。効果の試算機能は、単純にコスト削減額を算出するものから、旧モデルとの比較、競合他社との比較など、様々なバリエーションがある。独シーメンスのウェブサイトでは、産業用モータの効果試算ソフト(図1)を無料で配布しており、利用者は特定条件下での性能を過去製品と比較したり、価格上昇分をどの位の期間で回収できるかを試算したりすることができる。このシミュレーションツールの使用法を分かり易く記した資料もダウンロードすることが出来るのだが、丁寧なことに、練習問題まで付いている。9言語での使用が可能であり、このツールを使ってもらいたいという、シーメンス社の意気込みが感じられる。

図1.効果試算機能:Siemens(別ウィンドウが開きます)

スペックや効果試算は承認に必要な最低限の情報だが、同僚が提示する他の製品候補に比べた優位性を示すには、もうひと工夫が求められることもあるだろう。米アナログ・デバイセズでは、自社のチップセットを選んでもらうための様々なコンテンツを提供している(図2)。同社サイトでは、実際の設計に役立つ回路集やサンプル品の無料提供によって試作を促し、チップ単体に関する数値情報から一歩進んだ説得力あるデータを作成するためのサポートをしている。

図2.実用回路集・サンプル提供:Analog Devices(別ウィンドウが開きます)

ヴァーチャル展示会も、今後活用が増えてくるだろう。物理的な展示会に比べて参加者で6割、主催者側では2割しかコストがかからないことから、純粋なコスト削減目的で注目を集めているが、現地に足を運ぶ時間のない上司に製品のデモを見てもらうなどの使い方も考えられる。とかく文字では伝えにくい製品の特性を直感的に理解させるのに、うってつけのコンテンツと言えるだろう。

「産業広告 2009年11月号」に掲載記事より

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