PMO憲章の発行
PMO憲章の発行は、プロジェクト開始までに周知し、コンセンサスを得ることが望ましい。なぜなら、PMO憲章を発行することで、PMO自身の足場固めと、影響力を明確にした上でプロジェクトに参画できるからだ。具体的な周知はプロジェクトキックオフの場で行うのが一般的と言える。
つまり、発行したPMO憲章で定めたポリシーを遵守してプロジェクトマネジメントを行うことは、組織からの十分な支援を受けられることを意味する。日本企業でのPMO憲章の発行はまだ珍しいが、米国企業ではプロジェクト憲章と同じくらい当たり前になっている。
PMOとPMの違い
次に、よく混同されるPMとの違いについて、「スコープ」「QCD」「PJ目標」のプロジェクト管理の視点から紹介しよう。
スコープ視点におけるPMOとPMの違い
PMOはプロジェクト全体を管理・統括する役割であることから、プロジェクトのスコープや方向性を管理し、組織全体でのプロジェクトの一貫性や標準化の確保が対象となる。
一方、PMは単一プロジェクトを推進するプロジェクトマネージャーであることから、特定プロジェクトのスコープや目標の管理が対象になる。
つまり、PMOは複数プロジェクトに横串を刺したプログラムを俯瞰し、統括的な管理を行うのに対し、PMは担当プロジェクトのみのスコープを具体的に管理する役割を果たす点が大きな違いだ。
QCD視点におけるPMOとPMの違い
PMOはポートフォリオを正しく理解し、成果物の品質、コスト、納期を総合的に管理する。そのために、品質管理や品質向上の取り組みを支援し、コスト管理や予算の見直し、リソースの最適化を行い、納期を達成するためのスケジュール調整を行う。
一方、PMは担当プロジェクトにおける成果物の品質、コスト、納期のみが対象となる。そのため、担当プロジェクトの進捗状況のモニタリングや品質管理、コスト管理、スケジュール管理を担い、チームの指揮を執りながらプロジェクトを推進する役割を担う。
PJ目標視点におけるPMOとPMの違い
PMOはプログラム目標を正しく理解し、それに基づいてプロジェクトの選定や優先順位付けを行う。そのため、成果物によるビジネス成果/目標を常に意識し、プログラムの最適化や効果的な運営をコントロールする必要がある。
一方、PMは担当プロジェクトにおけるPJ目標に向けた成果物の実現を推進することに専念する。そのために、PMはチームをリードし、プロジェクトのリスク管理や課題解決を行い、PJ目標の達成を目指す。
まとめ
PMOとPMでは、プロジェクト管理の視点での差異はない。しかし、複数プロジェクトを統括管理し、組織レベルでの目標達成に責任をもつPMOと、単一プロジェクトの管理・実行を行うPMとでは、コミット対象は大きく異なる。責任分界点も違うことから、PMOには契約履行とグレーゾーンのバランス感覚が求められる。
リニューアルプロジェクトにおける管理の考え方
大規模なサイトリニューアルプロジェクトを例に、PMOのスケジュール管理の考え方を見ていきたい。調査/戦略からはじまり、要件定義、設計、構築、移行と進み、ローンチ後の運用・保守までの一連の流れを以下の矢羽根で表した。
前述したPMOのタイプによって関与度合いは異なるが、主なスケジュール管理の着眼点としては3つ挙げられる。次項より詳しく解説していこう。