大規模リニューアルが難しい中で、何ができるか
Webサイトをフルリニューアルするには、多くの工数や予算が必要になります。しかし、現場では「今のサイトを活かして成果を出したい」という声が多いのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、そうした状況でもユーザー体験を少しずつ磨き、確かな成果につなげた事例です。視線誘導や導線整理、検索性向上など、見落とされがちな小さな工夫が、どのような効果を生んだのかをお伝えします。
事例1:製品一覧に絞り込み機能を追加|検索性向上で回遊率UP
課題・背景
製品カテゴリページは、製品名やスペックの文字情報のみが並び、製品写真が一切掲載されていませんでした。製品の見た目や用途がイメージしにくく、一覧から目的の製品を探すことが難しい状況でした。
一部のユーザーは「特長・厚み・基材から選ぶ」というメニューを頼りに探していましたが、全体では直帰率が高く、情報が整理されていない印象を与えていました。
施策と意図
まず、製品一覧にすべての製品写真を表示し、視覚的に比較・選択しやすくしました。さらに、ユーザーの行動ログから「特長・厚み・基材から選ぶ」のクリック率が高いことが判明したため、これを活用し、条件で絞り込める検索機能を新たに実装しました。
視覚情報と関心項目による絞り込みの両方をサポートする導線設計を実現しました。
結果と示唆
絞り込み機能の導入後、ユーザーは迷わず製品を絞り込めるようになり、回遊率と滞在時間はともに向上しました。ユーザーテストでも全員がスムーズに製品詳細ページへ到達し、導線設計の有効性が明らかになりました。
製品数が多く、選定基準が複雑なBtoBサイトでは、ユーザー視点に寄り添った検索導線が検討行動を強力に後押しすることを実感した事例です。
事例2:お問い合わせ導線を全ページに追加|迷わせないUXがCVに貢献
課題・背景
以前は、お問い合わせボタンが限られたページにしか設置されておらず、製品閲覧後に「どこから問い合わせればいいのか」がわかりにくい状態でした。さらに、製品ごとに担当部署が異なるため、社内での振り分け作業にも工数がかかっていました。
施策と意図
製品カテゴリトップと製品詳細ページすべてに追従型のお問い合わせボタンを設置し、クリック後は対象の部署へ直接連絡が届く仕組みを整備。ユーザーの検討リズムを妨げず、自然な流れで問い合わせに進める導線に改善しました。
結果と示唆
ユーザーアンケートでは、「導線がわかりやすくなった」「問い合わせがしやすくなった」という声が増え、実際の問い合わせ数も増加。誤った部署への連絡も減り、社内対応の効率化にもつながりました。シンプルな改善が、顧客体験と業務効率の双方を底上げした好例です。
事例3:グローバルナビに配置変更|見せたい情報を“見える場所”に
課題・背景
企業として力を入れているサステナビリティの取り組みを紹介するページが、企業情報内の深い階層にあり、あまり見られていませんでした。どれだけ内容が充実していても、そもそもユーザーに届かなければ意味がありません。
施策と意図
ページの内容には手を加えず、グローバルナビゲーションの第一階層に「サステナビリティ」の項目を追加。トップページで誰でもすぐに気づけるようにしました。
結果と示唆
配置を変えただけで、日本のみならず米国やヨーロッパからのアクセスも増加。特に米国では訪問数の伸びが顕著で、関心の高さが数字に表れました。
「何を伝えるか」だけでなく、「どう見せるか」の重要性を痛感した事例です。
事例4:Core Web Vitals対応|軽微な技術改善でパフォーマンス向上
課題・背景
国内外から「表示がやや重い」という声が寄せられていましたが、明確な障害がなかったため、様子を見ながら運用を続けていました。
しかし、CMSの技術パートナーから「Webパフォーマンスの指標が基準に達していない」との指摘を受け、本格的な改善に着手しました。
施策と意図
エンジニアと相談のうえ、負担が少なく効果が見込める以下の対応を行いました。