体験的システムコンサルタント論
~システムエンジニアとの3つの違い~
システムエンジニア(SE)からイントリックスのシステムコンサルタント(SC)になって約1年。システムコンサルタントとシステムエンジニア、それぞれの肩書には同じ「システム」がつきますが、その仕事の中身や考え方には、いろいろ違いがあると感じている日々です。そこで、そんな違いにフォーカスし、これまでの体験を踏まえつつ、イントリックスのシステムコンサルタントの仕事をご紹介したいと思います。
違い1:業務の内容が違う
- SE:システムの要件定義、設計、開発、導入
- SC:Web活用にむけたシステム全体構想と具現化の推進
SE時代は、システムアーキテクト、インフラエンジニア、アプリケーションエンジニアなど各システム領域に特化したメンバーでチームを組みつつ、あくまでもシステムという範囲の中で仕事をしてきました。それに対しイントリックスでは、システム以外の様々な領域のメンバーと協力しつつ、クライアントのWeb活用におけるシステムのあるべき姿を構想し、具現化までを推進するのがシステムコンサルタントの仕事です。
仕様を満たし、効率化されたシステムを構築する事がSEとしては求められましたが、SCでは、ビジネス要求を踏まえてシステムの全体像を構想し、それらを満たすインフラや各ミドルウェアの要求事項などの整理、提案先クライアントの運用負荷も考慮した上でソリューション提案をするなど、検討する範囲は多岐にわたります。
業務の内容に加え、クライアントのカウンターパートも異なります。SEであれば、要件定義の段階で、クライアントのIT部門がカウンターパートであることが多く、IT用語などもすんなり理解いただけたのですが、イントリックスでは、広報部門や事業企画部門の部課長級とのコミュニケーションが求められます。
ITに普段接していない方に向けて、Web活用におけるシステムの役割やその全体像をいかに伝えるか。内容の正しさはもちろんですが、ドキュメントの文言や話しぶりなどのコミュニケーションも、毎度考えさせられます。
また、プロジェクトメンバーに対するコミュニケーションも同様です。例えばWebサイトのリニューアルでは、以下の役割をもったメンバーと協力してプロジェクトを進めていきます。
- プランナー:(コンテンツを企画するひと)
- IA:インフォメーションアーキテクト(最適な情報構造を定義するひと)
- AD:アートディレクター(デザインコンセプト・デザインを定義するひと)
- TD:テクニカルディレクター(実装要件を定義するひと)
- FEE:フロントエンドエンジニア(WEBページなどを実装するひと)
当然、これらのメンバーにシステムバックグラウンドがあるとは限りません。クライアントはもちろんですが、メンバーに対し構想しているシステムについてきちんと共有し、理解してもらわなければクライアントのビジネスに役立つWebサイトを作ることはできません。
SCには、システム領域の専門家としてのスキル・知識だけでなく、相手に応じてシステムの事を分かりやすく伝え、リードしていくスキルが強く求められます。
違い2: 視点や抽象度が違う
- SE:ある程度定まった「要求事項」を「要件」に落としこむ
- SC:何も決まっていない状態から、「要求事項」を具体化する
SE時代は、すでにクライアントのビジネス課題が存在し、それを解決するために構築するシステムへの「要求事項」がある程度整理、具体化されていることを前提に、その「要件」を定義するところから、または定義された要件を具体化するところからプロジェクトがスタートしていました。
したがって、クライアントの要求事項に対し、システム設計・開発者の観点から、
- どの範囲を
- どういったレベル感で
- どのように構築するのか
を定義し、システム構成や各業務を実現する機能を設計に落とし込むという流れで進みます。そこでは、あくまでも自分の担当業務内、且つシステム目線での関わり方での仕事の進め方でした。
ところがイントリックスでは、クライアント自身も実現したいことがはっきりしていないため、情報が全く整理されていない曖昧な状態からプロジェクトが始まることがほとんどです。
