BtoBマーケティングコラム BtoB企業の戦略的な製品情報利活用に必要なステップとは

2024年2月16日

最近では、数多くのBtoB企業がデジタルを活用したマーケティングや情報発信を行うようになってきた。その一方で、製品情報のデータが整備されずに、国内の市場変化への対応や、スピーディなグローバルへのソリューション展開が行えないなどの課題を抱えている企業が少なくない。いかにして製品情報データを戦略的に活用する準備を進めていけばいいのか。見落としがちなフェーズや難所はどこなのか。データ整備を行う手順や注意点などを、イントリックスのプロジェクトマネージャーの千代 康彦とインフォメーション アーキテクトの吉川 奈美に聞いた。

著者プロフィール

千代 康彦(ちよ やすひこ)
プロジェクトマネージャー/シニアコンサルタント

大手システムインテグレーターを経て入社。
大規模サイト構築PM、システムグランドデザイン策定、グローバルサイト群戦略立案など、デジタル領域に関する幅広いキャリアを重ねる。
ビッグデータ解析用BI導入、基幹業務システム開発におけるマネジメントから実装、仮想通貨決済サービスの構築などシステム面で幅広い経験を有し、大手精密機器メーカーのグローバルサイト群の調査及び戦略立案、大手精密機器メーカーの事業部サイト構築など、ビジネス、サイト制作、システム構築など幅広い分野の経験を持つ。
2017年5月にイントリックスに参画。プロジェクトマネージャー兼コンサルタントとして、大手精密機器メーカーの新事業部サイト構築、グローバルレベルのサイト群活用戦略策定、大手照明機器メーカー、大手製薬会社、大手音響機器メーカーなどの業務基幹システムを含めた全体調査、システム企画・実行推進を手がける。数億規模のデジタルマーケティングプラットフォーム構築におけるプロジェクトマネージャー経験をもつ。

    ■ 過去主要プロジェクト
  • 大手電機メーカー :会員向け情報検索サイトリニューアル(EM/PM)
  • ミツトヨ:会員向けサービス&会員向けマイページ戦略策定(EM/PM)
  • ミツトヨ:デジタルマーケティングプラットフォーム構築(EM/PM)
  • 大手光学機器メーカー:グローバルサイト群調査・戦略策定(PM兼リードアナリスト)
  • 大手音響機器メーカー:全社システム全体像整理(PM兼コンサルタント)
  • 大手素材メーカー:製品検索ページ構築(PM)
  • 大手光学機器メーカー:事業部デジタル活用戦略立案(PM兼コンサルタント)
  • 大手光学機器メーカー(ヘルスケア):新事業部サイト構築(PM兼コンサルタント)
  • 大手製薬メーカー:サイトリニューアルシステム企画・要件定義(コンサルタント)
  • 大手給湯器メーカー:ポータルサイト戦略立案・RFP作成支援(コンサルタント)
  • 大手照明機器メーカー:サイトリニューアルシステム企画提案・要件定義(コンサルタント)

著者プロフィール

吉川 奈美(よしかわ なみ)
インフォメーションアーキテクト

印刷会社のWeb制作部門のディレクターとしてキャリアスタート。主に大手電気機器メーカーのBtoB商材の大規模製品検索サイトのWebディレクターとしてキャリアを重ねる。
2013年にイントリックスに入社。イントリックスではWebディレクターから顧客体験設計、Webサイトやシステムの情報設計のスペシャリストにジョブチェンジ。
情報設計のスペシャリストであるインフォメーションアーキテクト(IA)として、顧客のビジネスへの深い理解を基盤とし、 UX、デジタルマーケティング、コンテンツの各方面に考慮した情報設計を強みとする。自らの専門領域のみならず、プロジェクトマネージャーやWebディレクターの経験から得たプロジェクト全体を俯瞰した視点からの提案を特長としている。
日本国内向けサイトだけでなく、グローバル、海外サイトも含めたサイト群のUX設計、情報設計を数多く手掛けている。

