BtoBマーケティングコラム DX認定事業者とは?認定制度や事業者を選ぶポイント、DX推進ポータルの活用についても解説

2022年12月20日

DX認定制度とDX認定業者

経済産業省と情報処理推進機構(以下、IPA)は、企業のDX推進を加速させることを目的としてDX認定制度を設けました。一定の条件をクリアした事業者は「DX認定事業者」として経済産業省から認定を受けられます。制度の概要やメリットをご紹介します。

DX認定制度とは

DX認定制度とは、DXを推進する準備が整っている状態の企業を国が認定する制度です。

IPAが認定の事務局として機能し、認定は経済産業省が行う仕組みになっています。制度の背景には、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」があります。

日本企業の多くが既存システムの維持に多額の資金を費やしており、変革に向けた投資をできていない状況が続いています。これが改善されないままでいる場合、2025年以降に最大約12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算されています(「2025年の崖」と言われています)。

DX認定制度の狙いはこれを防ぐこと、また認定プロセスを通じて企業のDX体制が整っていくことにあります。デジタルガバナンス・コードに掲げられた基準を満たしていくことによって、企業の考え方や体制が刷新されていくことを想定しています。

参考:「デジタルガバナンス・コード2.0

DX認定事業者とは

DX認定事業者とは、経済産業省が公表している「デジタルガバナンス・コード」の基本事項に対応し、認定を得ている事業者のことを指します。

経済産業省は事業者のDXレベルを4段階に分け、そのうち「DX-Ready」レベルにある事業者をDX認定事業者として認定する制度を設けました。レベルは上から、DX-Excellent・DX-Emerging・DX-Ready・DX-Ready以前となっています。

引用:経済産業省情報技術利用促進課独立行政法人情報処理推進機構「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)第2版」p12

このうち、DX-Readyの状態は次のように説明されています。

”ビジョンの策定や、戦略・体制の整備等を既に行い、ステークホルダーとの対話を通じて、デジタル変革を進め、デジタルガバナンスを向上していく準備が整っている事業者。”

つまりデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織の在り方に変革を起こした事業者ではなく「DXを推進していく準備が整っている」というレベルにあるのがDX認定事業者です。

事業者の形態は個人・法人・公益法人など全ての事業者が対象となっています。

DX認定業者のメリット

DX認定を受ける最大のメリットは、認定そのものよりも、認定プロセスを通じて自社のDX推進の準備が整っていくことにあります。デジタルガバナンス・コードにある指標と自社の状況とを比較して、DX推進を実現するためになにをすべきなのかが徐々に見えてきます。

「デジタル技術の活用に強い会社」という認知を得たい会社はもちろんですが、DXを推進していきたいと考える企業にとってもDX認定を受けるプロセスは価値があるといえるでしょう。

その他のメリットとしては、認定ロゴの使用許可、IPAの運営する「DX推進ポータル」への掲載、「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」の優遇措置を受けられるなどが挙げられます。

自社の名刺やWebサイトにロゴを掲載してDX推進をアピールできる、DX推進の相談相手として見てもらえるようになる、といった効果も期待できるでしょう。税の優遇措置も踏まえると、全体としては未だ知名度の低い中小企業が享受しやすいメリットかもしれません。

DX銘柄とは?

「DX-Ready」の状態からさらに進んだ企業を選定する制度に「DX銘柄」があります。DX-Excellent、またはDX-Emergingのレベルにある企業から選ばれる仕組みになっており、DX認定を受けた企業は認定後の目標とすることが可能です。

DX銘柄とは

DX銘柄とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、DX推進のモデルケースとして注目すべき銘柄として選出されたものです。

企業の競争力強化等を目的に2015年から行われていた「攻めのIT経営銘柄」の、選定基準を変化させたもので、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施しています。2020年から選定基準をDX中心のものへと変更し、名称も「DX銘柄」へと変更されました。