そこで、クライアント及び競合他社とのWebサイトの比較や、アクセス解析などを通じたクライアントWebサイトへの理解、また、ヒアリングなどを通じたビジネスモデルの理解などを踏まえ、こちらから課題を定義し、提示しなければなりません。
また、課題について共有したのち、今度は改善の方向性として、Webサイトを通して、
どのように構築するのか
- 誰に対し(ターゲットユーザー)
- 何をどういった表現で伝え(コンテンツの内容や形式)
- 何を実現するのか(ゴール)
などのWeb活用のあるべき姿を、クライアントと議論し具体化する必要があります。
SCは、これらの課題やあるべき姿の具体化に、システム視点でコミットすることはもちろん、そのあるべき姿を実現し、かつそれが継続的に運用されるよう、システム面の構想を立てます。
例えば、
- 運用体制やフローについて、クライアントの企業規模や社内体制を加味した場合、どうあるべきか
- コンテンツの拡張を含むWeb活用の3年先を見据えた場合、継続的・効率的な運用を助けるために最良のシステムは何か
- コンテンツの更新頻度から、システムを導入し更新すべき適切な範囲はどこまでか
など、クライアントのビジネス全体の俯瞰視点に加え、社内体制や、Webの運用者目線など、様々な目線で考えなければなりません。
やはり、「要求事項」が具体化されていたSE時代とは、同じ「システム」と言っても、それに対する視点、考え方は大きく異なると感じています。
違い3:身につく知識やスキルが違う
- SE:システム設計・構築力および専門知識
- SC:ビジネス視点を踏まえたシステム構想力と部課長級との信頼関係構築力
SEの仕事を通じて身につくスキルや知識は、やはり、個々のシステム領域・業務領域に関する専門知識でしょう。私自身は基幹系システム構築、情報系システム構築、仮想通貨関連サービス構築など、どちらかというと何でも屋でしたが、SEの世界は、業界や専門業務領域に応じて様々に細分化されています。それらを突き詰めていくことで、その分野の専門家を目指せることは間違いありません。
一方SCは、確かにシステムやプログラムの知識を身につけることができますが、特定領域の技術力やプログラミングの習熟度では、長年培ってきたSEには敵わない部分があります。その代り、SCとして身につく知識やスキルとして最も大きいと感じているのは、以下2点です
- ビジネスを俯瞰した、中長期視点での運用・システム構想力
- 文系出身の部課長級に対し、システムを分かり易く伝えるコミュニケーション力
SCは広報部門や事業企画部門の部課長級とのコミュニケーションが求められます。文系出身の部課長級と信頼関係を構築する上では、相手の関心事に合わせた説明の切り口や言葉を用い、より刺さる伝え方に変える必要があります。
部長級であれば導入するシステムの費用対効果やセキュリティレベルが同業他社と比較した場合適切な費用・レベルとなっているのか?という点を気にされますし、担当レベルであれば自身の業務負荷をどの程度軽減してくれるのか?といった点を気にされます。
伝える相手の関心事やITリテラシーに合わせて、説明の切り口や分かりやすい表現を用いて伝えるなど、高いコミュニケーション力が身に付きます。
また、クライアントのビジネスを常に意識することで、ビジネス視点を踏まえたシステム構想力を身に付けられるのも大きいと思います。イントリックスのクライアントは、BtoBという括りこそありますが、メーカーや商社、代理店など、ビジネスモデルは様々で、当然Web活用の方向性も異なるため、常に刺激を感じています。自分の構想したシステムが、クライアントのビジネス貢献につながると実感することは、モチベーションの維持にもつながっていますね。
終わりに
私自身、イントリックスのシステムコンサルタントとしてまだ1年足らず、いろいろ学びつつ、自分の成長を実感している日々です。じっくり腰を落ち着けて専門知識を掘り下げたいという人は、SEの方が向いているかもしれません。一方で、システムの知識やバックグラウンドを活かして、もっと広い視野でクライアントのビジネスに貢献したい方には、システムコンサルタントという道があります。イントリックスでは、システムコンサルタントを随時募集しています。興味本位でも結構なので、ぜひ一度、イントリックスを訪ねてみてください!
http://www.intrix.co.jp/recruitment/