BtoBマーケティングコラム CRMとは「大局的視点から理解するCRM」顧客はそこにいる~CRMを現在視点から読み解く

2022年12月6日

ソリューションとしてのCRMSの本来の用途や可能性を伝えていく

このブログをご覧になっているユーザーは、CRMのシステム導入を検討されている方や、新たに任された担当者だと思います。一番の困り事は、システムを導入するにしても、何から手をつければよいか分からないことではないでしょうか。

お客様との打ち合わせに出向くと、CRMに関して間違った認識をされている方が少なくありません。例えば、「CRMを入れたいんですけど…」という相談を受けますが、こうした言葉には少し違和感があります。それは、「CRM」がマーケティングの全ての問題を解決してくれる「魔法の箱」だと勘違いしている可能性があるからです。

それはどういうことかというと、少し長い説明になりますが、ご容赦ください。まずCRMとは、企業にとって顧客は誰なのかを見極め、購買行動につながる関係を築くメソドロジー(経営戦略手法)のこと。

しかし、マーケティング経験が浅い担当者の方などは、CRMをシステムだと考えているケースが多いです。「システム(仕組み)」を指すのであれば、「CRM(Customer Relation Management)」ではなく、「CRMS(Customer Relation Management System)」となります。

では、この「CRMS」を導入すれば、企業が求めているような自動でマーケティングのすべての困り事を解決するような「魔法の箱」ができ上がるのかというと、決してそんなことはありません。

日本企業がCRMS(Customer Relation Management System)に注力し始めたのは、2000年代。その頃のシステムは、顧客満足に応えるレベルまでしか考えられていなかったので、非常にシンプルなデータベースでした。

しかし、今日のCRMSは違います。お客様がどんなものを求めていて、どんな行動をしようとしているのか、あるいは何を欲しているのかというところまで読み解こうとしており、CRMS自体の解釈も変わりつつあります。それは、CRMS(System)ではなくCRMS(Solution)です。にもかかわらず、その違いを理解することなく、相談されるマーケティング担当者が少なくありません。

そこで本記事では、過大評価でも過小評価でもない、ソリューション(Solution)としてのCRMS本来の用途や可能性をお伝えしたいと考えています。その際、マーケティングについてあまり知らない方も、CRMをある程度理解してもらう必要があります。

しかし、私はマーケティングの専門家ではなく、普段は企業のマーケティング活動に必要なITツールの導入を支援しているITコンサルタントです。データを分析するBIツールや、オウンドメディアなどのWebコンテンツを管理するCMSツールなどの設計〜開発・運用までトータルに関わり、企業の経営をITの側面からサポートしています。

CRMは専門外のため、その部分についてはCRMを体系的に説明しているバイブル的な専門書『CRM―顧客はそこにいる』(村山徹/三谷宏治+アクセンチュア著 東洋経済新報社)の力を借りて、進めていきたいと思います。それでは、ここから本論に入っていきましょう。

CRMでは、曖昧化したニーズを読み解くヒントが得られる

私は今年で63歳。1980年代の高度経済成長後期に社会人となり、キャリアは40年以上です。社会人デビューを果たした当時は、モノをつくれば売れる。顧客のニーズをそれほど詳細にリサーチしなくても、良質な製品であれば買ってもらえる時代でした。しかし、今はモノがあふれ、顧客の求めている価値観が多様化し、ほしい製品を正確に捉えないと簡単には売れなくなってきました。

『CRM―顧客はそこにいる』では、この段階の顧客ニーズは、お客様自身も自分のニーズを言い表わせない、あるいは心の中の思いを商品・サービスに翻訳できない「曖昧化(模化)」と表現しています。それまでの顧客ニーズからどのように変わっていったのか。その変遷を簡単に紹介してみます。

1950年頃、家電製品「白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫」が「三種の神器」と呼ばれ、豊かな生活の象徴でした。その後、私が社会人になった1980年代には、それが「カラーテレビ・クーラー・自動車」に変わったものの、まだまだモノが不足しており、持っていることがステータスであることは変わりません。それゆえ高度経済成長期のこの時代においては、顧客は製品に対して、細かな機能性を求めておらず、企業は顧客が欲しいモノを供給することで、顧客のニーズを満たすことができました。いわゆる「少品種大量生産」の時代です。

そこから時間の経過とともに、顧客の必需部分が満たされ(モノ不足が解消されていき)、ニーズの多様化が見られるようになってきました。企業は顧客の多様化したニーズを理解して、少しずつセグメント分けをして「多品種少量生産」へと変更してきました。

