数千点以上の製品情報をグローバル全体でタイムリーに各種媒体で利活用するためには、SKU単位で製品情報と各種関連情報を紐づけて管理できるPIMを起点としたデータマネジメントが必要不可欠となっている。
また、Webサイトに製品情報をタイムリーに公開するためには、SKU単位で管理された製品データをCMSで取り扱うページ単位に情報の見せ方を含め再構成し、取り扱う必要があるため、PIM-CMS連携も必須となっている。
PIMで管理された製品情報は、製品情報ページや製品検索・比較機能など購買プロセスの比較・検討段階でユーザーに提供する重要なコンテンツ・機能となる。
このとき、顧客体験デザインを意識しているか否かでこれらのユーザーから見た使い勝手は天と地ほども差がつき、その後の引合行動へ影響する。顧客体験デザインへの企業の意識差は、Webサイトに如実に表れるのだ。
例えば、製品検索・比較機能などの場合、顧客体験デザインを意識しているか否かは検索の切り口などから伺い知れる。意識している企業では「目的から探す」「用途から探す」「後継品を探す」などユーザー視点に立った切り口が用意されており非常に使いやすい。
一方、あまり意識していない企業では「型番から探す」「製品カテゴリから探す」といった一般的な切り口しか用意されていない。後者のような顧客体験デザインの意識が低い企業は、こういった使い勝手の部分で見えない機会損失をしている。
顧客体験デザインの意識が高い企業は“人間中心設計”や“サービスデザイン”といった高い顧客体験を提供するための考え方を取り入れて情報の見せ方・機能提供のあり方を考えている。
このような高い顧客体験を提供することにより、サイトを訪れたユーザーが目的の情報に辿りつき引合につながるアクションが起こりやすくなる。
また、その際のユーザーの属性情報や行動情報を収集・分析してフォローアップする仕組みとしてMAとインサイドセールスが重要となってくる。
2014年頃に日本市場に上陸したMAは“マーケティングオートメーション”という言葉の響きから多くの企業に導入されていったツールの一つではあるが、かなり錯覚されているツールの一つだ。
MAツールを導入して成果を挙げるためには、顧客ステージを数段階に分けて定義して各ステージから次のステージに移行させるための顧客体験設計を行い、アクションを促すための良質なコンテンツ提供や“育成リード”を”有望リード”に転換させるためのインサイドセールスの動きが必須となるのだが、そういった泥臭い面があることを十分に理解しないまま導入している企業が少なくないと感じている。
このように営業ツールとしての製品サイトを実現するためには、戦略、コンテンツ、システム、体制・プロセス、それぞれのテーマをしっかりと考え取り組む必要がある。
実現にむけてのアプローチと検討課題
最後に、優れた製品サイトを実現するためのアプローチについて考えてみたい。
ここでは「数千点以上の製品情報を持つBtoB製造業の製品サイト」を前提とする。
優れた製品サイトを実現するためのアプローチとして、①全体構想、②プロジェクトデザイン、③関連プロジェクトを束ねる全体統括役(PMO)の設置が重要と筆者は考えている。
全体構想
全体構想では「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」「どのように営業活動に活かすか」を3~6ヶ月かけて取り纏めていく(図6)。