BtoBマーケティングコラム 「デジタル化」と「DX」の違いを徹底比較!それぞれの目的や正しい意義をわかりやすく解説

2023年1月31日

デジタル化やDXが求められる理由

DXという言葉が日本の一般層にまで浸透するきっかけとなった一つの出来事があります。経済産業省が2018年に公表した試算、「2025年の崖」です。

「2025年の崖」では、2025年以降に年間で最大約12兆円と呼ばれる経済損失が出る、という試算がなされていました。

その他考えられる要因として、IT人材のみならず市場全体で労働力の不足が見込まれるなか、どのように企業を存続していくのかといった課題が生まれたこと、また、新型コロナウイルスの流行を契機として非接触・非対面型の業務スタイルのニーズが高まったことなどが挙げられます。

【出典】経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

デジタル化とDXの一番の違いは「目的」

デジタル化とDXとでは、最終的に目指す状態に違いがあります。

デジタル化は、デジタル技術を用いて個々の業務を効率的に進められる状態を目指します。

一方DXでは、組織の在り方やビジネスモデルの変革を目指します。

例えば、部門ごとに別々に管理されている情報を一元管理することができれば、これまで以上に会社の経営状態が透明になります。そうして得た情報によって新たな事業の種を発見しビジネスを生んでいく、というような状態を目指すのがDXです。DXとひとことでいっても、業種・業態によって具体的な内容は異なるでしょう。

デジタル化とは

デジタル化は、アナログで行なっていた作業をデジタルに置き換えることを指します。業務効率を向上させることが目的です。

例えば、紙の契約書を郵送して署名と押印によって契約締結していたものを、PDFと電子印鑑を用いて進められるようにしたとします。書類を印刷したり、封筒を用意して郵便局へ出向いたりする手間が減ることで、業務効率が大幅に変わるでしょう。

デジタル化はこのように、デジタルに置き換え可能な業務を見つけて業務効率を向上させていくことをいいます。

デジタル化のメリット

デジタル化には以下のようなメリットがあります。

業務の効率化につながる

さきほどご紹介した契約締結のように、業務内容によってはデジタル化を図ることで業務効率が大幅に向上します。これまでより少ない人員で同じ量を捌けるようになる、あるいは手間が減ったぶんの時間を、サービスや製品の付加価値向上のために投下することが可能になります。

顧客対応の受付窓口をチャットボットに置き換えて24時間対応可能にすることも、デジタル化のひとつです。これは、人間をロボットに置き換えた例といえるでしょう。

働き方改革につながる

新型コロナウイルス感染症の流行によって、テレワークの推進や非接触・非対面型の会議や商談などが求められるようになりました。デジタル化はこのようなニーズとも非常に相性がいい施策です。

例えば、Slack等のチャットツールとZoom等のオンラインミーティングツールを組み合わせることで、顔を合わせることなく業務を進めることが可能になります。

業務中の対話をチャットに置き換える、ミーティングもオンラインで行う、といった風に進めていくことで勤務地の制限もなくなり、求人も全国から募集できるようになります。

BCP対応の充実につながる

BCPとは、Business Continuity Planningの略称で、日本語では「事業継続計画」といいます。有事(システム障害、自然災害等)にあった際に、被害を最小限に抑えていかに事業を継続するかに重きをおいた計画です。

極端な例ですが、オフィスが火事で全焼してしまった場合、全ての書類を事前にデータ化してクラウドに保存しておくことで、備品は残りませんが業務に必要なデータは守られることになります。

デジタル化のデメリット

デジタル化には以下のようなデメリットがあります。

ツールやサービス導入のコストがかかる

デジタル化を進める際に、ITツールや外部のサービスを導入する場合はさまざまなコストが発生します。月額制で課金をするもの、買い切りのもの、自社専用のシステムを開発してもらう場合は開発予算を確保する必要もあるでしょう。

デジタル化はあくまでも業務効率を向上させるための手段です。デジタル化を行おうとしている業務がそもそも必要な業務なのか、デジタル化することが最適な方法なのか、といった検討も大切です。

情報セキュリティ意識の周知が必要

デジタル化が進んでいくと、これまでオフィス内に保管されていた情報が社員のコンピュータやオンライン上に保管されるようになります。テレワークを導入する場合は、コワーキングスペースなどオフィスの外で顧客情報を閲覧するケースもあるでしょう。

不正アクセスを防ぐことはもちろん重要ですが、社員の全員が情報セキュリティ意識が高いとは限りません。インターネットカフェで作業しない、コンピュータを開いたまま席を離れないなど、初歩的な漏洩対策から周知していくことが必要でしょう。

業務プロセスの変更に伴うストレス発生

デジタル化を進める際に起こるのが、業務プロセスの変更です。これまでと異なる方法を取り入れることは多少なりともストレスを伴うため、デジタル化への反対意見が生じる可能性もあります。