    ■過去主要プロジェクト(個人)
  • 大手建設機械メーカー:日本サイトリニューアル(統括Webディレクター/IA)
  • 大手電気機器メーカー:日本サイトリニューアル(IA)
  • 大手総合商社:グローバル、日本、海外サイトリニューアル(IA)
  • 大手製薬メーカー:日本サイトリニューアルの戦略立案(コンサルタント)
  • 大手農業機械メーカー:海外販社サイト(統括Webディレクター/IA)
  • 大手農業機械メーカー:グローバルサイト、日本サイトリニューアル(IA)
  • 富士古河E&C株式会社:グローバルサイトリニューアル(IA)
  • 日立ビルシステム:日本サイトリニューアルのための情報設計~デザイン(IA)
  • 大手精密機器メーカー:日本サイト・グローバルサイトリニューアル(統括Webディレクター/IA)
  • 大手通信会社:海外販社サイト群リニューアル マスターサイト構築(IA)
  • 大手精密機器メーカー:事業部横断製品データベース構築・活用に向けたデータベース項目検討(IA)

潜在ユーザの購買促進や運用の効率化、そして海外との迅速な連携が可能に

Q :BtoB企業にとって、製品情報データの整理がなぜ必要なのでしょうか?

千代:
コロナ禍を経て大手・中小関係なく、BtoB企業ではWebサイトを活用するのが当たり前になってきました。自社が保有している製品や製品を組み合わせたソリューションを市場に訴求して、そこから新たな問合せを獲得し、売上につなげていくことが不可欠になってきています。そこには、ターゲットとなる法人企業に対して、魅力的な製品情報を伝えるだけでなく、分かりやすい分類や高精度の検索を提供して、情報を正しく伝えることも含まれます。

なぜなら、自社の製品に興味を持つ潜在ユーザ(法人企業)に対して製品を比較・検討できるようにデータを整備することで、売上への貢献度(購買促進)を高められるからです。もちろん、ほとんどのBtoB企業の担当者はそういった認識をお持ちだと思います。ただ、多角的に事業を展開されている企業では、製品情報の管理が縦割りの組織になっていることが多く、そのために事業を横断したデータの蓄積が十分ではなく、事業横断的なクロスセルやアップセルが難しい状態だと思われます。

また、こうした多角化企業は、事業部ごとに製品情報データを個別メンテナンスしていることも多いため、管理方法も各自バラバラだったりします。統合してデータ管理を行うことで、コストを削減し、運用面での効率化も高められます。さらに体系的にデータ化して管理していれば、海外展開している場合などは、現地法人ともタイムリーに製品情報を連携しやすくなるので、グローバルなセールスやマーケティングにも迅速に対応でき、攻めの経営を実現できます。「ここぞ!」という、提案のチャンスを逃しません。

組織再編などにデータ整備が追いつかずに、情報データが企業視点で分類されている

Q:BtoB企業が抱えている製品の情報発信やデータ管理での課題とは何ですか?

吉川:
一番の課題は、製品情報データを企業視点で分類してしまっていることです。多事業を展開しているような比較的事業規模の大きい企業だと、たびたび起こる吸収合併や組織再編などのスピードに、製品情報のデータ整備が追いつかないケースが見られます。その結果、Webサイトを利用するお客様(エンドユーザ)から見た時に「なぜ、こんな場所にこの製品が紹介されているのか」「どうして、こんな分類になっているのか」といった製品を探しにくい状況が起こっています。

本来お客様が同じ製品であれば、同じカテゴリー(あるいは近いカテゴリー)にあるべきはずなのに、扱っている事業部が異なるなど企業側の都合によって、製品情報がまったく違うカテゴリーに未整理のまま掲載されたりします。

図1:製品情報をまったく違うカテゴリーに未整理のまま掲載している結果、ユーザーは求める情報へたどり着きづらい

また、企業によって製品情報管理に異なるシステムを使っている場合もあります。同じ企業でもA事業部はエクセル、B事業部は独自システムといったように、事業部ごとに製品管理の方法が違うのです。このように統一したシステムで製品情報データを管理していないばかりに、次期の戦略立案や新製品の開発などにデータを利活用しようと思っても、スピーディに対応できないということが起こりがちです。組織全体を俯瞰している事業部の担当者であれば、このあたりの課題は日々痛感されていることと思います。

一歩踏み込んだ、戦略的なデータ活用をできるようにする

Q:あるべき理想の「製品の情報発信」や、「データ管理」とは、どういうものですか?