細かくいえば「少品種大量生産」の場合、「大きい」「壊れにくい」「安く手に入る」など、全てが価値になっていました。「多品種少量生産」では、「コンパクト」「機能充実」「軽い」などに、少しずつカスタマイズして対応していました。それは顧客をじっくり観察しているわけでなく、ただバリエーションを増やしているだけの、まだまだ「モノ先行型」です。

私もメーカーに30年近く在籍していたので非常に実感できます。やはり日本の製造業の強みは、この「多品種少量生産」だと思います。日本企業は数多くのバリエーションを器用につくり分けるのが非常に得意です。しかし、マーケティングセンスは非常に弱く、そこから先へ進めず、いつもプロダクトアウトで終わってしまいます。

CRM を理解するには、この発想からの脱却が重要になります。商品・サービスの多様化の度合いが強化され、バリエーションが増えるだけでなく、機能性が高まることでどんどん高度化・複雑化していきます。それによって、検討する時間も、知識もない顧客は、自分のニーズを言い表せない、ニーズの「曖昧化」が起きてしまうわけです。企業がそのニーズをつかまえるのは、並大抵のやり方だけでは実現できません。なにせ顧客本人も分かっていないことですから。

しかし、爆発的に売れたヒット商品を見ると、確かに「これがあったら便利だよね」というものが多いのも事実。これは、顧客の見ているものや顧客の動向などから、ニーズを読み解くしかありません。まさに企業のマーケターに求められる能力だと思います。何度も言いますが、これは自動化できません。ただ、読み解くヒントを見つけ出すことは可能です。そのやり方が「CRM」になります。

個々の顧客の購買エージェントを目指す

『CRM―顧客はそこにいる』には、「購買エージェント」というキーワードがたびたび出てきます。CRMとして現代企業に求められるアプローチは、この「購買エージェント」だと思います。「購買エージェント」について、本書では下記のように定義しています。

「顧客に対する」のではなく、「顧客の側に立って、顧客の購買を導くこと」。そこには、3つの能力が求められます。

  1. 顧客の思いを理解する能力
  2. 高度な専門知識に基づいて商品・サービスを理解する能力
  3. 顧客の思いを商品・サービスへと翻訳する能力

さらに今はニーズが曖昧だからこそ、「購買エージェント」が顧客に対して、次の6つのバリューを提供することで、新しい価値提供・創造を可能にします。

(1)カスタマイゼーション……嗜好・消費パターンを記憶して、商品/サービスをニーズに合わせて作る・組み合わせる

(2)ワンストップ……必要なニーズに関連する商品/サービスを1カ所で提供する

(3)マッチング……中立、客観的視点で商品/サービス群の中から顧客のニーズに合うものを探す

(4)ジャストタイミング……必要性が最も強まり、消費者にとってふさわしいタイミングで商品/サービスを提供する

(5)レコメンデーション……ニーズの予測・確認・修正を繰り返し、嗜好、消費パタンに応じて見合う商品/サービスをピンポイントで提案する

(6)メタプロダクト……消費の背景を理解した上で、高次のより明確なニーズに対して、すべての商品/サービス群を目的実現のためにセットで提供する

直近10年間の自分の購買行動を振り返ってみると、自分にとっての「購買エージェント」はというと、浮かんできたのは次の2つです。

1つは「Amazon」。コロナ禍になり、基本リモートワークで仕事をするようになって、「Amazon」で、生活用品、書籍、ITグッズなど、さまざまなモノを購入することが増えました。ヘビーユーザーのため、多いときは年間100万円超の買い物をしています。「ワンストップ」で、さまざまな種類の商品を購入できるのはもちろん、必要な時期(ジャストタイミング)に、商品を組み合わせて(カスタマイゼーション)探せ(マッチング)ますし、むこうからもオススメの商品を推奨(レコメンデーション)してくれます。至れり尽くせりのサービスで、私自身の満足度も非常に高いです。

もう1つはサービスではなく人ですが、自動車メーカー「スバル」の担当営業のIさんです。リアル(対面)ではありますが、「顧客エージェント」のお手本のような人です。私は、30年以上スバルだけを乗り続けている「スバリスト」です。Iさんと出会ったのは、3台目のスバルに乗っていたときで、当時はRV(レクリエーショナル・ビークルー)車を購入していました。「今、新型のRV車はこんなに性能が良くなったんですよ」といった興味をくすぐるポイントを何気なく勧めてくるので、それまで5〜10年ペースで乗っていたのが、その後しばらくは3年ごとに買い換えるようになりました。

