NYの絶品バターミルクビスケット
Webアナリストが完全再現に挑んでみた
突然ですが、私、中村(25歳│男性│独り身│元野球部)のプライベートの時間は、お菓子作りにほぼ費やされます。最近では、留学中にニューヨークで食べたバターミルクビスケットを完全再現すべく、自宅のキッチンで格闘する日々。
なぜこんな報告をさせて頂いているかというと、夜な夜な一人でビスケットを作っては、試作品を家族に食べてもらうだけは悲し……いや、もったいないと思ったためであります。約5か月をかけてレシピを研究した、せっかくの成果ですから!
ということで、今回はニューヨークの絶品バターミルクビスケットの完全再現を目指した私の奮闘記をお届けします。コロナ禍でお菓子作りを始める人も多いそうなので、記事の最後にはレシピも載せています。皆さんもぜひステイホームクッキングに挑戦してみてくださいね。
目指すはRoot and Boneのバターミルクビスケット
私が再現に情熱を注ぐのは、ニューヨークにある「Root and Bone」というお店のバターミルクビスケットです。ここのビスケットは食感に特長があり、「サクサク」というより、しっとりしながらも「ホロホロ」と口の中でほどけていく不思議な口溶け。ビスケット自体に甘味はなく、生地自体は少ししょっぱいのですが、メープルシロップをかけていただくとちょうどいい塩梅となり、カロリーのことなんて忘れるほど美味しくなるんです!
2019年11月上旬:試作品の第一号の完成!
手始めに、2年前に食べたバターミルクビスケットの記憶を頼りに、母が作るスコーンのレシピをベースに試作してみました。
それがこちら。どーん!
初めてにしてはうまくできたと思ったので、母に試食をしてもらいました。その感想は……
「ただのスコーンやん(笑)」
残念ながら目指すビスケットとはまったくの別物だった模様。母の一言が胸をさします。
しかし、これくらいじゃへこたれません。イントリックスの戦略部門に所属するアナリストとしてのプライドもありますから! さっそく、目指すビスケットと異なる点をサマライズしてみました。
理想 | 現実 | |
---|---|---|
食感 | しっとり | サクサク |
口溶け | ホロホロ | ボロボロ |
見た目 | ふっくら | しんなり |
味 | 程よい塩け | 薄味 |
要するに全然違ったわけですが、記念すべき1回目としては及第点をあげたいと思います。
2019年12月下旬:20回の試行錯誤で見つけた小麦粉と塩けの配合比
1回目の試作から早2か月。20数回の試行錯誤を経て、クリアした課題は以下の2つでした。
サクサクした食感 → しっとりとした食感
2か月間、明けても暮れてもベストな強力粉と薄力粉の配合比を見つけるべく、数グラム単位で調整を繰り返しました。そして、辿り着いた配合比は「おおよそ強力粉2に対して薄力粉1」の黄金比。母のレシピとは真逆だったのです。
薄味 → 程よい塩け
これまで使っていた無塩バターを、有塩バターにチェンジしてみました。料理好きな方ならお分かりいただけると思いますが、塩で塩分を調整するのは意外と難しいのです。であれば、一層のこと有塩バターで代用してしまえば良いのではという単純な発想です。
この施策が功を奏し、ついにベストな塩加減にたどり着きました。バターの量を増量したことで、生地の味に深みも増しました。
しかし、生地にしっとり感は出たものの、口の中で生地がホロホロとほどけていく感じは皆無。ものすごく極端なイメージでいえば、それはもう蒸しパンレベル……。その後も、材料の量を調整したり、捏ね方を工夫したりと、何度も試行錯誤を繰り返しましたが、納得のいく味にはならず。一人悶々としていた、そんなクリスマス1週間前の夜でした。
2020年1月:今年一発目はクロワッサンの手法を工夫
冬休み中はドイツ旅行でビスケット作りはできなかったのですが、どうすれば食べたときに口の中でホロホロとほどけていく感じが出せるのかをネットで調査していました。
そして、ついにホロホロの口溶けを実現するヒントを見つけたのです‼
今までは、何層にも重なる生地を作るために、クロワッサンの手法で「生地を伸ばす→2つ折り→伸ばす→2つ折り」の作業を3回繰り返していました。しかし、この作業が良くなかった! というのも、小麦粉には粘りけを出すグルテンが含まれていて、捏ねれば捏ねるほどグルテンが出てしまうそう。粘りけが出ると、生地がまとまりすぎてしまい、結果、ホロホロとほどけるような食感からは遠ざかっていたのです。
そこで、さっと混ぜた生地を6等分にし、それらをひとつに重ねて生地を成型しました。成型するときも「捏ねない」を基本に、形を整えてあげる程度。優しく優しく。そのようにして作った生地を焼き上げると、見事、Root and Boneのビスケットのような、しっとりしながらもホロホロした食感に!
