イントリックスの解決策
デジタルマーケティングの知見を空間づくりへ。顧客体験を軸とした総合的アプローチ
イントリックスは、デジタルマーケティングのノウハウを活かしつつ、リアルな展示空間の設計・実現に取り組みました。顧客ニーズを深く理解することから始まり、効果的な体験設計~施工対象の基本設計、最新のデジタル技術の導入まで、包括的なアプローチで課題解決に挑みます。結果、約半年にわたる長期プロジェクトを確実なマネジメントとスケジュール管理で成功に導くことができました。
1. 顧客ニーズをとらえた、的確な展示内容の設計
まずプロジェクトの目的とゴールを明確にするところからの着手。ターゲットとなる顧客を「情報収集段階の顧客」と「比較検討を終えた意思決定前の顧客」の2つに分類し、それぞれのニーズや関心事を整理しました。
情報収集段階の顧客には、CO2削減効果や将来的な脱炭素への対応可能性、製品の信頼性などを重点的に紹介。一方、意思決定前の顧客には、コストや納期、具体的な製品性能などの情報提供に力を入れることにしました。
三菱重工が顧客に伝えたい内容を網羅的に洗い出し、そのなかからエントランスという広大な空間を活用してこそ効果的に伝えられる内容のみを厳選。最終的に、エントランスの左側にはH-25ガスタービンの性能や形状・メンテナンスの重要性を訴求する展示を、右側には三菱重工の事業と日立工場の技術の系譜、実績・歴史を紹介する展示を配置する方針を固めました。
これまでデジタルマーケティングで培った信頼と知見を活かし、わずか2回の打ち合わせで具体的な展示企画案を提示できたのは、イントリックスならではのスピード感だと言えるでしょう。
2. 来訪者のニーズを踏まえた、効果的な顧客体験の創出
続いて、お客様の来訪時の体験を、①プレゼンテーション、②エントランス見学、③工場見学の3つのパートに分けて設計。エントランス全体の見取り図を基に、お出迎えから工場見学に出発するまでの流れを、展示内容と合わせて細かく検討しました。
複数パターンを比較検討する過程では、現実的な課題にも着目しました。例えば、ガラス張りのエントランスでは直射日光で展示物の劣化が進む恐れがあります。そこで、影響の出やすい展示物から窓から離れた位置に優先的に配置。また、原状復帰やコンテンツの更新性にも配慮し、あらゆる可能性から実現性のあるプランを選定いただけるよう、導入+ランニングの概算コストを含む、機器や仕様の提案を心がけました。
検討の結果、最終的に①プレゼンテーション→②エントランス見学→③工場見学という流れに決定。プレゼンで説明した内容をエントランスの展示で視覚的に補強し、最後に実際の製造現場を見学することで、段階的に理解を深められる設計としました。
このように、イントリックスはウェブサイトでのユーザー体験設計のノウハウを、リアルな展示空間の設計に応用。顧客の動線や情報の受け取り方を綿密に計画し、工場見学の順路に沿って製品と企業理解を深められる体験設計を形にしていきました。
3. 施工内容(基本設計)策定と施行者選定・発注のマネジメント
プロジェクトが進むなかで、イントリックスは当初予定していた企画段階からさらに一歩踏み込み、見積前提となる基本設計や発注先の選定支援までをご支援することになりました。
特に注力したのは、2~3年で展示内容を更新できるよう、安全性・更新性に配慮しながら原状回復が可能な基本設計(発注仕様)を固めること。既存の壁面の前に新たに壁を立てるなど、建物本体に大きな改変を加えることなく展示の更新ができる仕様を具体化すべく、施工業者とともに現場を確認しました。
例えば、ガスタービン部品の展示では、パーツ単体が100kg 超の重量物を含む展示対象を一つひとつ実際に確認し、陳列の向き・配置順の要望を伺いながら展示ケース(造作物)の数量・サイズ・仕様を確定させていきました。
発注先選定のフェーズでは、試算時に必要な設計図書や、施工業者確定から実施設計~施工までの進行スケジュール(工期)を含む「見積依頼書」を作成。加えて、業者への質疑応答、技術評価、提示価格の妥当性評価まで、包括的な支援をおこないました。専門用語を分かりやすく説明しクライアントの意思決定をサポートすることは、デジタルでもリアルでも変わらないイントリックスの強みです。
4. 実施設計から引き渡しまでの進行・品質管理を継続支援
発注先確定後は、施工までの約2か月にわたり三菱重工と設計・施工会社の間に立ち、工期全体の進行と品質管理を担当しました。実施設計では、それまで「何を見せるか」に留まっていた判断基準から、「何を伝え、来館者にどんな印象を持たせたいか」を議論。意匠設計含む詳細確定に向けた判断を、包括的にサポートさせていただきました。
このフェーズでは、コンストラクション・マネジメントとは別に、掲出面積のみが確定し内容詳細が固まっていなかった訴求エリアのコンテンツ企画・グラフィック制作も担当。ウェブコンテンツ制作のノウハウを活かしながら、日立工場の重厚かつ開放的なエントランスの印象を損なうことなく、三菱重工らしい表現をどうまとめていくかに苦心しました。
実施内容が固まっていくなかでいただく追加要望への対応や、造作期間の進捗管理を進めながら迎えた施工当日は、それまでの綿密な計画のもと関係者間の密なコミュニケーションに努めた甲斐あって、予定よりも早く作業を終えることができました。