BtoBマーケティングコラム 最注目の「ヘッドレスCMS」のメリットデメリット―WordPressとの違いや代表的なヘッドレスCMSは?

2022年11月21日

ヘッドレスCMSとは

ヘッドレスCMSとは、外観などのデザイン部分やCSSが無く「コンテンツデータを管理する」機能だけを持っているCMSのことを指します。つまり、コンテンツを閲覧したり表示したりする機能を持っていないCMSです。

なぜ、「ヘッドレス」なのか?

従来のCMSでは、コンテンツを入稿・管理するシステムと、コンテンツを表示させるビューワー機能が組み合わさっています。このビューワーを「ヘッド」と呼び、このヘッド機能が無いCMSであるため「ヘッドレスCMS」と言われます。

ヘッドレスCMSとWordPressとの違い

ヘッドレスCMSに対して従来型CMSのことを「カップルドCMS」と呼ぶこともあります。また、この従来型CMSで代表的なのが「WordPress」です。

ここからは、WordPressとベッドレスCMSの違いについて解説していきます。

WordPressの特徴

WordPressに代表される従来型CMSでは、テキストや画像・動画などのコンテンツデータを表示させるビューワー機能(フロントエンド)と、これらコンテンツデータやテンプレートを管理する機能(バックエンド)が組み合わさっています。そのため、見た目のデザインやテンプレートの作成および改修・調整といったフロントエンド側での作業をする場合には、バックエンド側で使用しているプログラミング言語を使わなければなりません。

ヘッドレスCMSの特徴

ヘッドレスCMSには、コンテンツを表示させるフロントエンドとしての機能がないので、ユーザーに対するコンテンツ表示を気にすることなくシステムの開発や改修を行うことが可能です。

しかしヘッドレスCMSには、ビューワーとなるフロントエンド機能がないため、CMS外部にフロントエンドとなるものを作る必要があります。そして、外部に作成したフロントエンドに向けて、ヘッドレスCMSが提供するAPIでコンテンツデータを出力する形で運用していきます。

ヘッドレスCMSが求められる理由

2000年代前半にリリースされ始めた従来型CMSは、表示速度やシステム開発といった観点から問題が指摘され始め、2018年頃よりヘッドレスCMSが注目され始めました。ではなぜ現場でヘッドレスCMSのニーズが高くなったのか、その大きな理由を紹介します。

ニューノーマル時代の到来

2020年からの新型コロナウイルス流行の影響により、Web上で完結できるサービスが増えてきました。さらにスマホやタブレットの普及などもあり、インターネットの世界も新しい常態になりつつあります。

こうした変化のなか、WordPressなどのCMSには、これまで以上に表示速度のスピードアップが求められ、さらにはより強固なセキュリティも必要になってきました。これらの時代背景もあり、従来型CMSの諸問題にも迅速に対応できるヘッドレスCMSがより一層求められるようになってきています。

WordPressでの運用負荷の増加

WordPressは従来型CMSの代表格で、無料で利用できるオープンソースということもあり圧倒的なシェアを誇っています。

WordPressはテーマやプラグインが豊富にあって専門知識もさほど必要ないというメリットがある反面、バージョンアップやプラグインの導入、トレンドに合わせたカスタマイズやメンテナンスなど、運用期間が増えるにつれて作業時間や労力などの運用コストが徐々に大きくなってしまいます。

こういったWebサイトの運用負荷を減らすため、ヘッドレスCMSに移行する企業やサイトも増えてきたのが実情です。

ヘッドレスCMS導入のきっかけ

ヘッドレスCMSにはメリットがあると同時に、もちろんデメリットもあります。どういった目的を達成したいとか、どのような課題を解決したいときに、このヘッドレスCMSを導入するのが理想なのか。この点について解説していきます。

戦略的にコンテンツ配信をしたい

Webサイト、SNS、メール、動画など、複数チャネルで配信することが当たり前になってきた昨今、マルチチャネルで戦略的にコンテンツ配信することはとても重要です。

ただ従来型のCMSだと、すべてのデバイスやチャネルで実行できるように設計されていません。その点ヘッドレスCMSだと、表示するデバイスやチャネルを選択して配信ができるため、各ユーザーに合わせたコンテンツ配信を戦略的に行うことができるようになります。

開発・運用コストを下げたい

WordPressのような従来型CMSだと、運用歴が長くなるにつれて、システムの開発、カスタマイズやメンテナンス、こういったことに人的および金銭的コストが重くのしかかってきます。

