BtoBメーカーのウェブ活用

第5回:連結視点とグローバリゼーション

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

サイト群整備は都市設計

読者は、自分の会社がグループ全体でいくつのウェブサイトを持っているのかご存知だろうか。日本企業の場合、中心となるco.jpの他に、商品ブランドサイトやプロモーションサイト、ECサイト、採用サイトなど、目的別に様々なサイトがあり、その周辺には子会社や代理店のサイトがある(図1)。代理店は資本的には別会社でも、当該国におけるブランドを背負うことも多く、サイト群の一部として意識はしておきたい。そしてこの塊が国や地域ごとに存在する。日本の上場製造業の海外売上比率は約40%であり、BtoBメーカーのサイト群とは、グローバルウェブとほぼ同義である。

図1.サイト群の例(オムロン)

一企業のサイト群の規模は、業種や業態、売上規模やコーポレートガバナンスなど、様々な要素に影響されるが、数千億円以上の売上を持つBtoB企業の場合だと、10~100サイトと言ったところだろう。ちなみにサイトの数が多くなりがちなBtoC/BtoBミックス型企業だと、1000を超えるケースもある。

単体サイトがビル1つに相当するのに対し、サイト群の整備は都市設計に似ている。都市では、区域や建物が人々の動線を意識して配置され、都市総体として住民のニーズに応えている。同様にサイト群では、サイト間の役割分担と動線設計をしっかり行うことで、ユーザーニーズに応えていかなければならない。また、都市を維持する自治体や法律に相当するのがサイト群ガバナンスだ。現実の世界が法の制定で終わらないのと同様に、サイト群のガバナンスもルールの運用のみならず、ベストプラクティスの共有による担当者のスキルアップや、ルール違反に対するモニタリングと是正機能などを備えることになる。

最終回の今回は、ウェブを企業全体で使いこなすために必要な連結視点とグローバリゼーションについて考えてみる。

連結視点の重要性

連結視点でサイト群を整備することの重要性は、東京ディズニーランド(TDL)を想像すると分かりやすい。TDLが来園者に期待するのは入園料だけではない。駐車代にはじまり、食事代やお土産代と動線上に仕掛けを施し、さらには隣接地に新たなテーマパークやホテルを設けるなど接点を増やすことで、収益機会を増大させている。グループ化したBtoB企業の多くも、コアビジネスの周辺領域を拡大しているはずであり、サイトに来訪した顧客がサイト群内の他のコンテンツに興味を持つ可能性は十分にある。サイト群に飛び込んできた顧客にいかに多くの機会を見出すのか、クリックひとつでサイトを移動出来るウェブだからこそ、グループの総合力を発揮できるのではないだろうか。

また、連結視点で見れば、情報構造・コンテンツ・デザイン・機能アプリケーションなど、サイト間で共有出来るものがたくさんある。なんでもかんでも統合すれば良い訳ではないが、その可能性を検討もせずに、個別に設計・構築されているのが現状であり、結果的に無駄な重複投資や品質のばらつきを招いている。共有化によるコスト削減と品質の高位平準化の余地は、かなり残っていると見て良いだろう。

サイト群内の目的外サイトに迷い込む顧客を適切なサイトに誘導することも、サイト群整備の重要な目的だ。企業名で検索をしてみると、その企業グループが公式に運営しているサイトがずらずら出てくるはずだ。当然、意味の無いサイトを訪れる確率も高くなる。また、英語やスペイン語などの場合、同じ言語圏の他国のサイトに行ってしまうこともある。サイト群が大きくなれば、迷い込みの発生は避けられないが、それでも数クリックで目的サイトにたどり着けるようにすることが、ウェブ運営者の責任となる。

「産業広告 2010年1月号」に掲載記事より

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