今はRV車から変更し、真っ赤なスポーツセダンに乗っています。実は「赤色」は私の好みではありません。でも、このクルマを購入したのもIさんの言葉が決め手になりました。従来購入していたクルマと違い、今回はこれまで二の足を踏んでいたハイスペック車です。ハイスペックのクルマを買うには、奥さんの許可が必要だったので、どうやって説得すればいいか、Iさんに相談したところ、「奥さんに色を選んでもらうんですよ」というアドバイスでした。すると効果てきめん。私の妻はクルマには全く興味のない人だったのですが、自分で色を選んでからは、「自分の車」だといって愛着を持つようになりました。このようにIさんのアドバイスは、客観的な視点で顧客ニーズに合った商品を提供する「マッチング」といえるでしょう。

また、「ワンストップ」や「カスタマイゼーション」でいえば、Iさんの薦めで、スバルが仲介している「JAF」や「自動車保険」などにも加入しましたし、「メタプロダクト」については、次のようなエピソードもありました。スバルには新車を買った人だけが使える点検パック(毎年、定期点検が受けられる)というサービスがあり、私も加入していました。山梨県に住んでいるので、冬は雪道になるため「スノー用タイヤ」に交換します。これまでは地元のカー用品店に依頼していたので、夏の通常タイヤの交換も含めて年に2回費用がかかっていました。Iさんはこちらのウォンツを理解して、「定期点検の時期にタイヤを持っていただければ、無料で交換しますよ」と提案してくれたんです。

このIさんの一連の提案活動をみて、これが「購買エージェント」だと感じました。「ワンストップ」で、いろんなサービスを探して、組み合わせて提供してくれる。顧客のウォンツを探り、自動車に関わるアフターサービスもこまめに提供できる「メタプロダクト」はもちろん、「マッチング」も「カスタマイゼーション」もある。 「ジャストタイミング」で、ちょうど買い替えの時期に電話をかけてきてくれたりもする。

私も、普段お客様との折衝業務を行っているので、営業マンのアプローチはある程度理解しているつもりです。それでも乗せられてしまう。それに「無料のタイヤ交換」といった自分に得するサービスなら、大歓迎です。
確かに、Iさんに出会って、クルマの買い替え頻度は増えたので、それだけ出費もかさんでいます。でも家族もハッピーだし、自分では選ばない赤い車に乗ってみるとワクワク感が体験でき、トータルでみたときは、楽しいカーライフを過ごしてきたと思います。このように「個々の個客の購買エージェント」(つまり個客エージェント)になれるかどうかが、これからのCRMの肝になってくると思います。

マーケターにはKKDが必要不可欠

「個客エージェント」とは、スバルの営業Iさんのようにさまざまな付加価値を提供して、「こういうものがほしいんだ」という顧客が「買いモード」になっているタイミングを創出していきます。そうすれば、たしかに個々の顧客の心を動かすことができるはず。

では、その「買いモード」をどうやってあぶり出していくのか。私の場合はスバルのディーラーに行くことで、Iさんも「今が買いだな」というシグナルをキャッチできたと思います。しかしオンラインの場合は、そう簡単にはいきません。そこで「買いモード」の変化をキャッチするためにCRMSというシステムが必要になります。

「データマイニング」といわれるものがあります。これは膨大な顧客データから特徴的な傾向を持つ情報の塊を解析することによって、見出していく技術で、この技術を使った分析手法に「クラスター分析」というのがあります。実際、マーケティングの分析手法としては、他にもコレスポンデンス分析、判別分析、決定木分析などもありますが、マーケティングをあまり知らない人にも分かりやすく説明するために、代表的なやり方で話を進めていきたいと思います。

それこそ30年前までは、何ギガ、何テラといった膨大な顧客データを解析しようとすると、1台何億円もするようなスーパーコンピュータがないと処理できませんでした。それが、今では日常使っているパソコンで可能になりました。しかも、クラウド上で利用できるSaaS(Software as a Service)が普及したため、コンピュータを用意する必要もありません。

しかし、システムでクラスター(塊)までは見つけられても、なぜここに顧客が集まっているのかまでは分かりません。それを理解するためには、マーケターの長年培ってきたKKD<経験(Keiken)・勘(Kan)・度胸(Dokyou)>が必要です。顧客が購買行動にいたる何らかの理由があるはずです。それを、ターゲットとなる人物、生活習慣、SNSなどの言葉(キーワード)を眺め考察して、切り口を考えて分析し、これだと思うものでアプローチしてみる。結果、ダメであれば、再び新しい仮説を立てるしかありません。この繰り返しで、マーケターは顧客がいる理由を読み解いていきます。経験の浅いマーケターは、そこまでの意識を持っていないことが多いと思いますので、この機会に周りの先輩や上司から学んでみてください。