千代:
データ管理を行う起点としては、将来的にデータをどのようにしてビジネスに活かしていくのか。どういうゴールに向けて活用していくのかといった中長期的(2〜3年)な目標を策定することです。
それができれば、たとえば、海外の現地法人に対してはHQ(ヘッドクォーター)である日本から製品情報をタイムリーに提供することによって、ビジネスチャンスを創出したり。国内のお客様に対してはエンゲージメントを高めるために、お客様がどういう製品やソリューションに対して関心を持っているのかをデータを使って把握したり。そういった一歩踏み込んだ、戦略的なデータ活用もできるようになってきます。

「STEP1」将来のありたい姿と、それを実現するために必要なデータを具体化すること

Q:戦略的なデータ活用をしていくためには、どのようなステップで製品の情報データを整備していけばいいのでしょうか?

千代:
具体的には、次の4つのSTEPが理想です。

  1. データを活用した、将来ありたい姿を定める
  2. 現在保持しているデータ状況を把握する
  3. 「STEP1」に必要となるデータの獲得可能な仕組みを検討する
  4. データを取得可能な仕組みをつくる

吉川:
STEP1においては、先ほど千代が概観を説明した通りですが、もう1つ補足しておきたいことがあります。それは将来的な姿を描いた上で、それを実現するためには、どういう数値(データ)を保持していかなければならないのかを、もう一段掘り下げて描く必要があることです。

将来の目標を立てているだけだと、それをどう実現していくのか具体的なプランがなく、「絵に描いた餅」で終わってしまうことになりかねません。だからこそ、必要なデータを明確にすることが求められます。

「STEP2」製品情報活用に向けたゴールと現実とのギャップを埋める作業を行う

Q:続いて「STEP2」(データ状況の把握)について教えてください。

千代:
「STEP1」では、自社としての「ありたい姿」を描いて、風呂敷を広げた段階です。そこから「STEP2」で少し実現性に落とし込んでいきます。具体的には、目指すゴールに向かう上で、必要なデータとして何があって、そのうち今手元にはどのようなデータが足りないのか。そして、そのデータは新規で取るべきなのか、もしくは既存データの組み合わせで実現できるのか。そういったことを具体的に整理していくフェーズになります。

Q:この段階ではto be(あるべき姿)と、現状とのギャップを整理していくようなイメージでしょうか?

千代:
そうですね。現状どの情報をどのように管理しているのかを棚卸ししていくイメージです。

たとえば、A事業製品は、紙カタログでしかデータを保持できていないが、B事業製品は事業部レベルでデジタル化して管理できているなど、事業部単位で異なる場合があります。

他にも、基幹システム側では製品の在庫管理などを行うため、製品に関する何らかのデータを持っていることが考えられます。基幹システム側で保有している製品情報が「STEP1」で描いた「製品情報の活用方針と照らし合わせた際に、利活用可能なものなのかどうか?」あるいは「tobeに照らし合わせて『As-Is(現状とおり)』のデータが利用可能なのかどうか?」といった確認も「STEP2」では行う必要があります。

「STEP1」で描いた製品情報の活用方針をもとに、「活用可能なデータ整備がどの程度進んでいるのか?」についても「STEP2」では精査して、棚卸しを行うことで既存の情報資産を効率的に活かすことができます。

吉川:
今の千代の話は製品情報の活用に向けた、データ整備状況におけるギャップでしたが、もう1つあるのが「製品情報」でのギャップです。私たちが取引しているBtoB企業の製品は、電子部品のように必要な仕様やサイズがほぼ決まっているため、製品情報サイトにおいても細かい項目での絞り込み検索が求められます。

