もちろん、社員の利便性がとか、オリンピック開催期間中は品川駅からのシャトルバスがなくなるとか、現実に起きるさまざまな問題も指摘しつつ、既にテレワーク導入に成功していた他社の事例を研究したりして、経営管理部の週次ミーティングで提案をしたところ。
却下。
主な理由は「社員の働き方を管理できなくなるから」。これは「テレワーク導入あるある」「バックオフィスあるある」ですよね。テレワークそのものが比較的浸透した今でも、これを理由に導入を見送る企業も多いかと思います。
しかし今振り返ってみると、「社員が時間通りに出勤して、きちんと働いているかどうか、その姿を見て確認する」とか、「誰がどんな状態なのか何となく空気を感じて、通りすがりに雑コミュニケーションをする」とか、そういうリアルで行っていたことをそのままデジタルに置き換えようとしていたんですよね。
でも、本当はテレワークにはテレワークならではのやり方が必要で、最適解は異なるはずです。だから置き換えるだけではうまくいくはずがないんです。
特に2019年以前は、日本全体がまだそのような考え方をしていた時代だったと思います。提案を却下された私は、「テレワーク導入は正直難しそうだな。さてどうしたものか……」という心境でした。私にとって、入社して初めての大きな挫折だったかもしれません。
迫られるコロナ禍での制度改革
しかしテレワーク導入提案からわずかひと月後に、皆さまご存じの通り、世界は否応なしに変革を迫られることとなります。
2019年12月 中国湖北省武漢市での原因不明の肺炎が発生
2020年1月 肺炎の原因は新型コロナウイルスであると判明、その後日本国内第1例目となる感染者が確認
2020年2月 日本国内において多数のクラスターが発生
あの挫折からたった3カ月で一気に世界のすべてが変わってしまいました。
「今度こそバックオフィスの出番じゃああああ!」
もはやテレワーク導入待ったなしの状況で、イントリックスは迅速に対応します。2020年2月25日に、全社員にテレワークを適用したのです(当時はまだプロジェクトマネージャーの承認が必要かつ4月末までという制限はついていましたが)。
正直、制度やシステムを新たに整備している時間の余裕はまったくありませんでした。しかし、社内情シス担当者が、クラウドストレージや勤怠システム、コミュニケーションツール等々を、コロナ禍突入のはるか前に導入してくれていたのが奏功しました。
また、同じ経営管理部のメンバーがオフィスに届く郵便物を回収してくれることになったおかげで、オフィスに誰もいなくても何とか業務が回ることも分かりました。制度面は整っていないものの、環境面だけで見れば既にテレワークは実現できる状況だったのです。
となれば、社員の健康と安全を守るための決断がなされるのは当然の帰結! これぞバックオフィスの仕事の醍醐味! ということで、あっさりテレワーク実現!
世界はさらに変化を続けます。
2020年3月 WHOが新型コロナウイルスをパンデミック(世界的大流行)とみなす
2020年3月末 東京オリンピックの1年延期が決定
2020年4月 緊急事態宣言発令
ここにきて、イントリックス社内は「テレワークは新型コロナウイルス感染回避のための一時的な手段ではないよね?」という空気になってきました。そうなると、テレワークを恒久的な制度とするためにさまざまな決めごとをつくっていくことになります。