BtoBマーケティングの調査や施策の企画で使用するフレームワーク6選
先ほどご説明したように、フレームワークにはビジネスの各場面に応じたさまざまなフレームワークがあります。
ここでは、市場や競合の調査、マーケティング施策を企画する際に便利なフレームワークを6つご紹介します。
STP分析
STP分析は、マーケティング施策を実施する狙いを定める際に役立つフレームです。STPはそれぞれ
- Segmentation(セグメンテーション)、
- Targeting(ターゲティング)、
- Positioning(ポジショニング)
の頭文字を表しています。分析を進める順番に並んでいるため、フレームワークの使い方も比較的覚えやすいでしょう。
マーケティングは、限られた資金や時間を有効活用して利益を向上させるために、力の注ぎどころを見極める作業でもあります。STP分析を活用すると、どのような属性をもつ企業あるいは購買者(バイヤー)を顧客とし、自社に対してどのような印象を抱いてもらうのかという方針を定めることができます。
STP分析の使い方
まずは、自社が参加している市場を細分化する軸を定めます(セグメンテーション)。
細分化した市場のうち、どこに属する企業にアプローチするのかを検討します(ターゲティング)。
狙いを定めた企業には競合企業もアプローチしているはずなので、自社はそのなかでどのような価値を発揮するのかを企画していきます(ポジショニング)。
STP分析はセグメンテーションする際の切り口が重要です。都心・地方、中央アジア・ヨーロッパといった地理的な切り口、年齢や所属企業におけるポジションのように人に焦点を当てた切り口などがあります。
3C分析
3C分析は自社をとりまく状況を俯瞰する際に役立つフレームワークです。Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の3つの観点から状況を分析します。
マーケティングに限りませんが、何かしらの有効な企画を立てるには現状の分析が欠かせません。自社、顧客、競合、3つの観点から現状分析を行うことによって、企画立案を進める土台を整えることができます。ビジネスを行う際に必ず関わってくる3つの要素について分析するため、いったん視野を広くするためのフレームワークともいえるでしょう。
市場のニーズに対して自社の商品・サービスがどのように応じているのか、競合企業はどのような戦略をとっているのかを把握しながら整理を進めます。
3C分析の使い方
まずは顧客や市場全体のニーズ、市場規模などマクロな視点から分析をはじめます。その後に自社や競合についての分析を進めていきます。
自社の分析は、商品・サービスの売上高や特徴、組織内の人材などから自社の強み・弱みを発見していきます。競合の分析では競合の商品・サービスの特徴のほかに売り方などの戦略面も調査します。
参加している環境を俯瞰した上で、自社や競合企業について分析を進めていくことがポイントです。自社が提供している価値は何なのか、競合企業に勝っているポイントは何か、現状への理解が深まることで今後に取るべき施策が見えてくるようになります。
4P
4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの要素を意味します。企業の活動において、企業側が操作可能な要素のうち代表的な4つを表したものになります。
4Pのフレームワークは、現状から何かしらの変更をかけていく際の目安となります。またマーケティング施策をこれら複数要素の組み合わせとして捉えることをマーケティング・ミックスといいます。
例えばニーズを分析して「Product」を改善しても売上に変化がない場合、「Promotion」の方法も変えることで魅力が伝わるようになるのではないか、といった仮説が立てられます。
4Pはマーケティングの観点を4つに分けたシンプルなものですが、強力なフレームワークです。
4Pの使い方
マーケティング施策を検討する際に、どの要素に変更をかけていくのか考える際に活用します。企画会議を行う際などに、関係者間で事前に4Pの観点を共有しておくと視点がブレることなく進められるかもしれません。
製品自体に変更を加えるのか、価格を変えるのか、販売する場所や流通経路を変えるのか、見せ方や伝え方を変更するのか、以上の観点から検討を進めます。このとき、どの要素を変更したのか振り返れるように記録をつけることをおすすめします。