事実に基づくデータである「属性情報」と「行動情報」が活用できる

CRM(Customer Relation Management System)について、もう少し話を続けます。CRMとしてどのようなデータが必要なのか、マーケターの方であればご存じだと思いますが、基本をおさらいする意味で、触れておきます。大きく分けると「属性情報」「行動情報」「意向情報」の3つです。

年齢、性別、家族構成などの「属性情報」、購入履歴や購入頻度、購入額などの「行動情報」、そしてアンケート調査などで顧客の意思が反映された「意向情報」があります。クラスターを見つけるためには、事実に基づくデータにある「属性情報」と「行動情報」が重要になります。このデータの精度が高ければ高いほど、高い精度の仮説を立てられます。

一方、「意向情報」の「こういうものを買いたい」という「希望」や「意思」は人の虚栄や見栄、そして照れも入るため、非常に不正確で、あまり当てにならないと言われています。『CRM―顧客はそこにいる』によると、「意向情報」をどうしても使わざるを得ない場合は、「非常にそう思う」「まったくそう思わない」などの特に強い意向のみを使い、あとは切り捨てたほうがいいようです。いざというときは、ぜひ参考にしてみてください。

自社に旧来のシンプルなデータベースの「CRM」や営業支援ツールの「SFA(Sales Force Automation)」があれば、おそらく加工すれば顧客の属性情報などは活用できます(ただ、簡単には活用できない場合が多いです。この課題については、のちほど触れるようにします)。最近だと、ほとんどの企業がWebサイトを持っていますし、オウンドメディアやECサイトを展開しています。それらのサイトがあれば、商品の購入履歴はもちろん、どのページを何名のユーザーが見ているか、どの商品にどのくらいの人が興味を持っているかなどの、顧客の行動情報も把握できます。

しかし「クラスター」は、単に「データの特長的な塊」でしかありません。なぜ、そのような塊があるのかを、マーケターが読み解くことで「クラスター」が意味のある「セグメント」という概念に変わります。

有効なデータを集めてこられるかどうかが、精度の高いクラスターをつくる鍵に

そのためには、属性情報や行動情報を突合して、組み合わせて解析するBI(Business Inteligence)ツールが必要になります。メジャーなのが、SaaSとして提供されているTableau(タブロー)。これは安価で、初心者にも使いやすいツールになっています。Tableauの公式サイトには、このツールを活用したクラスター分析のサンプル画面の記事が紹介されています。

参照元:Tableau のヘルプ「例: 世界経済インジケーター データを使用してクラスターを作成する

どのようにしてクラスターを見つけていくのか。掲載されている例題はこちらです。

「世界中で平均寿命が延び、年長者がよりアクティブとなっているため、高齢者の観光は潜在顧客を探し、惹きつける方法を知っている企業にとって利益の多い市場となっています。Tableauに付属している世界インジケーターには、正しい種類の顧客が十分存在している国または地域を特定するのに役立つようなデータが含まれています。」

つまり、先進国に在住する、ある程度の年収のある人たちのデータを入れると、どのあたりの地域にどのくらいの潜在顧客がいるかが、あぶり出されてきます。それを表したのが、地図上(下図)のグリーン部分です。

≪クラスター4(黄緑)が最も有力な潜在顧客の多い地域≫

このようにTableau(タブロー)を活用すると、データをもとに分析できるので、自分たちが求めているセグメント(顧客)を見出していくことが可能です。ただし、現場ではこのサンプルのように、簡単にセグメントを見つけることはできません。

実際には、人の手では処理できないほどの膨大なビッグデータから、ITの力を借りて潜在顧客となるようなクラスターを発見し、さらに意味のあるセグメントを見出していかなければなりません。そのためには、クラスターの発見につながりそうな有効なデータを見つけられるかどうかが、成功の鍵になってきます。

では、そのデータはどこから集められるのか。それをまとめたのが下図「あるべき姿の全体像」です。円形で作られたもの1つ1つがシステムになっています。まだ説明していない用語について補足しておきます。

GA(Google Analytics)はWebサイトのアクセス解析ツールであり、システムのこと。最近では後継バージョンであるGA4へ移行するお客様が増えました。

MA(Marketing Automation)はマーケティング活動を自動化して、見込み顧客を育成する仕組み、そしてシステムのこと。

CMS(Contents Management System)はWebサイトのコンテンツに関連するテキストや画像、レイアウト情報などを一元管理・保存するシステムのこと。

DAM(Digital Asset Management)は静止画、動画、音声などのデジタル素材を一元管理・保存するシステムのこと。

PIM(Product Information Management)は商品のマスタ情報に加え、商品画像やスペック情報など商品全般に関する情報を一元管理・保存するシステムのこと。