上場企業のなかからDX推進のベンチマークとなり得る企業を選出することで、目指すべき企業の在り方を波及させることが狙いです。また経営層の方々に、デジタル技術を活用して変革を起こすことの重要性を認識してもらいたいといった目的もあるようです。

DX銘柄2023の選定プロセスによると、アンケート調査への回答やスコアリング評価、銘柄評価委員会による最終選考を経て決定される流れとなっており、DX認定を取得していることも選ばれる条件となっています。

参考:経済産業省「「DX銘柄」「攻めのIT経営銘柄」とは
参考:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)

経済産業省がDX銘柄を選定する理由

経済産業省と東京証券取引所がDX銘柄を選定する理由は、市場全体のDX推進スピードを速める、またITの利活用の重要性をより意識してもらうためです。また日本企業とアメリカ企業とのDX推進の差も危惧しています。

2025年の崖を回避するために経済産業省は企業のDX化が進むための施策を打ち出しており、「攻めのIT銘柄」を「DX銘柄」へと変更したこともそのひとつです。

上場企業のなかからDX推進のモデルケースとなり得る企業をピックアップして「DX銘柄」として評価することで、その他の企業やその経営者がDX推進を意識するようになり、結果的に市場全体のDX推進が加速することを目標としています。

DX銘柄として選定されるためにはDX認定が必要です。この施策がうまく機能すれば、DX-Readyの状態へステップアップしようとする企業が増加していく流れが生まれるでしょう。

様々なDX銘柄

DX銘柄2022でグランプリを受賞した2社をご紹介します。

中外製薬株式会社(医薬品)

新薬を創出する領域においてディスラプションが起こり、新型コロナウイルス感染症がその流れに拍車をかけたことを背景にDX推進に乗り出されました。

社内にあるアイデアを取りこぼさないフローづくりや人材育成の体系化、データの利用、移動、保管のクラウド基盤といった情報管理体制の構築から、創薬プロセスに機械学習を導入するといった開発プロセスの変革にまで取り組まれています。

日本瓦斯株式会社(小売業)

「電気・ガスの小売」から「エネルギーソリューション」へと発想を転換。脱炭素などの取り組みと地域へのエネルギー供給とを結びつけ、効率的なエネルギー利用方法の提案が環境問題の解決につながるような仕組みを目指されています。

現場レベルでのプロジェクト推進では、事業サイドの人材・エンジニア・UI/UXデザイナーとが協業。外部人材を登用する際は、プロジェクトの遂行に必要な技術を重視し「どの会社か」ではなく「どの個人と組むか」という視点でパートナーを決めているそうです。

参考:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022

DX認定事業者を選ぶポイント

自社のDXを進めるには、デジタルガバナンス・コードに準ずる必要がありますが、何から取り組み始めればいいか分からない、という方もいらっしゃると思います。ここでは、既に認定を受けている事業者を探す方法や、認定事業者が見つけやすくなるポイントを紹介します。

DX認定事業者を調べる「DX推進ポータル」

DX認定事業者を探す方法のひとつにIPAの運営する「DX推進ポータル」があります。DX推進ポータルは、DXの進捗具合を自己診断する機能、DX認定を受けるための申請機能、DX銘柄選定のための調査へ回答する機能が備わっています。

DX認定事業者はDX推進ポータル上に一覧表示されるため、事業者を検索することも可能です。企業名や法人番号、地域名などで検索可能です。検索期間の絞り込み機能もあるため、同じ地域にいる最近認定された事業者を探すこともできます。

自社内の人材だけではDX推進が難しく参考にする会社を探したい、コンサルティングの依頼先を認定事業者から探したいといった際には便利です。

またDX推進ポータルの自己診断機能を利用すると、「ベンチマーク」を入手することができます。ベンチマークは、DX推進ポータルを通じてIPAに提出された各社の自己診断結果から作られます。自社の自己診断結果と比較して、相対評価の参考とすることも可能です。

