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BtoBマーケティングコラム DXロードマップとは?作成の手順、成功のポイントを解説
2024年3月22日
![](img/index/pic01.jpg)
DXロードマップとは
2018年9月、経済産業省はDXレポートの中で「このままでは2025年には年間12兆円もの経済損失を出すリスクがある(=2025年の壁)」を発表し、日本のDX化の遅れに警鐘を鳴らしました。
これにより現在日本の多くの企業は、それぞれにDX化への取り組みを進めています。日本のDX化が遅れている理由にはDXの人材不足やシステムのレガシー化が挙げられ、これらを正しく改革していくためにはDX化のためのロードマップの作成が重要となっています。
経済産業省の「DXレポート」
ここ数年多くの企業が様々な形でDX化を進めている背景には、経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』が挙げられます。
これは2018年9月に経済産業省が発表したレポートで、内容は『古い既存システム(レガシーシステム)がDX化されずにこのまま存続することによって、年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失の可能性がある』というものです。
経済産業省の強い警鐘により多くの企業がDX化に舵を切り始めましたが、日本のDX化が遅れている要因としては以下のようなことが挙げられています。これらを改善するのが急務となっています。
- 既存システムのレガシー化(レガシー化とは「技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化・ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステム」との定義)
- DX人材の不足
- システムを提供する企業(ベンダー企業)の開発の遅れ
日本のDXの現状
DX化に関係してスイスのシンクタンクである国際経営開発研究所IMD(国際経営開発研究所)では、毎年「デジタル競争力ランキング」を発表しています。2022年版では日本は63カ国・地域中29位と、2021年より1つ順位が下がり過去最低となりました。
アジアで見てもシンガポールが4位・韓国が8位・台湾が11位・中国が17位と大きく遅れをとっていることが分かります。このような背景からも2025年の壁のリスクを放置して世界のDX化に遅れをとると、アジアの他の国々の成長も脅威となり様々な経済損失の原因となることが伺えます。
ここまで日本のDX化が遅れた要因としては、稼働から21年以上経過する基幹系システム(レガシーシステム)が刷新できないこと、DX化を推し進める人材の不足などが挙げられます。
日本政府もこの点を懸念し2021年にデジタル国家予算として1.7兆円を計上し、同じく2021年9月にはデジタル庁も発足しています。
DXロードマップとは
ここまで述べたように、日本は現在国を挙げてDX化の取り組みが始まっています。政府が大きな予算を組んでいるとはいえ、基本的には一つ一つの企業が組むことが重要です。その実行の際に必要となるのが『DXロードマップ』です。
ロードマップ(roadmap)とは、直訳すると道路地図や工程表・進行計画表という意味。プロジェクトにおけるロードマップとは、目指すべき最終目標を決め、ゴールまでに行うべき事項を時間軸で示した計画書のことを指します。
DX推進のロードマップの作成の際は、まずはゴールを設定後、現状のITインフラやプロセスを評価し、デジタル技術の導入や最適化を通じてビジネス目標を達成するための必要項目を洗い出すことから始まります。
ロードマップを作成する際には、「どこから手をつけるかを決める優先順位の高さに基づくもの」「短期的に取り組むべきこと」「中・長期的に取り組むべきこと」のように、様々な視点から俯瞰的に考えていく必要があります。
DXロードマップが必要な理由
DXの実展にあたり、なぜロードマップが必要なのでしょうか。
日本能率協会の調査結果から、2020年9月24日時点で既に日本国内における5割強の企業がDX推進やその検討に着手していたことがわかっています。しかし、そのうち「ビジョンや戦略、ロードマップが明確に描けていない=77.7%」「具体的な事業への展開が進まない=76%」とほぼ同数でした。
DXの導入には多くの部署間での協力が必要となるため、しっかりとした中長期計画に基づかない行き当たりばったりの作業ではタスクの進捗に支障が生じてきます。