それを実現するためには、正規化された製品情報(サイズ、価格など)をデータとして持っておく必要があります。しかし、製品情報が例えばサイズの縦横が分割されておらず、まとめてひとかたまりになったテキストデータだと検索データとして使えないため、ここにも実現したいこととのギャップが生まれます。それゆえ、お客様が情報データの絞り込みをできるようにするために、どこまでデータを正規化してストックしておくかはBtoB企業として検討する必要があります。

図2:「絞り込み検索」実現のためには、正規化されたデータが求められる

千代:
ほとんどの場合、100%の完璧なサイトをつくろうとすると、最短でも3年はかかってしまいます。そうなると時間も予算も圧倒的に足りません。そのため、まずは50~70%の完成度でいいので、フェーズ(段階)に分けたギャップの埋め方が重要になってきます。そこで製品サイトをお客様視点で見た時に、分かりやすい製品分類を行い、そこに至るためのドリルダウン(データ集計レベルを1つずつ掘り下げて項目を細かくする操作のこと)した階層構造をつくるのが「ファーストステップ」になってきます。

次に、お客様がただ探せるだけではなく、できる限り早くほしい製品にたどりつける仕組みづくりをつくるのが「セカンドステップ」。この2段階で進めていくのが理想だと思います。

「STEP3」必要となるデータを獲得するためにPIMなどのソリューションを検討する

Q:「STEP3」は、「STEP1に必要となるデータの獲得可能な仕組みを検討する」ということですが、具体的にどのようなことを行うのでしょうか?

千代:
「STEP1」「STEP2」は、to be(あるべき姿)を明確にして、それを実現するために、どういうデータが必要で、足りないギャップをどのように埋めていくのかというフェーズでした。これを実現するために、「STEP3」では、新たなソリューションを導入したり、散在しているデータをつなげたりといった仕組みを、いろいろと吟味する段階になります。

ここでは、製品情報データとしてまだ体系化できていない点が1つの起点になってきます。たとえば、エンドユーザ(お客様)の行動情報を知るために、製品情報を整備することに取り組み始めようとした時に、その製品情報がまだ準備できていない場合には、その情報を管理するための、PIM(Product Information Management/商品情報管理)といわれるデータを一元管理できるソリューションを新たに導入することも、このフェーズでは模索する必要があります。

「STEP4」エンドユーザの行動を把握して、ニーズに合致した製品データの情報発信ができる体制づくりを

Q:「STEP4」(取得可能な仕組みづくり)についてはいかがでしょうか?

千代:
「STEP3」で検討したPIMなどのソリューションの仕組みを構築し、活用できるように整備していくのが、「STEP4」でやるべき内容です。あとは製品情報をデータ管理して終わりではなく、エンドユーザである法人企業の興味関心を促すために、エンドユーザの行動を把握できるような基盤づくりを行うこと。さらに行動把握ができた後には、エンドユーザのニーズに合致した情報を定期的に発信できるような体制づくりが大事になってきます。

なお、PIMを活用すれば、事業単位ごとにバラバラだった情報管理を一元化できるので、Webサイトや紙カタログなどのツールでの活用先が広がります。さらに海外の現地子会社や販売代理店などへの関係各社への製品データのスピーディな共有が可能になります。そして製品群の全体像が把握できるため、事業再編やM&Aなどによる組織再編などにも迅速に情報整理が行えます。

多くの場合、PIMを利用しますが、代替ソリューションとして、DAM(Digital Asset Management)を活用する企業もあります。管理する情報データをどう捉えるかによって、PIMを使うか、DAMを使うかが違ってきます。製品情報に特化した管理を行い、さまざまな用途にソリューション活用していくなら、PIMが適しています。

一方、製品に付帯する各種データ・画像等の利用期間など著作権関連が絡んできたり、更新頻度の高い情報を管理する場合は、DAMの方が細かい管理がしやすいため、ECサイトやモデルの画像を扱うことが多い企業は、DAMを利用する場合があります。

データ管理と、エンドユーザへの製品表示では、粒度が異なることに注意する

Q:製品情報のデータ整理を進める上で、注意すべき点は何かありますか?

