BtoBマーケティングコラム 【初心者向け】GAを使った自社サイト分析に役立つ3つの下準備と視点

2024年6月3日

BtoBのサイト運営において、問い合わせフォームの入力件数や資料ダウンロード数など、具体的な成果指標を設定し、その達成状況を定期的に分析することは一般的な取り組みです。

しかし株式会社インフォネットの調査によれば、兼任Web担当者の3割が「サイト分析を行っていない」と回答しており、その理由で2番目に多かったのが「見るべき数値がわからない」「何から始めればいいのかわからない」とのこと。

このように分析設定の構築が不十分であったり、実際にどのようにサイトを改善すべきかの方向性が見えづらかったりするとお悩みの方はいるのではないでしょうか 。

そこで本記事では、サイト分析の経験が浅いご担当者向けに、現役アナリストの筆者がGoogle Analytics 4(以下GA4と表記)を用いてサイトの現状分析に取り組む上で役立つ3つの下準備と視点をご紹介します。

図1:サイトの現状分析に役立つ3つの下準備と視点

高度な設定を必要とせず、初心者の方でも比較的簡単に実施できるものばかりですので、ぜひご参考にしてください。

分析の下準備―課題が潜んでいそうなポイントの予想を立てる

サイト分析を成功に導くには、まずその前段階として、現状どのような課題が潜んでいるかを予測することが重要となります。GA4ではさまざまなデータを確認できますが、仮説を持たないまま数値を一つずつ見ても、散発的な気づきは得られるかもしれませんが、サイト改善の本質に迫ることはできません。

それでは、課題を特定するためにはどうすればよいのでしょうか。筆者がよく用いるアプローチは以下の3つです。

1.サイトの重要ユーザーと目的を振り返る

基本的なステップではありますが、まずはサイトの運営目的と重要ユーザーを振り返りましょう。

重要ユーザーは、どの業界や職種に属しているのか、どのような課題を抱えているのか、どのような経路を通じてサイトに到達するのか、そしてサイトで求める情報は何か、などを細かく洗い出します。

過去に作成したペルソナやサイトの訪問データなどのリソースがあれば、それらを今一度丁寧に確認することをおすすめします。こうした資料を改めて見直すことで、現状のサイトで改善が求められる部分や、ユーザーニーズに合ったコンテンツ施策はどのようなものかなどの大まかな検討がつくはずです。

一方で、これまでユーザーについての理解が十分でなかった場合は、この機会にペルソナの構築から着手し、そこから分析の方向性を定めていく必要があります。ユーザーに対する深い理解がなければ、適切な分析は行えません。

併せて、サイトの運営目的を再確認します。目的に応じて、サイト改善に向けて注目すべきポイントは異なってくるためです。

例えばリード獲得サイトでは、問い合わせやメルマガ登録などのコンバージョン数を重視し、認知度向上を目的とするコーポレートサイトでは、指名検索数が重要な評価指標になります。

2.自分が使いづらい、探しにくいと思う箇所を考える

自身でサイトを実際に使い、使いづらさや違和感を感じる個所を洗い出しましょう。ナビゲーションの分かりづらさ、コンテンツへのアクセスのしづらさ、全体的なユーザビリティの課題など、円滑なユーザー体験を阻害する問題点をリストアップすることで、サイトの抱える課題が見えてきます。

筆者がこれまでご支援してきたプロジェクトを振り返ると、以下のような課題が多くみられました。

  • グローバルメニューの数が多いことによるナビゲーションの複雑さ
  • 専門用語の過剰な使用による内容理解の難しさ
  • 行間が狭く、文章が詰まっていることによる読みにくさ
  • 文字サイズが小さいことによる視認性の低さ
  • 古い製品情報や欠如した検索機能による情報不足

