2.コミュニケーションテーマ
ポテンヒットはコミュニケーションロスがきっかけで発生するケースが多いことから、フォーカスすべきテーマは「プロジェクトを前に進めるために必要“以外”のコミュニケーション」と言える。“以外”としたのは、ベンダーの目的が担当プロジェクトの成果物を作り上げることにあり、それ以外への注意が薄れてしまうことが頻繁に見られるためだ。
その代表例が、分かりきっていることへの認識のズレや変更管理といったルールである。打ち合わせの中で、仕様変更や追加機能の話になり、十分な議論がされないうちにベンダーが安請け合いしてしまう場面は珍しくない。
PMOは、戦略や大方針との整合性を確認し、ミスコミュニケーションを未然に防ぎながら、本来あるべきプロジェクトの方向にリードしていかなければならない。
「ミスコミュニケーション」により「ロス」が生じる
ミスコミュニケーションとは、情報を伝える側と受け取る側に、認識の相違が起こっている状態を指す。「きちんと話したはずなのに正しく伝わっていなかった」「指示どおりに行動したはずなのに誤りだと言われた」といった状態がコミュニケーションロスを生んでしまう。
コミュニケーションロスとは、ミスコミュニケーションを原因として生じる損失やミスやトラブルをいう。「説明が不十分で、誤った資料を作成した」「スケジュール変更がメンバーに伝わらず、プロジェクト進行が遅延した」といったケースである。
このような結果に陥らないためにも、コミュニケーションの質と量が重要なのだ。つまり、分かりきったようなことであっても言葉に乗せて会話をしなければいけない、ということである。
勘所② 厳格な視点で、実行実現性にこだわる
プロジェクトがうまくいかない原因は、それ自体が絵空事である場合が多い。よって、「誰が何をいつまでに」を厳格に突き詰め、実行実現性を高めることがプロジェクト成功の鍵を握る。
計画が可視化されているか?
まず注目すべきは、計画がスライドなどで明らかになっているかという点である。稀に自分のスコープ内でなんとなくプロジェクトをスタートさせた結果、何度もリスケするといったケースが見受けられる。なぜこのようなことが起こるのか。
原因のひとつに、プロジェクトオーナーのマネジメントに関する知識・経験の浅さがある。そもそも彼らはプロジェクトマネジメントのプロではない。そのため、プロジェクトが大規模であるほど計画は各論に陥りやすい。プロジェクトの進みを鈍化させないためにも、計画が可視化されているかは重要な点である。
計画に実行実現性はあるか?
次に、可視化された計画の物理的な実現性について考える必要がある。たとえばタスク開始のタイミングや担当者は決まっているか、担当者のスキルは足りているかなどだ。計画の実行実現性について、会議体等でチェックし続けなければならない。
また、あるべき論でいえば、プロジェクト発足時にメンバーのスキルは必要充分でなければならないが、当然そうしたケースばかりとは限らない。プロジェクト進行中に予算やリソースなどの体制補強をしながら、実行実現性を継続的に確保していくことも重要になる。
実行実現性が精神論ではないか?
実行実現性を管理する3つ目のポイントは、計画が精神論に基づいていないかを見定めることである。すでにバイネームでプロジェクト体制が構築されている場合でも、プロジェクト目標に照らし合わせた際に非現実的な場合があるためだ。
実際に現場での実行が可能であるかを検証し、リスクや課題を見落とさずに把握することが重要となる。これにより、計画の実行中に予想外の困難が生じた場合にも、素早く対処し、プロジェクトの進行をスムーズにすることができる。
勘所③ プロジェクト断面の、ファクトベースによる状態可視化にこだわる
PMOは、プロジェクトの現状を常に俯瞰しながら、客観的に問題・原因・リスクを可視化し、周知する責任を担う。次項より実例をもとに具体的なアプローチ方法を解説していく。
ファクトベースによる状態可視化とは
ファクトとは、スケジュールの遅延やコミュニケーションロス、担当者のスキル不足といった事実を指す。状態可視化とはそうした事実に対して、発生原因や考えられるリスク/課題をドキュメント等で合理的に説明することをいう。
Backlog等のタスク管理ツールを活用し、誰もがいつでもプロジェクト全体を簡便に俯瞰できる状態にしておくなどのアプローチが一般的である。
実例その①「プロジェクト断面のサマリー」の例
現在における各社のステータスや期限といったプロジェクト断面をスライドにまとめることが有効である。ポイントは複数プロジェクトに横串を通し、網羅的に可視化することだ。
以下の例では、「移行における実行実現性の確認」と「詳細サイトマップの最終確定」が急務であり、Ph.1ローンチ時の品質低下とプロジェクトオーナー部門におけるローンチ後の負荷増大・集中がリスクとして周知されている。