4Pのフレームワークは、変更前後を比較できる仕組みを整えつつ運用すると良いでしょう。
マーケティングファネル
マーケティングファネルは、顧客が商品・サービスを認知してから購買するまでの行動を段階分けしたモデルです。スマートフォンやSNSの普及に伴い、消費者が情報発信できるようになってからは、購買後の発信も視野に入れたマーケティングファネルも登場しました。
大きくは認知から購買までを段階分けした「パーチェスファネル」と、購買後の口コミや情報発信を段階分けした「インフルエンスファネル」とに分けられます。また両者を組み合わせた「ダブルファネル」というフレームワークもあります。
マーケティングファネルは顧客の購買行動をモデル化したものですが、顧客の検索・購買行動の複雑化に伴って顧客分析には向いていないといわれているようです。
マーケティングファネルの使い方
顧客分析への適応は難しくても、自社のマーケティング施策において何を強化するかという観点で、マーケティングファネルは有効です。
例えばパーチェスファネルは認知・興味関心・比較検討・購入の4段階にわかれますが、これに基づいて自社のマーケティング施策を分類することができます。
またマーケティングファネルによる分類にしたがって「認知度を拡大する」「問い合わせの数を増やす」「受注率を向上させる」といった目標を立てることも可能です。サブスクリプション型のサービスの場合、解約率を目標として定めることもできるでしょう。
LTV分析
LTVは評価指標のひとつで、とくにサブスクリプション型の商品・サービスを提供する企業において重要なものです。Life Time Valueの略称で、一人の顧客が契約開始から契約終了までに支払うお金の総額を意味します。
例えば、月額課金のサービスを提供している場合
顧客一人あたりの単価 × 利益率 × 平均的な契約継続期間 = LTV
上記の計算式で表すことが可能です。
LTVの計算式に決まりはないため、それぞれの組織で納得のいくものを定めることをおすすめします。上記の場合、契約獲得までのコストを導入することも可能です。
LTVの最大化を目標に置くと、新規契約だけではなく継続にも重きが置かれるため、ノルマ達成のために契約を急ぐことがなくなる効果も期待できます。
LTV分析の使い方
LTVはフレームワークというよりは評価指標のひとつのため、マーケティング施策を検討する際のKGI・KPIを定める際に用いられます。
KGIはKey Goal Indicators の略で、施策を評価する最終的なゴールを意味します。
KPIはKey Performance Indicatorsの略で、KGIを達成するために欠かせない中間指標にあたります。
KGIにLTVを設定すると、KPIには解約率や新規顧客のひとりあたりの獲得コストなどが挙げられます。KGI・KPIに何を設定するかで組織の動きも変化するため、評価指標の設定も重要なマーケティング業務のひとつです。
VRIO
VRIOは4Pのように、分析の際に用いる4種類の観点を表しています。それぞれValue(経済的な価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字をとったもので、自社の強み・弱みを把握することに適したフレームワークです。
Valueは市場のニーズや脅威にどれだけ応えられるか、Rarityは類似製品・サービスの少なさ)を意味します。Imitabilityでは「真似されやすさ」を見て、希少性があっても真似されやすければ、それは一時的なものに過ぎないと判断するような指標です。Organizationでは、分析対象とした経営資源を運用できる組織体制が整っているかを評価します。
VRIOの使い方
分析を進める順序はV→R→I→Oの順番で、はじめに分析対象とする経営資源を定めます。経営資源には人材、技術、これまでの活動により培った販路などが挙げられます。それらについて、RarityやImitability、Organizationの観点から評価を進めていき、自社の競合優位性がどの程度なのか、それはどれくらい継続し得るのかを判断します。
VRIO分析には、その前段として市場を細分化する作業が入ることにも気をつけましょう。STP分析の「セグメンテーション」「ターゲティング」のあとに取り組むことで経営資源を定めやすくなるはずです。