ここには、全部で9つほどのシステムを明記していますが、ほとんどの会社では、すでに約半分のシステムを保有していると思いますので、残り半分を新たに導入するか、強化する必要があります。

既存の顧客情報を「使える」ようにすることが「最大の難関」である

理想的なCRMS環境を構築するためには、いくつかのハードルがあります。そのなかで最大の難関は、既存の顧客情報を「使える状態」にすることです。どのような仕組みをつくるときでも、データの整備が非常に盲点になります。なぜなら、口でいうほど簡単な作業ではないからです。

既存の情報は、ある目的のために集められたものであり、それを他の目的に活用しようとしたときに、必ずしもそのフォーマットに合うとは限りません。各システムに分散している既存の顧客情報は、そのままでは連携できなかったり、同一の顧客情報として認識できない形式でストックされていたりします。

新しい目的に適合するためには、場合によってはデータをコンバートする必要があるかもしれません。また整備の過程においては、データ収集の方法や、顧客情報の解析に利用するためのデータ不足などで、さまざまな問題が起こりうる可能性もあります。

それでも、「企業にとっての顧客は誰なのかを見極め、購買行動に繋がる関係性を築くこと」ができるCRMを企業にとっての必須と考えるなら、企業は最大限のリソースを投下して、顧客情報を使える状態に整備する覚悟が求められます。

これをやらなければ、自分たちの会社が潰れてしまう。それぐらいの意気込みでやってもらわなければうまくいきません。私たちも、効率的な集め方になるヒントを提供したり、集めてきたデータのコンバート方法などを共有したりするお手伝いはできます。しかし、顧客情報を整備していく主たる役割を担うのは、私たちコンサルタントでもITベンダーでもなく、企業のみなさんです。なぜなら、私たちが見ても、生のデータ情報は取捨選択できないからです。ぜひこのことを念頭に置いて、取り組んでいただけたらと思います。

イチからCRMSの導入を考える4つのステップ

最後に、すぐにアクションを起こせるように、CRMS(ソリューション)の基本的な導入手順をまとめました。

(1)自社には、どんな顧客情報(システム)があるのか、確認する

例えば、10年前に導入したCRM、SFAがまだ稼働していればしめたものです。すでにSalesforceなどのCloudサービスを導入している場合は、CRMSの早期実現の可能性が非常に高くなります。ぜひ、社内システムを確認してみてください。

(2)自社にデータ取得可能な顧客接点の有無を確認する

次に、顧客の行動情報が収集できるシステムの有無を確認します。企業のWebサイトが中心になりますが、その他には自社のECサイトやオウンドメディアなどが考えられます。なかでもPOS、ポイントシステム、カード決済情報と連動する販売管理システム、サポートセンターのDB(データベース)があれば、個人/企業単位の顧客の購買傾向などの購買情報が詳細に把握できるので、CRMSの実現に更に近づきます。

(3)自分が上司にCRMS構築を上申しても受け入れてもらえるかを考える

例えば、理想的なCRMSを構築することによって自社の年商を数%アップできるという仮説が立てられたら、はたして上司や経営層は興味を持ってくれるかどうかを考えてみることです。まだCRMSがなくてもやっていけるのは、顧客をそこまで細かく分析しなくても、従来の多品種少量生産で事業が成り立っているからかもしれません。しかし、それで10年後も継続的に売上を伸ばしていくことができるのか。同じ危機感のある人材をどれだけ増やしていけるかが重要になってきます。

(4)実績のあるデジタルコミュニケーション支援を得意とするコンサルファームに問合せてみる

上記の(1)~(3)に可能性があり、CRMSのような複雑な仕組みの導入を上申するのであれば、自分だけで全てやろうと考えないことです。小さな予算を捻出して、自社の状況を一緒に調査し中長期の戦略を考えてくれるパートナーを見つけるのが実現への近道になります。私たちITコンサルタントの仕事の半分は、企業の経営層などを説得するための調査や資料づくりです。周りからの賛同を得られないときでもサポートできる体制は整えています。

集客のためのデジタルコミュニケーション設計やGA4導入支援サービスなどもあり

イントリックスでは、私のようなITコンサルタント以外にも、さまざまなプロフェッショナルが在籍し、いろんなサービスを提供しています。

最初にCRMSの構築はハードルが高いかもしれませんが、自社サイトをお持ちの企業であれば、集客のための各種クリエイティブ制作やデジタルでのコミュニケーションの設計などの支援や、GA4導入支援サービスといった「すぐできるデジタルマーケティング」からサポートも可能です。

お気軽に声をかけていただければと思います。

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