グローバルWeb戦略

BtoB企業のグローバルWebと本社の役割

執筆者:代表取締役社長 気賀崇

「ポイント3:LSの充実化へのGW統括部門の積極関与」


冒頭に挙げたAmazon、Google、Facebookが世界中で使えるWebサイト群を短期間に整備できたのは、創業当初からグローバル市場を見据えたネット専業ゆえの気合いの入った取り組みだったことが大きい。そして、そのことが強力な中央集権での整備を可能にしたのである。

本稿の読者である歴史あるリアルBtoB企業の皆さんに、新興ネット専業企業と同じやり方をやみくもに薦めるつもりはないが、米Caterpillar社や英BP社、独Siemens社など欧米のリアルBtoB企業もGWの整備・運用を中央集権で進めているケースが多いことには留意したい。BtoBはBtoCと比べると製品のローカル性(国によって仕様が異なること)が低く、中央集権になじみやすい。また、欧米企業のコーポレートガバナンス自体が中央集権であることが理由だ。

GWのガバナンスとはコーポレートガバナンスの投影なので、分権型コーポレートガバナンスを主とする日本のBtoB企業においては、分権型のGWガバナンスを行なう方が自然だ。ただし、筆者はその原則を支持しつつ、長い目で見るとGW整備の初期段階である今は、分権型の日本企業であってもやや中央集権的に事を進めるのが良いと考える。マーケティング、ブランディング、コンテンツ企画・制作、デザイン、ITなどの多様な要素を併せ持つWebサイトを、各国のいちWeb担当者に任せるのは負担が大きすぎると思う。それに自社の価値を最大限見せるべきコンテンツ企画・制作は、自社の隠れた価値を知ることの出来る立場の人にしか務まらない。全社を俯瞰でき、ネタも蓄積している本社の果たすべき役割は大きい。

Webは企業の情報発信ツールであり、それを使いこなす人材がいなければただの箱に過ぎない。GW整備は、良質の情報を企画し発信し続けられる人材、ネットの特性を知り抜き活かせる人材が育って初めて完成する。

最後に:人材育成にもつながる中央集権アプローチ

明治時代に行われた国家近代化のための産業育成策の下では、鉄道や鉱山、製糸工場などが官営で作られ、軌道にのってから民間に払い下げられた。「民に出来ることは民に」が原則であっても、欧米に追い付け追い越せを加速的に進めるための時限的な中央の関与があったのだ。そして、官営工場でのいわゆる御雇い外国人の指導は、その後の日本の産業振興を担う数多くの人材を育てたことも特筆しておきたい。

ネットの登場は、コミュニケーションの世界における明治維新と言っても良いほどの大きな変化。一気呵成のGW整備は、LS運用の優秀な担い手の発掘・育成にもつながる。そもそも分権で質の高いGWを維持するためには、優秀な人材が各国にいる必要があるのだ。多くの日本企業にとってはイレギュラーなアプローチだが、分権型のGWを確立するためには、いっとき中央集権的にGW整備を進める選択肢も残しておこう。

「BtoBコミュニケーション 2016年3月号」に掲載記事より

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