また、かつては最新だったサイト構成や機能が、時間の経過とともに陳腐化しているケースも少なくありません。

一方で、自社サイトを日常的に利用する担当者は、使いづらさを見つけるのが難しい傾向にあります。そのような場合は、他部門のメンバーに協力を求めると効果的です。サイトを普段使わない者の新鮮な目線から、明確な問題点を指摘してもらえる可能性が高まります。

もちろん、分析を通じて課題を見つけ、その課題を深く掘り下げるためにサイトを確認するアプローチも有効です。

3.関係者へのヒアリング

サイトリニューアルやコンテンツ制作に携わった関係者へのヒアリングは、データだけでは見えにくい課題や改善の方向性を明らかにするための重要な手段です。特に、プロジェクト全体を俯瞰できる立場の関係者からは、過去の取り組みとその成果に関する幅広い示唆を引き出せるでしょう。

筆者が分析を担当したオウンドメディアでは、複数のカテゴリにわたってコンテンツを展開していましたが、分析対象が広範囲に及ぶため、重要課題の特定が困難でした。そこで過去の担当者へヒアリングしたところ、特定のカテゴリに注力していたことが判明し、優先的に分析すべき領域が明確になった経験があります。

このように過去の担当者へのヒアリングによって、課題の示唆を得られるだけでなく、分析の焦点をより明確に定められ、重要度の低い部分への無駄な注力を避けられます。

ヒアリングを行う際のポイントは、明確な目的意識とゴールを持つこと、そして現状の問題点を事前に共有し、具体的で建設的なフィードバックを求めることです。例えば「特定コンテンツがターゲットに届いていない」「回遊に課題がある」「ページ速度が遅い」などWeb分析の観点で具体的な課題や気になるポイントを提示することで、今のサイトをより良くするための議論につながると考えます。

サイトデータから仮説を立ててからヒアリングに臨めば、定量データと関係者の定性的な経験を掛け合わせられます。これにより分析の解像度が向上し、より有益な示唆を得られるでしょう。

分析に役立つ3つの視点

事前準備で仮説を立てたら、実際にサイト分析をして改善点の特定をしていきます。ここでは特に注目すべき三つの視点を紹介し、それぞれの視点がどのように分析に役立つかを説明します。

ターゲットが検索しそうなキーワードで自社のWebサイトは表示・クリックされているか

集客面に課題がありそうな場合、ターゲットが検索しそうなキーワードでサイトがどの程度検索結果に表示され、実際にクリックされているかを把握することが大切です。この分析を行うことで、サイトがターゲット層にうまく届いているかを評価し、必要な改善策を講じられます。

あるエレベーター会社では、エレベーターのリニューアルメンテナンスを検討している層をターゲットに設定していました。しかし、流入キーワードを確認したところ、「エレベーター保守」「エレベーターリニューアル」といったターゲットが使うであろうキーワードでサイトが表示されていないことが判明。この分析結果を手掛かりに、SEOやリスティング広告で狙うキーワードを最適化することができました。

注意点としては、自社サイトが上位表示されているキーワードばかりを確認していると、指名キーワードが大半のため有益な示唆が得られないことです。特にBtoB分野の専門性の高い商材では、全体的な検索ボリュームが低い傾向にあります。そのため、下位キーワードまで幅広く分析し、ニッチで価値の高いキーワードを見つけ出すことが重要です。

可能であれば、狙いたいキーワードの検索ボリュームや対策難易度などの定量データも合わせて確認すると、現状をより正確に把握できます。SEOツールはさまざまありますが、入門者の方は手ごろな価格で利用できるラッコキーワードやGyro-nなどから始めてみてはいかがでしょうか。

カテゴリ別でのユーザー行動分析

カテゴリレベルで課題がありそうな場合、カテゴリ別でユーザー行動分析をしてみましょう。 分析初心者の方は、個別ページや担当しているコンテンツのパフォーマンスに目が行きがちですが、ユーザーは複数のページを行き来しながらサイトを利用しているため、カテゴリ全体を見渡すことも重要です。
なおここで言うカテゴリとは、製品情報や事例、コラムなどの第一階層を指します。