ヘッドレスCMSでは、サイトの表示やデザインなどの機能と切り離されているため、システム開発やカスタマイズにかかる時間や労力も削減可能です。また扱うデータ量やデータの内容も減るので、サーバーにかかる運用コストもカットできます。

SEO対策を強化したい

常に脆弱性が指摘されているWordPressだと、ハッキングによりサイトが表示されなくなったり、関係ない広告が入ったり、別ページへリダイレクトされたりなど、Googleからペナルティを受ける可能性もあります。またデータ量が増えてくると、サイトの表示速度も遅くなってしまいます。こういったことは、SEOの観点からはマイナスでしかありません。

ヘッドレスCMSを導入することで、セキュリティ強化、表示速度アップ、などが可能となりSEO対策にもなります。

ヘッドレスCMSのメリット

先ほども挙げたように、従来型CMSに比べるとヘッドレスCMSには様々なメリットがあります。そこでここからは、ヘッドレスCMSが持っているメリットの中から、とくに代表的なものをいくつか紹介していきます。

表示速度が速い

従来型CMSでは、ページを表示するとき、フロントエンドとバックエンドでデータのやり取りをする必要があります。
一方ヘッドレスCMSでは、フロントエンド部分が完全に独立しているため、余分なデータ処理をする必要がなく、ページの表示スピードが格段にアップします。

表示速度が速くなるとユーザーが快適になるのはもちろん、Googleなどの検索エンジンからの評価も高くなります。そしてその結果として、サイトへのアクセスも増えていくでしょう。

マルチデバイス対応が簡単にできる

ヘッドレスCMSではフロントエンドとバックエンド機能が切り離されているため、API連携をしてコンテンツデータを表示する形式になっています。そのためデバイスごとにコンテンツデータを作成する必要がなく、1つのコンテンツをあらゆるデバイスで表示させることが可能です。

パソコンのブラウザだけでなく、スマホ(iOS/Android)やタブレットにも表示対応でき、また1つの管理画面でコンテンツの配信や更新ができます。

セキュリティを強化しながらSEO対策ができる

ヘッドレスCMSでは従来型CMSに比べると、セキュリティ強化がしやすくなります。オープンソースであるWordPressだと多数の便利なプラグインを使える反面、ハッカーに狙われやすく、脆弱性もたびたび指摘されています。

その点ヘッドレスCMSでは、ハッカーがコンテンツ管理データに侵入しにくい構造になっており、Webサイトがハッキングされるリスクも減り、さらにGoogleからペナルティを受けるリスクも回避することが可能です。このように、セキュリティ面からのSEO対策にもなるでしょう。

サーバーコストを抑えることができる

ヘッドレスCMSではビュー用(フロントエンド)のファイルを生成する必要がないので、サーバーで処理しなければならないデータ量が従来よりも少なくなります。そのため、必要以上にサーバーのスペックに配慮しなくてもWebサイトを運用することが可能です。

従来型CMSを利用するときに比べて、サーバーにおける表示速度やデータ容量にこだわる必要性が薄れるので、結果としてサーバーにかかる費用を今までよりも抑えることができます。

自由度の高いフロントエンド改修ができる

ヘッドレスCMSでは、フロントエンド機能とバックエンド機能のそれぞれが分離独立しているため、お互いに干渉せずシステム改修などが行えます。従来型CMSだと、バックエンドの仕様に合わせてフロントエンドの改修をする必要がありましたが、ヘッドレスCMSではバックエンドへの影響を気にすることなくフロントエンドの改修が可能です。つまり、従来よりも自由度が高いフロントエンドの改修が行え、改修したいタイミングで自由にカスタマイズできます。

開発・運用工数の無駄が省ける

従来型CMSでは、複雑なコンテンツや表示仕様になるほど「開発」や「運用」に関わる工数が増えていきます。もちろんコストもかかります。その点、ヘッドレスCMSではコンテンツ構造を自由に定義でき、さらにフロントエンド機能とは切り離されているため、開発や運用に関する工数をかなり減らすことが可能です。またヘッドレスCMS導入後は、エンジニア以外でもコンテンツの管理や更新をすることができ、マーケティングのスピードも向上します。

