背景と課題 4つの国で、複数のターゲットユーザーに共通するキーワード設定が大きな壁に
世界中の人々の暮らしや産業を支える総合海運企業である商船三井。同社は、グローバル市場でのブランド想起率向上と事業の認知拡大を目指し、ソリューションサイトの刷新を検討していました。
従来のサイトでは、検索エンジン経由での潜在顧客へのリーチが不十分で、必要な情報が適切に届けられていない状況が続いており、SEOによる集客・認知向上が急務でした。
そこで、海外のビジネスパートナーの「協業・出資の第一候補」となることを目指して、ソリューションサイトリニューアルのプロジェクトを始動。その施策の一環として、海運業界のカーボンニュートラルに貢献する風力補助推進システム「ウインドチャレンジャー」*を中心とした情報発信を強化する取り組みが行われました。
ウインドチャレンジャーの対象となるターゲットには、「サプライチェーンの脱炭素化」を目指す荷主や、「船舶の資産価値向上」を図る船主など、ニーズの異なる複数のステークホルダーが含まれます。これに加えて、アメリカ・イギリス・ドイツ・日本という文化や言語が異なる市場を対象とするため、共通して効果的なキーワードを設定することが大きなハードルとなっていました。検索ボリュームやSEO難易度、競合状況といったデータを精査しつつ、複数国・多様なターゲットに共通して響くキーワードを見出す必要がありました。
また、単に検索流入を獲得するだけでなく、専門家ではない検索ユーザーにもウインドチャレンジャーがもたらすベネフィットが伝わるように、わかりやすく整理・構造化したコンテンツ設計が求められていました。ユーザーを自然に比較検討の段階へと導くための情報設計も重要な要素でした。
さらに、検索ユーザーと検索エンジンの双方から信頼を得るには、コンテンツにおける経験・専門性・権威性・信頼性(EEAT)の確保が不可欠です。これを実現するには、単なるデスクリサーチだけでは不十分であり、商船三井社内に蓄積された知見や最新情報を丁寧に引き出し、正確かつ適切にコンテンツへ反映させることが必要でした。
- :商船三井が開発した、帆を利用して再生可能エネルギーである風力を船の推進力に活用するシステム。大型貨物船の燃料消費を抑え、GHG排出量の大幅削減に貢献する。
世界的に脱炭素化の動きが加速する中、海運業界もその例外ではなく、風力を活用した補助推進システムに対する期待が高まっています。すでに複数のメーカーがこの領域に参入しはじめており、荷主や船主をはじめとする多くのステークホルダーが、風力を活用した脱炭素化ソリューションを模索しています。
こうした背景を踏まえ、複数のターゲットに共通する検索キーワードの仮説を構築。「船 燃費削減」「船 風力技術」「風力補助推進システム」などのワードについて、各国ごとの検索ボリュームや競合状況、検索クエリから読み取れる検索意図を分析しました。しかし、環境関連や「燃費削減」といったキーワードはニーズに直結するものの、検索数が非常に少ないことが判明しました。
そこで、「風力補助推進システム」関連のキーワードにフォーカス。最終的に「wind assisted ship propulsion」をメインキーワードに設定しました。このキーワードを採用した理由は、大きく2点あります。
1点目は、ターゲット国のうちアメリカ・ドイツ・日本において、一定の検索ボリュームが確認できたことです。BtoB領域におけるSEO対策は検索数が非常に限られる傾向にありますが、このキーワードに関しては、複数の国で継続的に検索されている実績がありました。
2点目は、当社が使用する調査ツールにおけるSEO対策の難易度が比較的低かったことです。ツール上で難易度が40%を超えるキーワードは検索上位表示・流入獲得に時間と工数がかかる傾向がありますが、「wind assisted ship propulsion」はそれを下回っており、検索上位表示の可能性が高いキーワードと判断しました。加えて、競合他社が各国で上位を獲得している検索キーワードも調査しながら、総合的な視点で対策キーワードを決定しました。
検索ニーズを加味した構成とEEATを担保する情報収集を重視し、SEOコンテンツを制作
SEOコンテンツの構成にあたっては、検索ユーザーが求める情報を冒頭で的確に伝えることが重要です。そこで、まずメインキーワードの検索結果を分析し、そこから読み取れる検索ニーズを明確にしました。その結果、ユーザーの多くが「風力補助推進システムとは何か」「どのような効果があるのか」といった基礎的な情報を求めていることがわかりました。
そのため、コンテンツの冒頭では風力補助推進システムの概要や期待される機能・効果を記載。続いて、ウインドチャレンジャー独自の機能や優位性、ベネフィットを提示し、最終的には導入を検討する上で必要なフローや資料ダウンロードにつなげる構成としました。
また、海運業界における脱炭素化に対するウインドチャレンジャーの価値や実績を正確に伝えるためには、商船三井の事業部様の知見が不可欠であると考えました。そのため、デスクリサーチに加え、ヒアリングシートを用いた情報収集を実施。さらに深掘りするインタビューも実施し、EEATにおける信頼性や専門性を高めることに注力しました。

実際のヒアリング項目の一部
記事の執筆においては、SEO対策に不可欠な共起語を自然に織り交ぜながら、グローバルBtoBコンテンツとしての完成度を高め、さらに既存の写真や動画といったビジュアル資産も積極的に活用することで制作工程の効率化にも努めました。
成果 全ターゲット国で短期間での上位表示を達成。顕在層への比較検討材料の提供も果たす
本施策により、SEOの知見に基づいて最適化されたコンテンツが、すべてのターゲット国において短期間で上位表示を達成しました。
アメリカでは「wind assisted ship propulsion」というキーワードにおいて、公開後約1ヵ月で検索順位圏外から6位へと上昇。3ヵ月後には3位に到達し、その後も3〜5位の範囲で安定して推移しています。また、「wind-assisted propulsion」といった類義語による流入も確認されており、クリック率(CTR)は9.7%に達しました。

実際の効果測定レポート
イギリスでは、同じく公開から約1ヵ月で圏外から6位に上昇し、3ヵ月後には1位を獲得。
ドイツにおいても、約1ヵ月で6位まで上昇した後、最高1位を記録し、以降も10位以内で安定的に推移しています。
日本では、「風力補助推進システム」というキーワードにおいて、公開からわずか約2週間で圏外から1位に上昇。その後も継続して1位を維持しています。
さらに、ウインドチャレンジャーに関する情報を求めるユーザーへのリーチも着実に増加。「wind challenger」などの指名検索キーワードでのクリック数が増加し、すでにソリューションを認知している顕在層に対して、さらなる理解促進や比較検討の材料を提供する役割も果たしています。結果、情報収集段階、比較検討段階、指名検索段階といった多様な検索意図に応えるコンテンツとして機能することに成功しました。
多国展開を見据えたSEO戦略を、確かな知見と丁寧な伴走で形にしていただきました
株式会社商船三井
コーポレートマーケティング部
グローバル戦略チーム様
ソリューションサイトリニューアルの一環として、多国展開に対応したSEOコンテンツ制作をご支援いただきました。イントリックス様には、SEOやデジタル戦略に関する専門的な知見をもとに、ユーザー視点に立った実用的なご提案を多数いただき、当社の方針決定にも大きく貢献いただきました。
スケジュールの管理から、急な調整への柔軟なご対応まで、一貫して丁寧かつスムーズに取り組んでいただき、安心してプロジェクトを進めることができました。明確で誠実なコミュニケーションを通じて、関係各所との連携も円滑に進み、大変感謝しております。