参考:DX推進ポータル「DX推進ポータル利用マニュアル

DX認定ロゴマーク

経済産業省は2021年の4月に、DX認定事業者が使えるロゴマークを公開しました。DX認定を受けた事業者は、ロゴマークを自社のWebサイト上や名刺に掲載することでDX-Readyの状態にある企業だと他企業へアピールできます。

反対に、企業選びの際は、ロゴマークの有無がひとつの基準となるでしょう。

認定事業者以外の企業・団体・報道機関については、認定制度の普及につながる用途に限り利用可能な決まりになっています。

日本語表記の場合のロゴマーク

参考:経済産業省「DX認定企業の取組内容と、認定企業が使えるロゴマークを公開しました!

DX認定事業者選定の注意点と失敗の原因

認定事業者を選ぶ際にはDX認定のレベル分けや、事業者ごとの得意分野や実績を見分けることが必要です。またDX推進にあたり、自社に不足しているものを把握することも欠かせないでしょう。

事業者選びの注意点やDX推進を阻む要因についてご紹介します。

DX認定事業者選定の注意点

経済産業省とIPAが発行している「DX認定制度 申請要項」では、DX推進のレベル感は下記の4段階に分けられています。

レベル 事業者の状態
DX-Excellent 優れたデジタル活用実績が既に現れている
DX-Emerging 優れたプラクティスとなる(将来性を評価できる)
DX-Ready デジタル変革を進め、デジタルガバナンスを向上していく準備が整っている
DX-Ready以前 ビジョンの策定や、戦略・体制等の整備に、これから取り組む

※参考:IPA 「DX認定制度 申請要項

DX認定を受けている事業者といっても、推進レベルはさまざまです。認定プロセスを通じて準備が整っている状態の事業者もあれば、既に優れた実績を有している事業者もあります。

DXコンサルティングの依頼先として選ぶのであれば、DX-EmergingまたはDX-Excellentレベルにある事業者が望ましいのではないでしょうか。

また、経営陣の方が変革に向けた戦略の立案をサポートしてほしいのか、現場の方が戦略に基づいた施策立案やシステム開発のサポートをしてほしいのか、ニーズによっても依頼先が変わります。相手の得意分野と自社のニーズとが合致しているのか、依頼前に必ずチェックしましょう。

多くの企業が失敗?DX推進を失敗する原因

IPAが2020年に実施した調査によると、DXの推進がうまくいっていない多くの企業は、具体的な行動に落とし込むなど実践レベルでの課題を抱えていることが指摘されています。

(参考:IPA「DXの実現に向けた取り組み」)

また比較的推進している企業とそうでない企業との間には、DXの取り組みに対する危機感・必要性、事業部門の人材確保やオーナーシップといった面で剥離があることも示されています。

製品やサービス開発のプロセスやビジネスモデルそのものの変革を起こすという発想が、全社に浸透していないことが足踏みの要因となっている可能性があるでしょう。さらに、ITシステムのあるべき姿が不明瞭で、現状の評価や事業とシステムの在り方とが結びついていない可能性もあります。

自社の課題を把握するには適切な評価指標が必要です。IPAの運営する「DX推進ポータル」はその助けとなるかもしれません。

まとめ

DX認定事業者=DX-Readyな状態にあること、DX銘柄は目指すべきモデル企業であることや、DX認定事業者を探す方法やポイントをご紹介しました。

自社のみでDXを進めることが難しいと感じている場合は、DX推進ポータルの自己診断を利用したり外部の会社にサポートしてもらいながら進める方法も良いでしょう。

経済産業省は事業者の大小を問わずDXを重視し、かつ認定制度やポータルサイトの構築も行なっています。DXに取り組んでいることがステータスとなる日もそう遠くないかもしれません。

当社イントリックスでは、主にマーケティング、営業DXをメインの領域として全体戦略策定から、具体的な施策のご提案、伴走支援まで幅広くサービスをご提供しています。DXをご検討される際には、ぜひ一度、当社へお問い合わせください。

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