製品情報活用を考える上で意識すべきこと
製品情報を活用するためにPIM構築プロジェクトで意識すべきポイントは何か?
筆者は下記の3つのポイントが重要と考えている。
- どの工程、どの範囲の製品情報を対象とするか?
- 欲しい製品情報が「使える状態」でデータ化できているか?
- 「データを活かす層」と「データを貯める層」で考えているか?
1点目は、取り扱う製品情報の対象範囲だ。
製品情報と言っても「設計」「製造」「販促」「サポート」など企業活動の工程によって必要なデータは異なる。また、どの工程までを対象とするかによって関係部門の数も変わる。
これがプロジェクトの期間、コスト、難易度にも大きく影響してくる。
近年の傾向としては、「販促」「サポート」の工程にフォーカスしたいわゆる“販促PIM”が増えているが、投資対効果を高める上でもフォーカスする工程は絞るべきだ。
工程を絞り込むことは、PIM構築における社内の関係部門を絞ることにもつながる。
利害関係者が多くなると、「あのデータもこのデータも加えてほしい」という状況に陥りやすく、本来であれば重要度の低いデータ整備コストや社内調整工数を生むことになる。
こういった観点からも、対象とする工程の絞り込みは重要となる。
どの工程までを対象とするのかが決まったら、次に考慮すべきは取り扱う製品情報の種類だ。
カタログ、Webサイトなど利用目的や媒体、ターゲットユーザーに応じて必要となる製品情報は異なる。
初期段階では利用目的・用途を明確にし、必要な製品情報を棚卸しした上で優先順位を明確にしておく。
対象範囲が決まったら、2点目に考慮すべきは「利用したい情報のデータ整備状況」だ。
必要な製品情報のデータをどの部門が、どのようなルールでデータ化し、どのように管理しているのか、を調査して社内のデータ整備状況の現在地を明らかにしていく。
PIM構築プロジェクトでは、初期段階でこのプロセスを入れることが肝となる。
ある調査レポートではBtoB製造業の内、約8割の企業が「利用したい情報はあるが、すぐに使える状態になっていない」との結果が出ているが、筆者の感覚もこれに近しい。
データ化はされていても「部門単位」だったり、「ルールが統一されていない」状態だったり、「一部はデータ化されているが、一部はアナログ」だったりと、製品情報を全社・グローバルで活用するために必要となるデータマネジメントの考え方に沿ったデータ化が多くの企業でなされていない。
また、「ルールに沿ってデータ化する」ことは、これまでデータ整備をきちんとしてこなかった企業にとっては想像以上の負担となる。
筆者が過去に支援したある機械部品メーカーでは必要なデータの内、すぐに使えるデータは1割で、必要なデータをすべてデータ化するコストを含めると、初期投資額が想定をはるかに超えることが調査・計画フェーズで判明したため、プロジェクトの実施を見送った(表1)。
表1:ある機械部品メーカーのデータ整備状況の例
データの状態 |
データ整備レベル |
割合(%) |
すぐに利用可 |
CSV/TSVまたはXMLファイルでデータベースに投入可能 |
7% |
加工・登録する仕組みや工数必要 |
整理はされているが1形番1ファイルになっている |
55% |
電子化されているが自動登録するにはプログラム開発が必要 |
27% |
電子化されているが散在しているため手動投入となる |
11% |
また、ある大手複合機メーカーではデータ投入を自社で行うという判断をしたものの、データ投入作業のピーク時には100人近くの人員を要したとの話もあった。
このように、データ活用の目的は明確であっても、肝心のデータが用意できないという事態に陥らぬ様、自社のデータ整備状況と欲しいデータとのギャップを事前検証しておく事前検証プロセス(PoC)が重要となってくる。
3点目は、データ活用を考える上でデータには「データを活かす層」と「データを貯める層」の2つの層があり、それぞれの層での検討がプロジェクトを成功させる上で非常に重要ということだ(図1)。