千代:
大きく分けると、次の5つが注意点として考えられます。

  • データ管理(裏側)と表示(フロント側)での粒度の違い
  • 製品データベースへの登録対象(OEMなど)について
  • 完成品と付属品のデータ管理の粒度について
  • 異なる用途を持つ同一製品のデータ管理
  • データ登録の仕組み(管理画面UI)について

吉川:
まず、私からは「データ管理(裏側)と表現(フロント側)の粒度の違い」について解説したいと思います。裏側とは、PIMを活用した管理者視点の製品情報データのことで、フロント側とは、Webサイトでお客様が見る製品情報データを指しています。この2つで情報データの粒度が異なります。

(裏側の)データは、SKU(Stock Keeping Unit)と言われる在庫管理を行う時の最小管理の単位で保有します。たとえば、同じネジでも10個入りなのか100個入りなのかによって製品の管理番号が異なります。ネジ1本1本は同じスペックで変わらないはずなのに、それが10個入りなのか、100個入りなのかによって、管理上は全く別製品として扱われます。

その管理単位のまま、Webサイト上で、お客様向けに表示させてしまうと、同じスペックの製品が膨大に表示されてしまい、お客様が求めている製品になかなかたどり着けないことが起きてしまいます。そこでフロント側では、お客様が検索した際に製品のシリーズ単位で一旦表示され、その中で、ほしい数量(10個入りや100個入りなど)を、ドリルダウンで探せる仕組みにするような工夫が必要になる場合があります。つまり、必ずしも裏側と表側ではデータの粒度が同じではないということです。

通常PIMの管理対象外のOEMを企業としてどう扱うのか

Q:製品データベースへの登録対象(OEMなど)における注意点とは、どういうことでしょうか?

千代:
おもに自社で製造した他社製品(OEM)についてです。自社の製品データベース(DB)において、OEMは活用先として、それほど多くないので、PIMの管理対象にしていない企業がよく見受けられます。その場合は、Webサイトの階層上には組み込むものの、データの管理先が異なることが多いです。

もちろん類似品として、企業が積極的に営業したい場合やOEM製品の量が多く、重要度が高い場合は、初期段階のデータ構造からイレギュラーな設計を考えておく必要があります。

付属品をどこまで管理するかは、検討すべきポイントになってくる

Q:完成品と付属品のデータ管理の粒度について教えてください。

吉川:
「完成品」というのは、それだけで既に製品として成り立っていて、お客様(エンドユーザ)が購入した際には、そのまま使えるような製品のこと。大きいものだと、建築現場で使うような重機や、田畑や農場で使うようなトラクターなどがあります。それから、金属を加工するような工作機械や、バイオ医療などに使う医療機器もこれに当てはまります。

「付属品」というのは、その完成品に何か機能を付与して使うことができる製品のこと。たとえば、トラクターでいえばアタッチメントがそれに当たります。田植えに使う「植付け機」や、肥料をまく「ブロードキャスター」と呼ばれるものから、畑を耕す「ロータリ」や「プラウ」と言われる器具に至るまで、さまざまです。

「完成品」と「付属品」。この2つの製品を同じ粒度で管理するかどうかというのが1つの検討ポイントになってきます。というのも、「付属品」を「完成品」と同様に管理すると、製品の数が膨大になって、管理業務が増えてしまうからです。そこで、「付属品」については必要最低限の製品情報データだけに絞り、管理業務を軽減するやり方もできます。どこまで「付属品」の管理に力を入れるかどうかは、製品情報を整理する上でのポイントの一つです。

千代:
「付属品」はお客様(エンドユーザ)に見えるフロント側において、完成品に比べて機能や特性、仕様などの情報も限られており、そこまで訴求する必要がなかったりします。スペックに近い情報だけを提供できれば事足りてしまうわけです。「完成品」と「付属品」では、そういう表現面での粒度の違いもあります。

同一製品でも用途別に型番を分けて、別の製品として持つのが最適

Q:異なる用途を持つ同一製品のデータ管理はどうすべきでしょうか?

