BtoBマーケティングコラム

BtoB製造業のグローバルブランディング成功事例

なぜBtoB製造業にブランディングが必要なのか?

ブランディングというものは、非常に奥深く難解なものです。「顧客層が幅広いBtoCでこそ強化すべき」「BtoBビジネスではあまり有効ではない」「そもそも製造業におけるブランディングって何なのか」など、様々なことが語られています。
また、ブランディングの解釈は幅の広さ故に、ブランディングの解釈は非常に幅広く、"BtoB製造業のブランディングとは◯◯"という理論がいくつも存在します。
ただ、いずれの考え方においても、揺るぎない1つのテーマに、「自社の価値を伝えきる」という点があります。
潜在顧客、既存顧客、求職者、投資家、各種ステークホルダーに対し、自社の価値を伝えるべき、という点に異論はないかと思います。
本記事では、あらゆるブランディング施策のSTEP1とも言える、自社の価値を伝える、にフォーカスして、製造業がWebを通じて自社の価値をどのように届けているか、事例を交えながらご紹介いたします。
また、ブランディングはコーポレートコミュニケーション・マーケティングコミュニケーションの双方で実現していくものであり、コンセプト、ビジュアル要素(カラー・フォントなど)、タグラインなど様々な要素が関連しますが、本記事ではコーポレートコミュニケーションのコンテンツを中心にご説明いたします。

 

海外こそブランディング施策の重点ポイント

多くの日本製造業の成長の源泉は海外にあります。当社のお客様にも、海外売上比率70%超の企業様が数多く存在します。
日本では誰もが知る企業であっても、一歩日本の外に出てしまえば無名ということも珍しくありません。無名とまではいかずとも、総じて海外での認知度は1段も2段も低いわけです。
顧客接点の確保、短期的な販促活動の後押し、長期的な仕込み、あらゆる点で、海外でのブランディングこそ重要な取り組みです。

各国がそれぞれの市場で、どのようにコーポレートコミュニケーションを実施しているのか、事例を通じて見ていきます。

どこで発信するのか?グローバルサイト vs. ローカルサイト

本社が世界に向けてコーポレートコミュニケーションを展開するグローバルサイト。
各国販社が各国市場に向けてマーケティングコミュニケーションを展開するローカルサイト。
各社のサイト群は大きくこの2つで構成されています。

早速結論からお伝えしてしまいますが、ユーザー視点で考えれば、「ローカルサイトのコーポレートコミュニケーション情報が充実している姿」が理想です。
ユーザーがグローバルサイトを訪れるのは、自国向けのサイトが存在しない、もしくは情報が不足している場合など、限定的なケースにとどまります。
ですので、ユーザー視点だけで考えれば、ローカルサイトを強化すべきです。

一方で、現実的な視点として下記のような問題が出てきます。

  • コーポレートコミュニケーションで扱うグローバルグループを横断したコンテンツを各国が制作することは難しい
  • ローカル側にはマンパワーがなくコンテンツ拡充が難しい
  • 海外販社の第一優先は短期的な売上創出であり、コーポレートコミュニケーション関連の施策が後手に回ってしまう

など

こうした状況の中で、各社がどのようにローカルサイトのコーポレートコミュニケーションを強化しているか、2大手法をご紹介します。

1. 共通基盤を介してグローバルに同時配信(集権管理)

例えば、日東電工ではDiscover Nittoというブランドコンテンツを世界中に展開しています。
本社がグローバル共通のコンテンツを制作し、グローバル共通のWeb基盤を介して多言語化されたコーポレートコミュニケーション情報を一律で世界に同時展開しています。

Discover Nitto(日本サイト/日本語)

Discover Nitto(ブラジルサイト/ポルトガル語)

Discover Nitto(欧州サイト/フランス語)

マーケティングコミュニケーションも含めて世界中のWebサイトを集約管理するメリットが大きい企業、既にグローバル共通基盤を有している企業は、共通基盤を介してローカルサイトを充実させていくことが望ましいです。

2. 本社制作コンテンツを各国に配布(分権管理)

一方、あえて現地主導の「分権型」運用を選択している企業もあります。
ダイキン工業ではグローバルグループの取り組み、強みなどのあらゆるコーポレートコミュニケーション情報を本社でコンテンツ化し、各国のWeb担当者に配布。ローカル側で各国サイトへのコンテンツの組み込みを実践しています。

Perfecting the Air(グローバルサイト/本社管理サイト)

Perfecting the Air(シンガポールサイト/現地販社管理サイト)

Perfecting the Air(インドネシアサイト(現地販社管理サイト)

これらのサイトは裏側のシステムとしてはつながっていませんが、ローカルサイト側のコーポレートコミュニケーション情報を充実化させるために配布といった手法を展開しています。
現地のコミュニケーション支援として写真・動画素材の配布等を行っています。各種取り組みについては下記をご参考ください。

3. グローバルサイトで完結させるのも一手

ここまで、ローカルサイトにおけるコーポレートコミュニケーション強化の事例をご紹介しました。
一方で、本社管理のグローバルサイトでコーポレートコミュニケーションを集約する手法を選択している企業も存在します。
例えば、Caterpillarではグローバルサイト=コーポレートコミュニケーション、各国事業ローカルサイト=マーケティングコミュニケーションの明確な役割分担のもとで、全てのコーポレートコミュニケーション情報をグローバルサイトに集約しています。