導入に関する取り組みが混乱しはじめると、それぞれの部署でやるべきことや意義が見えなくなり、意欲の低下から失敗につながるリスクが出てしまいます。それを防ぐために短いスパンごとの達成目標や、「我々はどのような目的で何を目指していて、今の作業はどの部分にあたるのか」など立ち返る場所が重要となってくるのです。それがDXロードマップの役割です。
DXロードマップ作成に必要な4つの手順
DXロードマップを作成するには4つのSTEPが必要です。1つ目は全社・全部門で共有ができるDX ビジョンの策定。多くの部署がまたがるDX化だからこそ社内の誰もが共感できるDX ビジョンが重要になります。
2つ目はビジョンの実現のために必要な現状分析と強みの洗い出しです。3つ目は実現可能なKPIの設定、そして最後がこれら全てをまとめたロードマップ(スケジューリング)の作成です。
順を追って手順や気をつけるべき点を解説します。
STEP1)DXロードマップのビジョンの作成
ロードマップを作成する際にまず必要なのが、社内で『DX化で目指すべきビジョン』を決定することです。
企業におけるビジョンとは『企業が目指す理想的な姿』であり、DXロードマップ作成の際のビジョンとは、『DXを推進することによってどのような企業になりたいか』を言語化したものです。
会社のDX化を成功させるためには他部門での連携が必須で、各部署にそれぞれの役割が発生します。今まではあまり接点がなかった他部署間でのやり取りが頻繁に発生するからこそ、社内で共有できるビジョンが重要なのです。
またDX化のビジョンは、各部署・各担当者が壁にぶち当たったり目的が見えなくなった際に、何度でも立ち返る羅針盤ともなります。DX化は経営者を筆頭にして組織全体で変革に取り組む必要があるので、経営者の理想像を現実可能なレベルで盛り込みつつ作成者が特定の部門に偏ることのないよう留意し、企業理念や強みに基づいて策定しましょう。
STEP2)DXロードマップ作成のための現状分析
ビジョンの策定が終わったら、具体的なロードマップの作成に取り掛かります。ロードマップの作成の際には、競合のリサーチや業界の市場の動向なども鑑み、それらを元に自社の強みの把握や現状分析を行います。
現状分析を行うことで、自社が強みとして今後も伸ばすべき点・あるいは改善すべき点が見えてきます。そもそもDX化する目的は国内外問わず競争力を高め強い企業になること。自社の強みに付加価値をつけられる目標設定をすることが重要となります。
またしっかりとした現状分析を行なってからDXロードマップを作成することで、目標と現実の大きな乖離を防げます。現状からかけ離れた大きすぎる目標を設定しても、社員のモチベーションの低下や過重労働などを招き、結果的には失敗に終わるケースがほとんどです。
現状分析を行う際には、社内調査や担当者からヒアリングすると共に、一般的なフレームワーク(3C分析・ 4C分析・SWOT分析・PEST分析・VC分析など)も有効です。
STEP3)DXロードマップのKPI設定
KPIの目標設定は、これが実現できているのかどうかを誰もが評価しやすいことに加え、全社員・担当者・経営者が適正だと納得できる内容や数値にする必要があります。さらに、明確性・測定可能性・達成可能性などの視点から、以下に留意し設定することが求められます。
- そのKPIの数値が改善されれば、売り上げやコスト削減などに具体的な改善が見られるか
- そのKPIは各部門の作業内容も含め実現可能か
- そのKPIはPDCAの回し方を具体的にイメージでき、また無理が生じた場合に修正可能か
計画当初設定したKPIが、トラブルや新たに発見された課題などによって進捗が遅れたり、実現不可能であることが判明する場合も少なくありません。そのような際には速やかにKPIを見直す柔軟性も必要です。
参考までに、埼玉県庁のDX化のKPIは部署ごとに「行政手続きのオンライン率」「介護施設の介護ロボット導入率」「行政利用率のオンライン率向上」のように定めています。
STEP4)DXロードマップのKPI設定
STEP1から3までが揃ったら、「何をどの順番で・どんなスケジュールで行うか」を年表のように図式化していきます。これが完成したものがDXロードマップとなります。
まずは最終的なKPIを決定した後、各年度ごとにやるべきことやフェーズなどを大まかに作成。年度の枠が決まったあとは、実現可能なスケジュールで四半期ごと・月ごとなどに落とし込んでいきます。