例えば、訪問営業をメインに行なっていた営業部にオンライン会議ツールを導入しインサイドセールスを行うようにしたとします。交通費や移動時間が削減できる一方で、商談の内容をオフィス内の他の社員に聞かれたくない、対面のほうが慣れているのでやり方を変えたくないといった反発が起こる可能性があります。

DXとは

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の運営するDX SQUAREには、DXについて下記のように記載されています。

”DX(ディーエックス)とは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、デジタル技術によって、ビジネスや社会、生活の形・スタイルを変える(Transformする)ことです。”

同サイトでは、CDやDVDのレンタルサービスがストリーミングサービスに置き換わっていることをDXの身近な例として挙げています。SpotifyやAppleMusic、Netflixなどが浮かんでくるのではないでしょうか。

よって企業におけるDXは、デジタル技術の導入によってビジネスモデル自体の変革を起こすことを指しているといえます。

【出典】独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「【これでわかる】DX(デジタルトランスフォーメーション)をわかりやすく解説

DXのメリット

DXのメリットには次のようなものがあります。

新たなビジネスモデルの開発につながる

こちらはメリットというよりはDXの目的といえるかもしれません。労働力の不足が見込まれる以上、これまでと同じ方法でビジネスを継続することは年々難しくなっていくでしょう。

つまり新たなビジネスモデルが求められるということを意味しており、DXの推進はIT企業よりもむしろ、ITサービス以外を主力にしている企業に必要なものといえます。

市場競争力の向上につながる

新たなビジネスモデルを確立することは困難ですが、DXを進めて企業の体質を変化させていくことは市場競争力の向上につながります。

まず、経済産業省がDXの推進を重視していることもあり、DXの推進をしている企業が市場からマイナス評価を受けることは考えにくいです。

またDXが少しずつでも進んでいるということは業務効率が向上しているということであり、相対的に他社よりも優位に立ちやすくなります。

よってDXの推進は、市場競争力の向上につながるといえます。

DXのデメリット

DXのデメリットには以下のようなものがあります。

DX人材の確保が難しい

DX人材に特定の定義はありませんが、デジタル技術に精通しているだけでなく業務内容や経営戦略に対する理解など、複数の領域にまたがった知識・スキルが求められます。

横断的な知識・スキルを身につけており、かつ、デジタル技術・プロジェクトマネジメントなど何らかの特定分野に強みがある方どうしが、協力しあいながらDXを進めていくかたちをとるでしょう。

しかしそのような人材は市場全体に供給しきれるほど存在しないのが実情で、従業員のリスキリングが求められています。

【参考】経済産業省「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―

DX人材に求められる知識・スキルの詳細については、経済産業省の仮説が参考になるかもしれません。下記の記事で解説しておりますのでよろしければご覧ください。

【おすすめ記事】DX人材とは〜経済産業省が考えるDX人材像から読み解く、求められる人材スキル

成果が出るまでに3〜5年かかる

DXを推進する方法に決まりはありません。しかし目安がまったくない状態では、何から始めたらよいか決定することすら難しいでしょう。

そこで経済産業省は、ビジネスモデルの設計や戦略立案、デジタル環境の用意に関する基本的な考え方や望ましい方向性を整理した「デジタルガバナンスコード2.0」を公表しました。

ビジョンの策定やビジネスモデル設計、組織づくり、デジタル技術を活用するための環境構築、全てを連動させていくには相当の時間を要します。必要性の認識を浸透させるところから始めなければならず、すぐには達成できないことがデメリットといえるでしょう。

【出典】経済産業省「デジタルガバナンスコード2.0

デジタル化とDXを混同するリスク

デジタル化とDXを混同することでリスクが生じます。そのリスクを端的にいえば、「部分最適と全体最適の施策との区別ができず、DX達成への道のりが無駄に長くなってしまう」ことにあります。

デジタル化とDXを混同することで、必要最小限のコストで進められなくなるリスクを抱えてしまうのです。

場当たり的な改革になってしまう

デジタル化とDXとでは最終的に目指す状態が異なるため、取り組む内容や期間などさまざまなものが異なります。そのため、DXとデジタル化を混同していると、長期的な戦略策定や環境構築に取り組まないまま、場当たり的な改革を繰り返すことになってしまいます。

全社的なビジョンや戦略の策定がなく、部門ごとにデジタル化を進めても、全体最適な施策として機能することは難しいでしょう。結果的に、あとから軌道修正する必要が生じてくると考えられます。

一貫性のないシステム構築になってしまう

全体最適な施策が用意されていないと、その後の連携を考慮せず、部門ごとにシステムを導入してしまう可能性があります。システム同士でデータの受け渡しが可能であるなど、連携可能なものであれば問題ありませんが、そうでない場合は構築のし直しが必要になります。