狙い通りは見事的中! しかし、焼き上がりの形が崩れてしまったのはなぜか。
ここで私が立てた仮説は、捏ねないことで生地が通常よりまとまりきらず、膨らむと同時に転倒してしまったのではないか、ということ。
今までは生地同士がくっつかないように十分な間隔を置いて焼いていましたが、次からは生地を1㎝程度の間隔でびっしりと等間隔に並べて焼いてみます。これであれば、転倒しそうになっても互いに支え合って崩れてしまわないはず。
2020年3月:ついに完全再現……!?
これこそ、夢にまで見たRoot and Boneのバターミルクビスケットそのものであります!
見た目はもちろん、塩けの立った味わいと、しっとりとしながらもホロホロと崩れる口溶け感。ここにたどり着くまでに、50回は試作と失敗を繰り返してきたと思います。長い道のりでした。以下にそのレシピをまとめてみました。
Root and Boneのバターミルクビスケット(仮)
材料(12個分)*1個約5㎝
- 有塩バター 95g
-
- A
- バターミルク 190g
- ハチミツ 40g
-
- B
- 強力粉 195g
- 薄力粉 105g
- コーンスターチ 3g
- ベーキングパウダー 18g
- 塩 3g
- メープルシロップ(お好み)
作り方
有塩バターを冷凍室で凍らし、凍ったバターをチーズグレーター(おろし金でも可)で削り、再び冷凍室に20~30分入れておく。ラップはしてもしなくてもOK。
*バターを削ることで粉と均一に混ざりやすくなり、冷やすことで焼いたときの型崩れを抑え、脂っこい味になるのも防げます。
Aをよく混ぜ、冷蔵庫で30分冷やしておく。
ボウルにBを入れ、ゴムベラなどでよく混ぜる。
1のボウルに準備1のバターを加え、バターが全体に馴染むまで混ぜ合わせる。
ボウルに準備2で混ぜたAを加え、粉がまとまるまでさらに混ぜる。多少、ボウルの底に粉が残っても大丈夫。
台に強力粉で打ち粉をし、生地の厚さが2㎝程度になるまでめん棒で軽く伸ばす。
伸ばした生地を包丁などで6等分に切り分け、等分した生地を重ね合わせる。
5の生地をめん棒で1.5㎝の厚さになるまで伸ばし、おおよそ縦20㎝、横15㎝の長方形に成型し、包丁などで1辺5㎝くらいの四角に切り分ける。
*成型するときは「捏ねない」を基本に、優しく形を整えてあげる程度にする。これがしっとりしながらもホロホロした食感にするポイントです。
クッキングシートを敷いた天板の上に生地を1㎝間隔に並べる。ここまでの工程でバターが溶け生地が柔らかくなってしまった場合は、冷蔵庫で1時間程度冷やす。好みで表面に牛乳や卵黄を塗ってもOK。
180℃に予熱したオーブンで生地の表面がきつね色になるまで15~20分程焼く。皿に盛り、お好みでメープルシロップを添えたらできあがり!
……ただ、なぜでしょう。Root and Boneのバターミルクビスケットをひと口食べたときの感動が押し寄せて来ないのは。私が過去の思い出を過剰に美化しているだけなのか……。
まだまだ改善の余地はありますが、現時点のレシピでもかなりに美味しいはず! 興味の湧いた方はぜひ作ってみてください。みなさんのおうち時間が少しでも楽しくなれば本望です‼