部分的にCMS機能が使える

静的ページとしてWebサイトを作っている場合、更新頻度が高い「お問い合わせページ」や「製品ページ」だけをCMSにしたいケースがあります。ただWordPressなど従来型CMSだと、Webサイトの一部分だけをCMSとして運用することはできません。というのも、すべてのコンテンツをCMSに移行する必要があるからです。しかしヘッドレスCMSであれば、更新したいページだけを後付けでCMS機能で管理することができます。

ヘッドレスCMSのデメリット

ヘッドレスCMSには多数のメリットがある反面、少なからずデメリットもあります。デメリットのほとんどが技術的なことに関するもので、場合によっては開発エンジニアや外部ツールが必要になることもあるでしょう。
以下、デメリットについて触れていきます。

開発エンジニアの参加が必須

ヘッドレスCMSにはフロントエンドが備わっていないため、プレビューを確認することができません。そのためコンテンツを表示するシステムの開発が別途必要であり、それには専門のエンジニアの参加が必須です。

また、ヘッドレスCMSからデータを受け取るAPIの知識や技術も必要で、これはヘッドレスCMSが使えるエンジニアがいないと難しいでしょう。実際にヘッドレスCMSを導入すると担当エンジニアの人件費もかかるため、コスト的な面でもデメリットがあります。

技術的な難易度が高い

ヘッドレスCMSを導入するということは、コンテンツを表示させるためのフロントエンド開発、さらにヘッドレスCMSとフロントエンドを繋ぐためのAPI設計など、専門的な知識や技術が必要になってきます。そのため、WordPressなどの従来型CMSに比べると、ヘッドレスCMSではより専門的で難易度の高い知識や技術が求められます。システム開発だけでなく、コンテンツの運用面についても技術的難易度が高くなるといえるでしょう。

外部ツールが必要になる場合がある

ユーザー側のページビューを「静的ページ」として処理しているのがヘッドレスCMSの特長であり、これによりページの表示速度が速くなるという利点があります。ただ、Webページの中で動的な機能を使いたいケースでは、この静的ページという点がデメリットにもなります。

たとえば、Webページに入力フォームを設置したり、データベースの機能を使ったりする場合には、それらの目的に合わせて外部ツールを導入する必要があるでしょう。

代表的なヘッドレスCMSの比較

ここまでヘッドレスCMSの特徴やメリット・デメリットについて解説してきました。ここからは代表的なヘッドレスCMSを6種類ほど紹介していきます。ヘッドレスCMSの導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

国産ヘッドレスCMS

まずは国産のヘッドレスCMSについて、代表的なものを2つ紹介します。なお国産ヘッドレスCMSは生産拠点が国内にあるため、顧客からの問い合わせやサポートなどに対してスピーディに対応ができる点がメリットです。

microCMS

microCMSは、日本語のドキュメントや管理画面が使える初心者が導入しやすい代表的なヘッドレスCMSです。大手メディアサイト、ECサイト、コーポレートサイトなどで使われています。予約投稿や編集履歴の確認、プレビュー機能などもあるため、はじめてヘッドレスCMSを利用するユーザーにとってもハードルが低いでしょう。また、様々なデータの取り扱いができるので、メディアサイト・ECサイト・SaaSなどのシステムに対応できます。

【料金】月額4,900 円〜(無料プランあり)

【公式サイト】https://microcms.io/

Kuroco

Kurocoは、約4,000社に導入された従来型CMS「RCMS」をベースに開発されたヘッドレスCMSです。コンテンツ管理はもちろん、会員管理機能、お問い合わせフォーム、メール、EC機能、決済機能などを利用できます。また、自社システムとも連携して顧客情報を活用することも可能です。API設定は管理画面から簡単にでき、WordPressのようにプラグインに振り回されることなくシステム構成を自由にカスタマイズできます。

【料金】従量課金制(1,110円の無料枠あり)、初期費用なし

【公式サイト】https://kuroco.app/ja/

海外製ヘッドレスCMS

次に、海外製のヘッドレスCMSで代表的なものを2つ紹介します。海外製ものは広く普及しているため、ユーザーからの見た目や、使いやすさといった点でメリットがあります。反面、英語を理解していないと対応できないケースもあるので注意が必要です。

Contentful

Contentfulは、ドイツの会社が提供しているヘッドレスCMS。代表的な導入先としてはSpotifyなどがあります。クラウド型サービスなのでサーバーで管理する必要がなく、比較的コストを抑えられるのもメリットです。しかし、日本語対応ではないため英語を理解する必要がある点がデメリットとなる可能性があります。GoogleアカウントやGitHubアカウントからでも登録できる点が便利です。

