BtoBメーカーのウェブ活用

第3回:企業購買プロセスのウェブ化(2)

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

企業購買プロセスのウェブ化に向けて

前回と今回の2回に分けて、企業購買プロセスのウェブ化にどのような可能性があるのかを説明してきた。紹介した事例のいくつかはすでに何年も前から存在しており、機能も随時強化されている。ユーザーからの支持がある証であろう。

今回の連載にあたっては、読者にとって身近な事例をお見せしたかったので、日本企業のサイトを探しまわってみたが、結果的には大半が欧米企業のものとなってしまった。新しい機能も進んで取り入れる進取の気性が存在することや、すでに整備されている社内・代理店システム向け機能が再利用できることなどが、欧米企業のウェブサイトが一歩も二歩も先を行っている理由だが、日本企業がこのままで良い訳がない。

では、どうすれば良いのか?購買プロセスのウェブ化を進めるためには、(1)事業部の啓蒙、(2)グローバル視点の強化、(3)社内IT資産の棚卸、を行うことが必要だ。

(1)事業部の啓蒙

企業の対外コミュニケーションには、広報・宣伝部が企業や製品の認知を高め、事業部が個々の製品に関する詳細な情報を提供するという役割分担がある。大企業のウェブサイトは、広報・宣伝系の部署が主管することが多いが、本来のミッションに照らし、ウェブサイトにおいても企業・製品の認知度向上部分に注力することになる。ここで論じている購買プロセスのウェブ化は、当然、事業部がカバーしなければならないのだが、事業部のウェブ担当は日々のメンテナンスに追われ、長期的視点で取り組まねばならないこの手の施策は、どうしてもなおざりとなってしまう。事業部任せでは、この状況はなかなか改善されないだろう。

結局現状では、大企業のウェブ関連施策においてリーダーシップをとれるのは、広報・宣伝系のウェブ主管部署しかない。機能要件の詳細化や実際の開発は事業部主導でやってもらうにしても、他社事例を紹介するなどで、事業部門自身にウェブ活用の可能性と必要性を理解してもらうことは、購買プロセスのウェブ化を進める上での欠かせない一歩だ。

(2)グローバル視点の強化

とは言うものの、ウェブ主管部門が事業部とのコミュニケーションを怠っている訳ではないことは、筆者も理解している。しかしそれは、国内担当とのものに偏っていないだろうか。だが、日本では電話一本で営業マン・サービスマンが駆け付けられる営業網が出来上がっている。国内市場が飽和していることまで考えれば、新規投資を必要とする購買プロセスのウェブ化が真剣に議論されないのも、当然と言えば当然だろう。

翻って海外市場は、多くの日本企業にとって成長の源泉だ。しかし営業網は発展の途上にあり、顧客やニーズの所在もつかみ切れてはいない。営業やサポートにおける本社の支援も必ずしも十分ではない。また海外市場では、進んだウェブサイトを持つ欧米企業と競合する場面も多い。こうした背景から、事業部の海外担当は、ウェブの充実化の必要性を感じていることが多い。グローバルな視点を持つ彼らの声は、購買プロセスのウェブ化を推進する中核的な原動力となるはずである。

(3)社内IT資産の棚卸

欧米が進んでいるのは、良く出来た社内もしくは代理店向けシステムがベースとなっているからだと、先に述べた。紹介した機能の多くでシステムが絡むため、これらをゼロから作るとなるとそれなりのコストがかかる。しかし、社内のIT資産を棚卸ししてみると、性能シミュレーションやコンフィギュレータ(オプション構成・見積)、事例DB、デモCD、トレーニングビデオなど、ウェブ化すれば顧客に喜ばれる開発済みのソフトウェアやデータがいくつも見つかるはずだ。ソフトをウェブ上で利用できるようにするにはコストがかかることもあるので一概には言えないが、事業部内に眠るこうした資産を活用することが出来れば、予算や時間を節約しながら、購買プロセスのウェブ化を進めることが可能となるだろう。

結び

繰り返しになるが、事業部の巻き込みなくして、購買プロセスのウェブ化はあり得ない。広報・宣伝部に属するウェブ主管部門にとって、事業部セクションの機能・コンテンツに関わることは、これまでの広報・宣伝部のあり方に照らせば、その範囲を逸脱しているのかもしれない。だが、ウェブの登場で、これまでになく深い対外コミュニケーションが出来るようになったにも関わらず、事業部はその特性を活かせていない。

自社を理解してもらうことこそが広報・宣伝部の本来の責任だとするならば、事業部のウェブ活用を積極的に後押しすることは、ウェブ時代の広報・宣伝部の重要なミッションとなるはずである。

「産業広告 2009年11月号」に掲載記事より

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