BtoBマーケティングコラム DX人材とは〜経済産業省が考えるDX人材像から読み解く、求められる人材スキル

2022年11月28日

DX人材とは

「DX人材」はデジタル技術に精通している人材だけを指す用語ではありません。技術職の方だけでなく、経営やサービス企画、営業に携わる方にも関わります。DXは企業のビジネスモデルや製品・サービス開発プロセスの変革を通じて企業の在り方そのものを変えることが理想とされています。

DXはひとつの部門だけで対応するのではなく、全社的な取り組みが必要です。デジタル技術を活かした事業計画を立てられる、製品・サービスへの活かし方を思い付けるなど、企業内での職務によっても求められるスキルが異なります。

経済産業省が考えるDX人材の定義とは

日本企業においては、デジタル技術を活用した経営戦略を描ける人材が不足していると言われています。業務効率化、企業内に埋もれている情報資源の活用による新たな価値の創出を実現するためにはDX人材が欠かせません。しかし、実際には多くの企業がコンサルティング会社やITベンダーに依頼しているのが現状です。

デジタル知識は、いまやIT企業に所属するエンジニアだけでなく、経営層をはじめとした全ての人々に求められるものとなっています。

経済産業省の公表する「デジタル人材育成プラットフォームについて」では、現役のビジネスパーソン、特にユーザー企業に属するDX推進人材の学び直し(=リスキリング)が重要視されています。若年層は学校教育を通じてデジタル知識の習得が可能な一方で、IT製品・サービスを開発する企業に属さないビジネスパーソンには学習機会が乏しいのが現状です。

また「DX推進人材」について、以下の5つの人材像が仮説されています。

職種 知識・スキル
ビジネスアーキテクト デジタル技術を理解して、ビジネスの現場においてデジタル技術の導入を行う全体設計ができる人材
データサイエンティスト 統計等の知識を元に、AIを活用してビッグデータから新たな知見を引き出し、価値を創造する人材
エンジニア・オペレータ クラウド等のデジタル技術を理解し、業務ニーズに合わせて必要なITシステムの実装やそれを支える基盤の安定稼働を実現できる人材
サイバーセキュリティスペシャリスト 業務プロセスを支えるITシステムをサイバー攻撃の脅威から守るセキュリティ専門人材
UI/UXデザイナー 顧客との接点に必要な機能とデザインを検討し、システムのユーザー向け設計を担う人材

出典:デジタル人材育成プラットフォームについて(経済産業省)

今、DX人材が求められる理由

経済産業省が2018年に発表したDXレポートには、既存システムの維持に多額の費用がかかるなどのデジタル化に向けた投資を難しくしている要因が挙げられています。またこの状況が改善されない場合、2025年以降には年間で最大約12兆円の損失が発生する可能性があることが報告されています。

さらに2020に発表されたDXレポート2では、DXの必要性を感じている企業が増えた一方で取り組んでいる企業とそうでない企業との2極化が進んでいるとの指摘もされています。

※参考:
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
DXレポート2(中間とりまとめ)

「令和3年版 情報通信白書」によると日本のデジタル競争ランキングは63か国・地域中27位。上位10か国・地域にシンガポールや香港、韓国といったアジアの国・地域が位置するなか日本の順位は低下傾向にあるというのが、日本のデジタル事情です。

※参考:
情報通信白書令和3年版「国際指標におけるポジション」

自社の事業ドメインやビジネスモデルを理解した上で、企業内外のデータとデジタル技術を活用しうるかといったビジョンを描ける人材が求められています。

DX推進のカギとなるDX人材

DX人材と聞くとエンジニアやデータサイエンティストを思い浮かべるかもしれませんが、ビジネスモデルやサービスを設計したりプロジェクトマネジメントをする方も含まれます。

企業のデジタル化を推進するにはそれぞれの職種の連携が必要であり、またそれぞれが、自身の業務範囲外についても最低限の知識を持っていることが求められます。例えばデータサイエンティストの方であっても、企業の開発するサービスについて理解できなければ必要とするデータの目星をつけられません。

また企画職の方もデジタル技術に関する知識を身につけることで初めて新たなサービスを思いつくことが可能になります。

「DX人材」は、ビジネス・サービスの企画や進行管理をするプロデューサーやプロジェクトマネージャー、ユーザインタフェースを考案・構築するデザイナーやエンジニアなど、幅広い人材を意味しています。

DX人材は市場全体では不足しているため採用することは難しく、育成も視野に入れた活動が重要です。外部の企業が実施するOJTを社員に受けてもらうことも必要になるかもしれません。

