成功事例1:マーケと営業で共通の目標を持ったセミナー運営で売上増
はじめに医療機器メーカーを例に、営業と同じ売上金額や受注率、商談化率をKPIに据えたデジマ組織の例をご紹介します。
この企業は医療機器を販売しており、特徴的なのは数多くのセミナーを既存顧客向けに開催していることです。医療機器メーカーにとっては、製品の導入よりも、導入してもらった医療機関においてスタンダードなメーカーになり、継続利用してもらうことが重要です。医療業界の特性もあり、セミナーは新規の引き合いを獲得するためのみならず、既存顧客の販売拡大のための重要な施策となっています。
セミナー集客は主に既存顧客へのメールマーケティングと営業からの声掛けで行っており、その7割をメールマーケティングから集客しています。セミナー終了時にアンケートをとり、営業からの詳細説明やデモを求める顧客を抽出する仕組みも確立しています。
このような一般的なデジタルマーケティング活動を担いながら、受注システムのデータを元に、セミナーを起点として前後半年において、セミナーに参加した顧客の売上増減をKPIとして追っています。
当然、セミナーの参加だけが売上増減に影響しているとは限りません。当該期間の営業活動や、他のデジタルマーケティング施策が影響している可能性も十分にあるためです。
しかし営業と同じ目標を追うことで、一体感が生まれ、どのようなセミナーを企画したら、前後の集客やフォローアップをどう改善したらより売上増に繋がるのか、様々なアイデアが生まれ、洗練された施策に進化させることが可能になります。
実際このメーカーは、過去の実績からセミナーへの参加が売上増にプラスの影響を及ぼすと判断し、現在も改善を続けています。同じ施策を打つのでも、目標を営業と共通にしたことで成果に繋がった事例だと思います。
成功事例2:行動履歴から抽出した見込み顧客のアナログ手段による共有
続いては、ある化学メーカーの事例です。
この化学メーカーではコンテンツをクリックしたユーザーリストを作成し、営業朝会の中で営業に配布。接点はあるものの営業からのフォローが手薄になっている人を抽出し、営業にフォローを呼びかける仕組みを作っています。
製造業では、「The Model」におけるシステマチックなスコアリングは必ずしも機能しません。なぜなら、「スコアの高い人」が「いま買う気がある」とは限らないからです。これは上述の検討期間の長さや、BtoB固有の計画・予算化の承認を経て、複数人で決済することが影響しています。そのため、スコアが高い順に「見込み顧客」として営業に共有しても、それが本当に見込み顧客とは限らないのです。
一方で営業は顧客企業と直接コミュニケーションを取っているので、部署や個人の役割、意思決定のスピード、持っている予算などを把握しています。彼らが行動履歴の情報を見ることで、「この部署のこの人が、このコンテンツを読んでいたのなら、すぐにフォローする価値がある」といったことが判断可能です。
この活動を通じて、製品購入を検討中のお客様にタイミングよくアプローチできた事例も多くあったと聞きます。また、既存顧客からの継続受注や、アップセルなどにも効果が出ているそうです。
共有手段が会議内というのも、成功したポイントだったと考えています。やはりデジタルデータで共有されるのと、会議内で確認するのでは、情報を受け取る営業の視点で分かりやすさが大きく違ったのだと思います。
成功事例3:マーケティング・営業共に利用可能なアセット整備
ある完成品メーカーでは、営業・デジマ組織が協働して顧客の「課題解決事例」を作成しています。顧客の名前を公開できないケースがほとんどであるため、オンライン上で公開されるコンテンツは、「よくある顧客の課題を、自社が解決した事例」といった構成になっています。このコンテンツは営業資料としてパワーポイントにもなっており、実際に営業が商談時に、自社のソリューション提案力を顧客に伝えるのにも役立っています。
また別の部品メーカーでは、過去に制作したホワイトペーパーや、ウェビナーのアーカイブをYouTubeに限定公開し、商談中の顧客に営業を通じて提供しています。
1時間程度の商談内で、自社のノウハウや実績を伝えきるのは困難です。その代替手段としてデジマ組織が作成した資料や録画データを営業が活用することで、受注率の向上を実現しています。
ここでの共通項は、営業・デジマ組織が協働して、共に利用可能なアセットを整備しているということです。
さまざまな企業がモノ売りからコト売りにシフトしていく中で、営業は高い課題解決・ソリューション提案力が求められています。そこで必要になってくるのが、「課題解決事例」「お役立ちノウハウ」などのアセットです。営業が現場で必要なアセットを、デジマ組織が作成する。この協力関係は、営業成果に直結します。
他方、デジマ組織から見ても、営業の協力が必要です。リード獲得や見込み顧客抽出のためのコンテンツが数多く必要とされる中、顧客をよく知る営業に協力を仰がないことには制作が難しいのがハードルになっています。
これらの事例は、双方の課題を協働することによって解決に向けて前進させた好例であるといえるのではないでしょうか。
成功事例4:営業活動のDX化をマーケが支援
最後にご紹介するのは、デジマ組織が営業組織の配下に入り活動をしている完成品メーメーカーの事例です。
この企業のユニークなところは、SFAの導入や運用定着支援、顧客データの統合管理、アセットの有効活用による営業活動の効率化、受発注のオンライン化など、営業DXの推進を担っている点にあります。
デジマ組織はデータの扱いやシステムの利活用に長けており、当然ながら自社の文化も理解しています。デジタル化の難しい営業組織を企業文化から変革し、データを用いて顧客の課題解決を実現する、理想的な営業DXをリードするのに、これほどふさわしい組織はないのではないでしょうか。
この活動はまだまだ道半ばですが、数年後にどのような成果を生み出すことができるのか、大いに期待しています。
デジタルとリアルの両輪で、会社の文化を変えうる組織に
このように、デジタルとリアルが2つの歯車となって営業活動を推進していくようになることは、会社の文化を変えていると言っても過言ではありません。「The Model」のように明確な境界線を引かずとも、営業と手を取り合うことで、デジマ組織は新しい役割を担うことができると確信しています。