BtoBデジタルマーケティングやWeb制作の情報と、イントリックスの日常風景をお伝えします。

イントリックスが第42回 日本BtoB広告賞 ウェブサイトの部で金賞を受賞しました

BtoB
松井 洋也
去る2021年に開催された第42回「日本BtoB広告賞」。こちらのウェブサイト<一般サイト>の部において、イントリックスは金賞をいただきました。今回は、当社が受賞したWebサイトの企画・制作内容についてご紹介したいと思います。

目次

受賞内容

日本BtoB広告賞とは

この度、当社が受賞した日本BtoB広告賞は産業広告の振興を図ることを目的とした、一般社団法人である日本BtoB広告協会が主催している広告作品のコンテストです。募集部門はWebだけでなく、新聞・雑誌広告やカタログなど多岐に渡ります。各業界の名だたるBtoB企業がエントリーしており、当社も過去2回ほど賞をいただいております。

第42回「2021日本BtoB広告賞」入選作品のご案内(日本BtoB広告協会Webサイト)
今回の入選作品の一覧になります。
知られざるBtoBクリエイティブアワードの世界
2015年に受賞した作品について触れた記事になります。
第34回「2013日本BtoB広告賞」入選作品のご案内(日本BtoB広告協会Webサイト)
2013年、ウェブサイト<コーポレートサイト>の部で受賞しております。

受賞作品・講評

受賞した作品は株式会社クボタ様のコーポレートサイト。2020年に当社にて全面改修を実施したものが総合的に評価され、今回ウェブサイト<一般サイト>の部の金賞をいただきました。

* こちらの画像は本記事執筆時のものになります

審査員の方からは以下の講評をいただいております。

講評:ウェブサイト<一般サイト>の部 金賞「株式会社クボタ 企業ウェブサイト」

  • シンプルでありながら、欲しい情報にすぐアクセスできる抜群のユーザビリティ
  • 画面デザインも含め、ひとつひとつのクリエイティブが丁寧に作られている
  • 企業としてのメッセージ性もあり、大規模サイトでありながら構造面・クリエイティブ面において多くの企業の参考となる

まさに今回のプロジェクトで苦心したポイントがしっかりと取り上げられており、「まとめ」で書かせていただきましたが、これを審査員の方が評価してくださったのは作り手としてとても光栄でした。

プロジェクトの概要

クボタ様とは2015年からのグローバルサイトと日本サイトを含めた「17言語25サイトリニューアル」プロジェクトに始まり、さまざまなコンテンツの企画・制作やWebサイトの改修など、長年に渡ってWebサイトのご支援をさせていただきました。

2019年から2020年にかけて実施されたこのWebサイトの全面改修もまた、グローバルサイト・日本サイトを対象としたいわばセルフカバー的なプロジェクト。過去、自身で企画・制作したものを5年の歳月を経て、今一度それを考え直すというイントリックスのプロジェクトの中でも初の案件となりました。

まずは戦略フェーズで、すべての企画の拠りどころとなるコンセプトをまとめました。前回のリニューアルから5年、社会から企業に求められていることの変化や運用していく中での課題、また創業130周年を機とした企業としての在り方など、すべての要素を洗い出してお客様と議論を重ねてコンセプトを策定。2015年改修のコンセプトを「クボタの真の姿を知ってもらう」とするならば、今回のリニューアルはその次のステップ「これからのクボタが描く未来を知ってもらう」としました。このコンセプトを拠りどころに、情報設計・デザイン・コンテンツを検討。以下、それぞれのフェーズでの特徴的な施策をご紹介します。

2015年から社会の情勢はどのように変わったか、これからクボタがめざす姿と実現したい未来とは何か。議論を重ね、コンセプトを策定。

主な施策

概要設計

新しいコンセプトとメインターゲットの策定に伴い、サイト構造も従来から大きく変化させました。あらためて既存コンテンツの棚卸しをした上で、メインターゲットが求める情報を提供するカテゴリがサイトの核となるようにサイト構造を検討。いくつかの既存カテゴリの階層を上げたり下げたり、統廃合したりと多くの場所にメスを入れましたが、特に今回のプロジェクトを象徴する特徴的な施策のひとつがグローバルナビゲーションの順番でした。

企業の顔であるコーポレートサイトは、いわばあらゆるユーザーにとっての玄関口。さまざまなニーズに対して適切な情報を提供する必要があります。しかし、ターゲットの優先度をつける場合、そのコンテンツの見せ方にも強弱をつけなければ、本当に伝えたいことが伝えたいターゲットに伝わりません。グローバルナビゲーションの並び順もその強弱の付け方のひとつになります。

通常、優先順位の高いカテゴリから左に配置していくのがセオリーとなり、多くの企業では扱っている「製品」カテゴリをできるだけ左に配置します。しかし、今回の新しいコンセプトや新たなメインターゲットを考慮し、グローバルサイトにおいてはその優先順位を下げました。この施策によって、サイト全体で伝えたいコンセプトを明確にすることができました。

グローバルサイト、日本サイトごとにターゲットと役割を策定し、それに合わせたサイト構造を設計。

詳細設計

2015年に設計したクボタ様のWebサイトは運用性を考慮し、見出しや本文、画像など複数のコンポーネントを組み合わせて、いくつかのレイアウトパターンを決め、ページデザインの品質を均一化できるシステムを導入していました。今回の改修においても原則として同じ考えで設計しましたが、5年間の運用の中でいくつかの課題が浮き彫りになりました。

あまり使われないコンポーネントや、逆にニーズはあるが用意されていないものなど、実際お客様がどのようにページの更新をされているかをあらためて洗い出し、その課題を可視化した上で再度コンポーネントの設計を開始。前回のものよりも、さらに活用しやすく汎用性のあるコンポーネントを開発し、それを元に各ページを制作しました。