経済産業省が育成するDX人材

DX人材の採用が難しい場合、どのようにして育成したらよいのでしょうか。企業のDXを進めるには、必要な知識・スキルを学びながら実践を積んでいくほかありません。しかし必要な人材像や、知識・スキルをどのようにして身につけていけばよいのか、ヒントすら無いという状況の方もいらっしゃると思います。

以下に、育成の進め方DX人材育成に関するキーワードや経済産業省の提供する育成支援プラットフォーム、支援策をご紹介します。

DX人材の育成に欠かせない「リスキリング」

リクルートワークス研究所の作成した資料によると、リスキリングとは以下のように説明されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得する/させること

大人になってから自分の興味関心のある分野を勉強し直す「学び直し」とは少し異なり、仕事において何らかの価値を発揮するために学ぶことが特徴です。

米アマゾンは自社の従業員10万人をリスキリングすると発表、国内企業では日立製作所が2020年に国内グループ企業の全従業員16万人にDX基礎教育を実施しました。企業が市場に提供する価値を生むプロセスそのものを変化させるには、特定の従業員のスキルアップだけでは限界があることが伺えます。

また2030年にはIT人材が最大で79万人不足するという試算もあり、経済産業省はリスキル講座の認定制度を設けました。給付制度や助成金との連携を図ることで費用を支援できる仕組みを構築するなど、後方支援の動きも活発になっています。

※参考:
リスキリングとは ーDX時代の人材戦略と世界の潮流ー
経済産業省主催「リスキル講座認定制度説明会」
第四次産業革命スキル習得講座認定制度
平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT 人材等育成支援のための調査分析事業)- IT 人材需給に関する調査 -

デジタル人材育成プラットフォーム ポータルサイト「マナビDX(デラックス)」

経済産業省は認定制度のほか、情報処理推進機構(IPA)と連携し「デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」」を開設しています。

デジタルに関する知識・能力の習得を、必要とする全ての人に提供するためのポータルサイトで、初心者〜専門スキルを身につけたい方、研修として活用したい企業の方など幅広い方を対象とするものです。

基礎的なものから実践的なものまで、有償・無償の講座情報がまとめられています。トップページから「マナビDXで何ができるの?」のページに遷移すると、想定利用者ごとにおすすめの講座一覧を閲覧できます。

企業のDX推進を促進するために2022年の3月29日に開設された新しいプラットフォームです。

※参考:
いま学びたい、お役立ちコンテンツ(DX・デジタル技術・ビジネス変革、等)

DXリテラシー標準

経済産業省の設けたDX人材の目安に「DXリテラシー標準」があります。ここには全ての社会人が身につけるべきデジタルスキルが示されており、DXを推進するためにそれぞれが何をできるのかを考えられるようになることを目指しています。

例えば経営層の方であれば、DXを進めるための経営計画の策定が、製造・開発部門の方であれば自社の現場にどのような技術を応用できそうかの想定ができるようになることが理想です。

現場でDXを推進していくにあたって、知っておくべき技術知識、技術の活用方法に関する知識がまとめられたものであり、実際に推進していくには経営計画を立てる能力やマネジメント能力が求められることに注意が必要です。

DXリテラシー標準は、Why・What・Howの3つに大別されており、なぜDXが重要なのか、何を学べばよいのか、どのように応用可能なのかの指針を確認できるようになっています。

働き手の一人ひとりがDXを自分ごとと捉えて自ら変革に向けて動きだせるようになることが狙いです。

※参考:
DXリテラシー標準

デジタル人材育成協議会

2022年9月、文部科学省と経済産業省主導のもと「デジタル人材育成協議会」が開催されました。

地域の社会課題をデジタル技術によって解決するには、首都だけでなく全国各地にその担い手が必要です。また広域にわたる人材育成には産学官の連携も必須です。そこで、政府・地方公共団体・産業界・大学・高等専門学校を構成員とした意見交換が行われました。

大学・高等専門学校では、新社会人になった際に必要なデジタルリテラシーを確実に身につけられる教育の提供を推進。現役社会人の方たちにはあらたにDXリテラシー標準を示し、最終的にはDXの推進を担う全ての社会人が推進のためのリテラシーを獲得することを趣旨としています。

文部科学省は大学・高等専門学校にむけた「数理・データサイエンス・AI教育」の全国展開を推進、経済産業省ではスキル標準の提示や、「マナビDX(デラックス)」のような育成プラットフォームの提供を進めています。