年度のゴールはしっかり決めるものの、数ヶ月単位などの小さな期間のスケジュールは定期的に見直しをしながら現実に即して進めていきましょう。
このような全体のKPIの他に、短期間のマイルストーンも設定します。これは実現可能な内容である必要があり、1週間・1ヶ月などの短期で具体的に設定をし、社員のモチベーション低下を防ぎます。
目の前の小さなマイルストーンをコツコツと積み重ねていった結果、数年後に本来のKPIが達成されているというのが理想的なスケジューリングです。
DXロードマップを成功させるには
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」を乗り越え、DXソリューション導入を成功させるには、各社がレガシーシステムから脱却し、DXに取り組んでいくことが必要です。
既存のITシステムを見える化し、DX戦略・ビジョンを明確化することで、激しさを増すデジタル市場競争の中でも成長していくことができます。そこでここからは、DXソリューション導入成功のポイントについて解説します。
DXロードマップが失敗する理由
これから正しいDXロードマップを作成して社内でDX化するにあたり、押さえておきたいのは「他社はどのようなことが理由でDXロードマップが失敗しているか」という点です。
陥りやすい失敗や見逃しがちなトラブルなど、事前に把握し、確実なDX化を目指しましょう。よく見られる失敗の原因は以下の5つです。
- 明確な方向性が定まっていなかった
- 経営層と担当者がビジョンを共有できていない
- ロードマップの策定自体が誤っているのに現実に即した修正を行わない
- すぐに効率化を求めるために現場が疲労する
- 現状分析が正しく行われておらず、現状の課題とKPIに大きな乖離がある
特に致命的な問題となるのが経営層と現場との意識の乖離です。「DX化」という言葉が一人歩きしているためトップが飛びつきやすいものの、本質的にDXについての理解が欠如していたり、経営層がイメージするDX化と社内で実現可能なDX化に大きな差がある場合が見られます。
DXロードマップ作成の際はこの点に留意して作成してください。
DXロードマップのチェックポイント
一通りのDXロードマップが作成できたら、最後にそれが実現可能かどうかを確認するためにいくつかのポイントをチェックします。主にチェックすべき項目は以下です。
- 理論や方法論に偏りすぎていないか
- 「数値化する」「DX化するということ」自体が目的化していないか
- 中長期のKPIの目的が明確になっているか
- マイルストーンが具体的なアクションに落とし込まれているか
- 現場の人員やスキルに見合ったスケジューリングやKPI設定となっているか
上記はDXロードマップが完成し実行を始めてからも、再三確認すべきポイントになります。絵に描いた餅にならないよう、PDCAを回しながら常に軌道修正をすることが最終的なKPI達成の鍵となります。
DXロードマップが成功するポイント
DXロードマップの成功させるにあたり最も大きなポイントは以下の3つです。
- DXマインドや社内文化の醸成
- 人材育成
- ビジョンやKPIの共有
長年利用していたシステムを変えてDX化を実現するには、多くの時間とコスト・人手を要するため、「なぜこれが必要か」「達成した際にはどのような未来が描けるか」というビジョンを正しく理解しないと実現が不可能です。ビジョンとKPIの共有は部署間・会社全体で定期的に行う必要があります。
DX人材は、社内人材を育成する場合には時間がかかる上に適任者がいるとも限らないため、KPIの内容や目標年数によっては積極的な外部人材の登用が求められます。また経営層の関わり方も重要です。現場の現状を把握した上で、積極的な関与と理解、適切なリーダーシップが求められます。
まとめ
DXロードマップを作成し最終的なKPIを実現するには、「絶対にDXを実現する」という会社全体での強い意志が必要です。
経済産業省の「DXレポート」で、『日本企業がこのままDXを推進できなければ、2025年以降毎年12兆円もの経済的な損失が発生する』と警鐘しているため多くの経営層は危機感を持ち、DX化を進めています。
しかし現状を反映した正しいロードマップをしっかり作り、経営者と現場の共通認識をしっかり持たないと、経営者の理想ばかりが先行して失敗する可能性が高まります。成功のためにはDX化に関わる全部署・全社員が納得するDXロードマップを作成し、目の前のマイルストーンを地道に一つ一つ実行していくことが求められます。
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