吉川:
同一製品なのに、全く異なる業界で売れる場合があります。そうなると、業界ごとに全く違う活用をされるので、訴求するキャッチコピーも変わってきますし、使用シーンの写真も違うものになります。
この場合、どのようにデータ管理をするか。大きく2つの方法が考えられます。1つは、その製品の型番を用途に分けて、違う製品として登録する方法。もう1つは製品に対して、キャッチコピーなどの情報を2種類登録して分ける方法です。さまざまな観点から考えて、どういった管理方法を行っていくのが適切なのかは、注意点として考慮すべき項目になります。

たとえば、「高性能顕微鏡」を例に説明します。「高性能顕微鏡」には、工業製品の品質チェックに使われる「産業用」と、極小の分子を観測するのに用いられるバイオ領域の「医療(研究)用」があります。前者では、例えば金属の表面がどれだけ滑らかなのかを検査しますし、後者では、細胞分子の挙動を解明するのに用いられます。業界はもちろん活用方法も違ってきますので、こうした場合は活用方法ごとに型番を変えて、別のデータとして持つのが管理として適していると考えられます。

多言語対応や価格改定などを一括登録できるUIや機能を備えておく

Q:最後の注意ポイント、データ登録の仕組み(管理画面UI)について、教えてください。

千代:
データ登録における管理画面UIについても課題になる点です。特に注意すべきは海外に向けての情報発信においてです。

多くの企業は日本(本社)の運用担当者が多言語対応も含めて登録すると思います。その際、1つの管理画面上で、日本語、英語、スペイン語、中国語などの多言語を書けるようにするのが、UIデザインとして押さえるべき点です。なぜなら、多言語を入力するたびに、わざわざ次の階層に移って作業していたのでは、簡単な入力作業であっても、煩雑な業務が増えてしまうからです。まず多言語対応の運用者が誰なのか。その人が統合的にデータを登録するのであれば、それに合わせた使いやすいUI設計を考える必要があります。

あとは運用のことを考えると、メーカーは6カ月〜1年ごとに価格改定や新製品の開発を行います。そのためBtoBの製品サイトでは、価格情報を掲載していないケースも多かったりします。しかし、価格を入力する場合に備えて考えると、商品改定があるたびに管理画面で1アイテムずつ更新するのは現実的ではありません。ですから、データ更新のタイミングやボリューム(量)に合わせて一括登録できるような仕組みをつくっておくことも大事なポイントになってきます。

「攻めの経営」につながる製品情報データを活用したデジタルマーケティング運用が次なる展開

Q:BtoB企業における「製品情報データ整理」は今後どのようになっていきそうですか?

吉川:
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、BtoB企業のデジタルマーケティングへの意識は非常に高まってきたと思います。そして今は製品情報データベースを構築して、必要な時にスピーディに取り出せるデータの管理体制を整備しているところです。今後プラットフォームとして整えられるようになれば、次はそれら製品情報データをどう有効に活用していくのか。そこに課題感を抱いて取り組む企業が増えてくると思います。実際、当社にもそういった相談が増えています。イントリックスとしても、2023年8月より本格的にデジタルマーケティング部という部署を立ち上げ、多くの企業の運用支援を行っている真っ最中です。

千代:
たとえば、製品情報サイトからエンドユーザがどういう製品情報データをダウンロードしているのかを可視化できるツールを提供し、その解析結果をもとに、打ち手を講じ、リード獲得などにつなげています。

「攻めの経営」となるデジタルマーケティングの運用を含めた製品情報のデータ活用が、次なるBtoB企業が取り組むべき展開になってくるでしょう。われわれイントリックスもBtoB企業に寄り添い、製品情報データベースの設計・構築〜マーケティング運用まで、一気通貫で支援できる体制を今後さらに充実させていこうと考えています。

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