育成の方向性は地域ニーズによって異なり、例えば九州では半導体人材の育成・確保が重視されているようです。日本の各地域ごとに産学連携で人材育成を進めていきます。

※参考:
デジタル人材の育成体制

具体的に求められるDX人材のスキルとは

DX人材といっても、企業内の役割によって求められるスキルはさまざまです。また事業ドメインや企業の状況によって変化しますが、経済産業省の仮説を参考にして予測することもできるでしょう。

企業全体を俯瞰して行うべき活動を設定すること、デジタル技術の知識をヒントにビジネスのアイデアを企画しプレゼンテーションすること、企画をシステム要件に落とし込んで実装することなどは共通するでしょう。

ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトは、企業全体を俯瞰して事業活動を組み立てる立場にあります。DXの推進においてはデジタルに精通していることが求められ、デジタル技術をどのように利用して企業に変革をもたらすのか計画・実行していくことが役割となります。

例えば、システム開発部門・営業部門・マーケティング部門といった部門間で、どのような情報を受け渡しすると業務がスムーズに進むのか横断的に設計したり、その効果を検証することも業務のひとつです。

ビジネスアーキテクトという職業が明確に存在するというよりは、部門を横断した計画の立ち上げ・推進をする活動自体がビジネスアーキテクトと言えるかもしれません。DXが進められる現場では、DX部門の担当者がプロジェクトを立ち上げることもあるでしょう。

テクノロジーの知識が不足している場合は、テクノロジーの専門家かつ事業・経営に強い「テクノロジー・アーキテクト」を外部の専門家として頼ることも考えられます。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーの役割をひとことで言うと、市場全体や目の前の顧客のニーズからアイデアを発想し、ビジネスとして実行可能なレベルまで企画していくことにあります。自社の事業部門と連携しながら業務を進めていくことになるでしょう。

ビジネスデザイナーそのものにデジタル技術に関する高レベルな知識・スキルは要求されませんが、デジタル技術を活かしたビジネスを発想するには欠かせません。さらにニーズを汲み取るスキルから企画を他者にプレゼンテーションするスキルまで、幅広いスキルを要求されます。

社内登用する場合は、自社のビジネスについて熟知している人材が理想のため、経営企画部門の人材を育成するといいかも知れません。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、企業内に蓄積している膨大なデータから事業の成否に関連する情報や新たな事業の種となり得る情報を発見する役割を担います。集めるべきデータを整理する段階からスタートするケースもあるでしょう。

インターネットが発達し、さまざまなアプリケーションが開発され、またスマートフォンの普及やIoTが進んだ結果、収集できるデータ量が膨大になりました。そのデータを分析して事業活動の意思決定を支援したり、分析手法そのものを考案したりするのがデータサイエンティストの仕事です。

企業の抱えている課題を洗い出す、コンサルタントのような業務を行うケースもあります。データの取扱いに長けた人材でありDX推進の要といえるでしょう。

エンジニア/プログラマー

DXを推進するエンジニアは、企業の推進するDXに対応したスキルが求められます。システム開発をするエンジニアは一般的に、課題のヒアリングからシステムの要求をまとめ、システム要件の定義、開発工数を見積もるといった業務を進めます。

請負業務として開発を進める場合と異なり、自社内のDXを進める場合は他部門との調整や、ときにはプロジェクトをリードする立場になることもあるかもしれません。

プログラマーは、定義された要件にしたがって、プログラムを書いていきます。プログラミング言語はさまざまあるため、一人採用したからといってなんでも作れるわけではありません。施策ごとにプロジェクトを立ち上げてアサインしていく必要もあるでしょう。

UXデザイナー

UXデザイナーは、企業の提供する製品・サービスを、ユーザーがどのように体験するのかを設計します。例えばWebアプリケーションであれば操作方法が直感的にわかったり、スムーズに動くといった使い心地がユーザー体験となります。このユーザー体験を略してUX(「ユーザーエクスペリエンス(User Experience))と呼びます。

ユーザーがアプリケーション等を操作するとき、必ずボタンなどの部品を操作します。これらはユーザインタフェース(UI)と呼ばれ、UXデザイナーの業務にはUIの設計も含まれている場合があります。

DXにおいてUXデザイナーが重視される理由は、業務効率化のためだけでなく顧客に提供する価値を高める際に必要になるスキルのためです。ユーザー体験の質を向上させる=顧客に提供する価値の向上となり、DX推進にUXデザイナーが重宝されるようです。

まとめ

DXの概要やDX人材の定義、経済産業省の考え方や活動、DX人材に求められるスキルを解説してきました。DX人材は不足気味のため採用活動だけではなく育成も視野にいれることが大切です。まずは、自社に必要な人材像を洗い出すところから始めてみてはいかがでしょうか。

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