過去のコンポーネントをすべて洗い出し、ひとつひとつ検証し、最終的にまとまったコンポーネントデザイン。運用用途として、htmlのソースコードとセットにしたコンポーネント集を納品。

デザイン

今回の改修でもっとも大変だった作業のひとつがデザインです。2015年にデザインを刷新した際、コーポレートカラーである「クボタブルー」を基調に、ブランドデザインに合わせたトレンドに左右されない汎用性のあるミニマルなものを採用しました。そのため、現在においても運用上の課題はいくつかあったものの、そのデザインはそのままでも通用するものでした。

しかし、本プロジェクトにおいては見た目の刷新感の演出もまた重要な要素のひとつ。そのままのデザインでは刷新感を出すことはできず、またデザインをこれまでとガラリと変えることも今回の方向性には合っていない。ここをどう考えるかが大きなポイントでした。

そこでまずリニューアルコンセプトを拠りどころに、ブランドデザインを再度見直し、その差分を洗い出しました。元々あったブランドデザインに、今回のリニューアルで重要視するコンセプトの軸を追加することで、新たなデザインの方向性を追加。今までのトーン&マナーは踏襲しつつも、クボタ様の新しい姿を感じさせる要素をサイト全体のデザインルールとして新たに確立しました。

クボタ様のブランドデザインの考えをコアに本改修の考えを追加し、Webサイトにおける新たなデザインコンセプトを策定。モックアップを作成し、方向性について議論を重ねました。

コンテンツ

クボタ様がめざす未来を描くために、既存コンテンツの見直し・調整に始まり、新規コンテンツも多数制作しました。特に大きなポイントになったのが「サステナビリティ」と「イノベーション」です。

クボタ様の最も大きな強みのひとつが「企業理念や事業活動そのものが社会貢献に結びついている」こと。昨今、ビジネスにおいて重要なキーワードとなっているSDGsやサステナビリティを語ることは、そのままクボタ様の強みを表現するコンテンツとなりえます。また、それを実現するための手段としてイノベーションにも積極的に取り組んでいること。この2つを核とし、コンテンツ単体だけでなくコンテンツ群すべてにこの思想を行き渡らせることで、これからのクボタ様の姿勢とめざす未来の姿を表現しました。

コンテンツ群全体にひとつのコンセプトを横串で通すためには、それぞれのコンテンツの役割を設定し、内容を作り分ける必要がありました。そこで企画時にすべてのターゲットユーザーと各コンテンツのマトリクス表を作成し、コンテンツ群を俯瞰しながら考えました。また、制作途中にも何か検討事項があればすぐにその表に立ち戻るよう意識することで、常に俯瞰してコンテンツ群を見直すことができ、当初の考えからブレずに制作することができました。

普段はコンテンツ群の中のひとつのコンテンツを作っていく案件が多いため、コンテンツ群の俯瞰視点にあまり着目する機会がなかったのですが、コンテンツ群として考えていく経験とそれをうまく進めるための方法論を確立できたのも、今回のプロジェクトで得た大きな成果でした。

クボタ様のサステナビリティを事業やESGなどの軸から語り、SDGsへの貢献に結びつけ、ユーザーの納得感と期待感を向上。

まとめ

実はプロジェクト開始当初、「今回は賞を狙っていきましょう」とお客様とお約束をさせていただきました。実際にプロジェクトを進めていく中でお客様と議論を重ね、これから作るものは間違いなくお客様がめざすゴールに向かっているという確信はあったのですが、一担当者としては一抹の不安がありました。これは個人の所感になりますが「ひょっとすると、実施する施策が賞を取るには地味すぎるのではないか?」という懸念。

今回はメッセージ性のあるコンテンツをしっかりとユーザーに読んでいただくため、できるだけ画面の動きや装飾を排したシンプルな作りになるよう心がけ、戦略面からひとつひとつの企画をコンセプトに照らし合わせて掘り下げ、制作においても掲載する情報や写真、文章をクボタ様の個性とメッセージが感じられるよう丁寧に作り込みました。

これこそが長年BtoBを主戦場としてきたイントリックスの真骨頂のひとつなのですが、これが果たして審査員の方にしっかりと伝わるのか? もっと動きのある、わかりやすく派手なクリエイティブの他社の作品に目が行ってしまうのではないか? そのような不安がよぎることもありました。

しかし、私たちの目的はお客様のビジネス課題をデジタル領域で解決すること。そのための最適解を求めてWebサイトの公開ギリギリまで内容を詰めていきました。結果としてこの施策を評価いただき、金賞を受賞しましたが、これはBtoB業界のデジタル活用がこれまでよりも進んでいることの現れであり、またイントリックスがこれまで積み上げてきたことが正しかったことの証明であるとも感じました。

今回は当社のサービスに当てはめると「グローバルWebサイト群再構築」に始まり、「Webサイト制作・運用支援」「クリエイティブデザイン制作」といったいわゆるコーポレート・コミュニケーション(CC)がメインのプロジェクトでした。この分野は当社が得意とする領域でありますが、最近は「デジタルマーケティング戦略立案・推進」「マーケティングシステム基盤企画・構築」に代表されるマーケティング・コミュニケーション(MC)関連のお問い合わせも増えております。イントリックスは、このCC・MCの両軸で今後もさまざまな業種のBtoB企業のデジタルコミュニケーションをご支援していきます。

最後になりましたが、今回の機会と賞へのエントリーをご快諾いただきましたクボタ様、並びにご協力いただきましたパートナーのみなさま、そして社内のプロジェクトメンバー、それを支えていただいた社員全員に厚く御礼申し上げます。