カテゴリ別に分析を行うことで、大まかなユーザー行動を俯瞰的に捉えられ、具体的な課題や改善ポイントをより的確に特定しやすくなります。

例えば、「製品情報」カテゴリが高い離脱率を示している場合、製品内容が十分に伝わっていない、またはユーザーが求める情報が十分に提供されていないことを示唆しています。このようなカテゴリ単位での課題が見つかれば、カテゴリ構造や名称の見直し、コンテンツ改善、ナビゲーション改善など、適切な対策を検討する必要があります。

カテゴリ別の分析は、個別のコンテンツ分析だけでは見えにくい、サイト全体の課題や改善のポイントを発見する上で有効なアプローチです。

目玉コンテンツのユーザー行動分析

サイトの中で最も目立つ位置に配置され、多くの訪問者の目に触れる「目玉コンテンツ」のパフォーマンスを細かく分析することは、サイト全体の効果を最大化する上で極めて重要です。これらの主力コンテンツは、サイトの集客力やブランドイメージ向上を大きく左右する可能性を秘めているため、特に注目すべき分析対象となります。

目玉コンテンツの分析では、以下の指標に注目しましょう。

  • 直帰率
  • 平均滞在時間
  • 読了率
  • そのコンテンツに到達した検索キーワードや流入経路

例えば、特定のキーワードから目玉コンテンツに多くのユーザーが流入している場合、そのキーワードに関連したコンテンツの充実やSEO対策の強化が有効な対策になり得ます。

また、目玉コンテンツのパフォーマンスを正確に把握するためには、同じカテゴリに属する他のコンテンツや、目的が類似した異なるカテゴリのコンテンツとの比較分析も重要です。比較することで、相対的な優位性や改善ポイントが見えてきます。

まとめ

サイト分析では、事前の下準備が重要です。課題を予測し、仮説を立てることで、データ分析をより効果的に進められます。

仮説を立てたら、以下の視点に基づいて分析をしてみましょう。

  • 集客面に課題がある場合:検索ワード分析
  • 特定のカテゴリに課題がある場合:カテゴリレベルのユーザー行動分析
  • 特定のコンテンツに課題がある場合:目玉コンテンツの詳細分析

しかし、サイト分析には一定の知見と経験が求められます。入門者には適切な判断が難しい場合もあり、さらに競合他社や業界動向の把握も欠かせません。自社サイトが業界の中でどの程度のパフォーマンスなのか、競合との違いは何かを理解できなければ、改善の方向性を定めるのは容易ではないでしょう。

当社はBtoB領域での豊富な実績とノウハウを活かし、お客様のWebサイトを客観的かつ正確に分析・評価するサービスを提供しています。基本的な手法に加え、コンテンツの掘り下げた分析やユーザー行動の詳細分析(N1分析)など、多角的なアプローチで現状を把握し、具体的な改善施策を導き出します。

自社リソースだけでは分析が行き詰まる場合は、ぜひ一度当社にご相談ください。BtoB市場に特化した確かな知見を最大限に活用し、お客様のサイト改善をワンストップでサポートいたします。

著者プロフィール

河崎 怜
アナリスト

学習院大学にて政治統計学を専攻。卒業後、イントリックスに入社。国内大手BtoB企業に対し、デジタルマーケティング伴走や調査・ガバナンス系のプロジェクトに一貫して従事。
直近では、大規模サイトのアクセス解析や国内・海外企業のヒューリスティック調査から、企業の全社的なWebリテラシー向上のプロジェクトにいたるまで幅広い支援を行う。

    ■ 過去主要プロジェクト
  • 大手電気機器メーカー:競合調査・Webサイト戦略立案
  • 大手農業機械メーカー:Webリテラシー平準化、アクセス解析/改善提案
  • 大手印刷会社:競合調査・コンテンツ企画立案
  • 大手光学機器メーカー:グローバルWebサイト群戦略立案
  • など

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