【料金】月額$489〜(無料プランあり)

【公式サイト】https://www.contentful.com/

GraphCMS

GraphCMSは、Meta社が開発したAPI向け言語「GraphQL」を活用することに特化したヘッドレスCMS。たとえば、アプリの開発などでGraphQLを使った経験があるエンジニアが在籍する企業におすすめです。コンテンツのフィルタリング機能が充実していること、バッチ処理にも対応できることが大きな特徴。ページ読み込み速度のアップ、サービスサイトの拡大、REST APIからの切り替え、こういったことを検討している場合には選択肢の1つに入れておきましょう。

【料金】月額$49〜(無料プランあり)

【公式サイト】https://hygraph.com/

無料で利用できるオープンソース(OSS)

ここまでは有料プランのヘッドレスCMSを紹介してきましたが、完全無料で利用できるオープンソースのヘッドレスCMSもあります。そこで、ここからは代表的なオープンソース型ヘッドレスCMSを2つ紹介していきます。

Strapi

Strapiは、Node.jsベースの完全無料のヘッドレスCMS。コーディングなしでも簡単にAPI開発ができるという特徴があります。また、プラグイン追加なども柔軟に行えるため様々なカスタマイズが可能です。Strapiの導入はとても簡単で、基本設定のほとんどが管理画面からの操作で行えます。ただし、管理画面の一部は日本語サポートされていますが、まだ日本語での情報が少ないのが実情です。そして、下書き保存ができない点もデメリットの1つです。

【公式サイト】https://strapi.io/

Ghost

Ghostはブログに特化したヘッドレスCMSで、オウンドメディアやブログなど記事コンテンツ作成に向いています。先ほどの「Strapi」と同じくNode.js環境で動作し、さらにWordPressの投稿画面と似ているためWordPressの扱いに慣れていると使いやすいです。オープンソースのヘッドレスCMSでは最も人気があり、とくにメディア型Webサイトの運営に便利だとされています。ただし、WordPressに比べるとプラグインの数は少ないのが実情です。

【公式サイト】https://ghost.org/

WordPressのヘッドレス化

従来型CMSの代表格であるWordPress自体を「ヘッドレス化」することもできます。これはWordPressを使い慣れている方にとって新たに学習する必要がなく、とても便利な方法です。

Shifter Headless

株式会社デジタルキューブが提供している「Shifter Headless」では、WordPressのダッシュボードをCMSとして利用しつつ、APIを通してフロントエンドにコンテンツを送信することができます。

【公式サイト】https://www.getshifter.io/ja/

WordPress REST API

WordPressに標準搭載されている「WordPress REST API」を使えば、WordPressを簡単にヘッドレス化でき、今までのコンテンツやプラグインもそのまま引き継ぐことができます。WordPressからヘッドレスCMSへ移行したいときはぜひ検討してみてください。

ヘッドレスCMSを使ったBtoB企業のサイト事例

それでは最後に、ヘッドレスCMSを導入してから成果を挙げているBtoB企業のサイトについて、3例ほど紹介していきます。これから自社にヘッドレスCMSを導入する際、または導入を検討する際には、ぜひ参考にしてください。

NRIネットコム

以前はWordPressを使用されており、サイトリニューアルをきっかけに「microCMS」を導入してヘッドレス化に移行した事例です。静的サイトジェネレータは「Gatsby」を、インフラ基盤には「Netlify」を使用しています。

URL:https://www.nri-net.com/

Wärtsilä

「Contentful」を導入したことにより、自社の従業員18,000人の誰もが簡単にコンテンツを投稿できるようになった事例です。そして従業員たちによって、50,000以上のコンテンツが作成されるまでになりました。

事例詳細:https://www.contentful.com/case-studies/wartsila/

まとめ

インターネットの世界も新たな常識がどんどん生まれてきており、それに合わせて自社サイトのリニューアルや改修が必要とされる時代です。また、Webサイトの表示速度アップやセキュリティ強化といった面から、WordPressのような従来型CMSからヘッドレスCMSへ移行する企業も増えてきています。

しかし、ヘッドレスCMSではコーディングなどの専門知識が必要で、自社にエンジニアがいない場合にはかえって運用が難しくなるリスクもあります。まずは自社にとってヘッドレスCMSが必要なのかを調査しましょう。

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