はじめは部分的な最適化からスタートするかもしれませんが、その繰り返しの延長線上にDXの達成があるわけではないことには注意が必要です。

必要となる人材を見誤ってしまう

DXの推進に必要なのは、エンジニアやデータサイエンティストといった人材のみではありません。デジタル技術を活かしたビジネスモデルやサービス設計を考えられる人材や、それらを理解した上でプロジェクトマネジメントを行う人材までもが含まれます。

デジタル技術に精通した人材が中心となり、導入すべき技術を選ぶだけで進捗すると認識していると、事業サイドの人材が不足してしまうでしょう。

デジタル化からDXへの3ステップ

DXの推進に決まった手法はありませんが、デジタル化からDXへと昇華していく流れを整理すると以下の3ステップとなります。

ステップ1:デジタイゼーション

最初のステップは、アナログな情報のデジタルデータへの変換です。

従来、マシンで紙に打刻していたタイムカードをアプリケーションと同期させる、請求書や領収書の発行をPDF形式で行うなど、これまで紙で管理していた情報をデジタル化していく段階です。

顧客情報をCRMツールなどに入力していく作業も、デジタイゼーションのひとつです。会社内にある情報を何らかのソフトウェア上で管理可能な状態にしていくこと、と言い換えられるかもしれません。

ステップ2:デジタライゼーション

次のステップでは、デジタルデータを業務に活用していくデジタライゼーションのステップです。ステップ1の「デジタイ」ゼーションと混同しやすいので注意しましょう。

例えば従業員の出退勤データを給与計算システムと連携させることで、勤怠管理〜給与計算までを自動化することが可能になります。

またCRMツールによって顧客情報を一元管理することで、新規顧客や休眠顧客などのセグメンテーションができるようになり、連絡の重複防止(別々の従業員から同じ方へ営業することを防ぐ)や再連絡のタイミングを通知することも可能になります。

ステップ3:DX(デジタルトランスフォーメーション)

企業におけるDXでは最終的にビジネスモデルの変革を目指します。DVDのレンタルサービスからストリーミング配信サービスへの移行、さらにオリジナルコンテンツの配信まで行うようになったNetflixは顕著な例といえるでしょう。

Netflixの場合はCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)の普及が変革の大きな要因だと考えられますが、どのような変革が起きるかは業種によってさまざまです。多くの場合、顧客情報の一元管理などを通じて集まったデジタルデータから、新たなビジネスの種を見つけ出すところから始まっていくのではないでしょうか。

顧客や市場のニーズを発見するプロセスから変化していく。この点はあらゆる業種に共通するかもしれません。

デジタル化からDX実現に向けた具体策

デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てDXへと向かうには、具体的に何から取り組み始めればよいのでしょうか。多くの企業に共通するであろう具体策をご紹介します。

承認・決済等の電子化

最初に取り組みやすいのはデジタル技術に置き換え可能な業務を見つけていくことです。デジタイゼーションの解説でも少しご紹介しましたが、勤怠管理をアプリケーションに置き換えることはそのひとつです。

その他、有給休暇の取得や経費申請を電子承認可能にしたり、業務委託などの契約を郵送ではなく電子契約に置き換えたりすることも取り組みやすい施策のひとつでしょう。

テレワークの推進

テレワークの推進は通勤時間の削減やオフィス賃料の削減につながります。また、テレワーク可能な体制を構築することで勤務地の制限がなくなり採用できる人材の母集団も大きくなります。

総務省の調査によれば、大企業・中小企業とも、テレワーク実施者のうちの6割強が継続したい意向を示しています。テレワーク可能な企業へと変化していくことで、人手不足解消につながる可能性も上がるでしょう。

【出典】総務省「令和3年情報通信白書 第1部特集 デジタルで支える暮らしと経済 第3節 コロナ禍における企業活動の変化

クラウドサービスの活用

企業のデジタル化を進めていくと、顧客データや取引記録、契約書などのデータが社内に蓄積されていきます。自社サーバーを構築して管理することも一つの手段ですが、初期費用を抑えるにはクラウドサービスの活用がおすすめです。

会計データは会計処理のクラウドサービス、顧客情報はCRMツールを活用することで自社内に専用のサーバーを構築することなく、データ管理が可能になります。

まとめ

デジタル化とDXでは目的が異なりますが、ひとつづきの施策と捉えると、デジタル化はDXに向けたスタート地点となります。

業務プロセスそのものを変化させていくためには、これまで慣れ親しんだ方法を手放す必要があります。

DXの実現には長期的な戦略が必要で、現状を把握する時間や戦略を実際の業務に落とし込む時間もかかり、実行に移す際にはストレスもかかるでしょう。ツールの導入レベルでつまずく可能性もあるため、DXの実現にはスモールスタートが大切です。

当社イントリックスでは、主にマーケティング、営業DXをメインの領域として全体戦略策定から、具体的な施策のご提案、伴走支援まで幅広くサービスをご提供しています。DXをご検討される際には、ぜひ一度、当社へお問い合わせください。

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