Caterpillar(グローバルサイト/コーポレートコミュニケーションサイト特化)

CAT (オーストラリアサイト/マーケティングコミュニケーション特化)

CAT(ドイツサイト/マーケティングコミュニケーション特化)

自社の事業構造や組織体などを踏まえて、最適な形を選択しましょう。

大事なのは何を伝えるか。コンテンツを事例で見る

ここまで、どのようにグローバルにコーポレートコミュニケーションを展開するかを見てきました。
もちろん、効果的かつ効率的な展開方法も重要ですが、最も重要なのは、伝える内容、コンテンツです。AIが浸透した今、また更にAI活用が進む今後においても、企業が発信する最も正確で最も深い情報へのニーズは変わりません。

ここからは、各社が、ブランディングに寄与するコーポレートコミュニケーション系コンテンツとしてどのようなコンテンツを展開しているかを見ていきたいと思います。

OUTLINE OF MHI GROUP | 三菱重工

何を、どのような規模で展開している企業なのか、タグラインに関連する各種ファクトといった情報を、数字を用いながら端的に紹介しています。
数字で見せる手法は各社が多く実践していますが、パッと見で理解してもらうには有効な手段の一つです。

Technology | ニコン

技術分野やコア技術、および各事業・製品とのつながり。研究開発、ものづくり、オープンイノベーション、知的財産かつ活動。技術力や開発者の想いに関するストーリー型のコンテンツなどを通じて、自社技術について多方面から解説しています。
技術というテーマ1つを、様々な確度からコンテンツ化することで、技術の裾野の広さや技術的な優位性を語っています。

Sustainability | クボタ

サステナビリティ関連の情報発信の重要性は高まる一方です。
コンセプトやポリシー、マテリアリティ、世界課題に対する自社の取り組みの意義、SDGsと事業活動の関連性、世界各国での取り組み事例など、自社事業と絡めたメッセージの伝え方が参考になります。

Why Hamamatsu? | 浜松ホトニクス

「光」という核となるテーマを軸に、自社製品の領域や、様々な業界でのアプリケーション事例、自社の精神や研究活動の考え方を1ページにまとめ、企業の全容を視覚的にもわかりやすい形で表現しています。
実は、「何をやっている会社?どんな会社?」を分かりやすく説明するのは難しかったりします。こうしたコンテンツは、国内外の社外関係者だけでなく、インターナルブランディングでも効果を発揮することも多いです。

まずは自社の価値を言語化することから

「ブランディング」という単語は、誰もが使う単語でありつつ、実はその解釈は多岐に渡ります。企業のブランディング活動は奥深く、難しい世界です。

ブランドの本を読めば、コンセプトを定め、タグラインを制定し、ガイドラインに落とし込み……など、様々な実行策が解説されています。

本コラムでは、そんなブランディングの中でも、コーポレートコミュニケーションのコンテンツ、という点にあえてフォーカスして各社の取り組みをご紹介しました。
それは、冒頭でもお伝えした通り、「自社の価値を伝えきる」はあらゆる取り組みの第一歩であり、超がつくほど重要であると考えているからです。

自社のWebサイトを一度、見てみてください。貴社の中にも、まだ発信しきれていない価値がきっとあるはずです。分かりやすく伝わる形で表現しきれているでしょうか。

イントリックスは、自社の価値を言語化、コンテンツ化はもちろん、ブランドコンセプトの策定やガイドライン整備。グローバルコミュニケーション強化のための、基盤構築から海外各国との連携支援まで、様々な角度から企業ブランディング推進をお手伝いしています。
明確なテーマが決まっていなくとも、漠然とした課題感をお持ちの際は、是非お気軽にご相談ください。

著者プロフィール

佐賀文昭
イントリックス株式会社 コンサルティング・制作管掌 執行役員

アメリカ、ウエスタンワシントン大学にてマネジメント・国際ビジネスを専攻。国際市場におけるマーケティングとグローバル企業における情報システム活用を学び帰国。 2011年、イントリックス株式会社に入社。コンサルティング・制作管掌 執行役員。総合商社や機械・部品・素材など、多業種にわたる大手BtoB企業グローバルWebサイト群の調査・戦略策定を推進。構築フェーズにおけるプロジェクトマネージャーを務め、数々のグローバルデジタルコミュニケーションプラットフォーム構築を推進。海外コミュニケーションの推進、海外現法サイト立ち上げなど、グローバルコミュニケーションの支援に従事。現在に至る。

BtoB企業のデジタルコミュニケーションを総合的に支援しています

BtoB企業に特化したサービスを提供してきたイントリックスには多くの実績とノウハウがございます。現状のデジタル活用の課題に対し、俯瞰した視点でのご提案が可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

デジタル活用 無料オンライン相談会

BtoB企業のデジタル活用を支援してきた各分野の経験豊富なコンサルタントが、マクロな調査・戦略立案からミクロなデジタルマーケティング施策まで、デジタル活用の悩みにお応えします。

無料オンライン相談会
概要・お申し込み

BtoBデジタルマーケティングのお役立ち資料

BtoB企業向けにデジタルマーケティングの最新情報をホワイトペーパーとしてご提供しています。

資料ダウンロード

イントリックス代表 氣賀 崇の公式note

イントリックス代表 氣賀 崇の公式note

noteでは、BtoBのデジタルコミュニケーションの面白さや意義、可能性などについて語っています

INTRiXメールマガジン

セミナーやコラム情報をお届け

ご登録はこちら