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BtoBマーケティングコラム コンセプトが大事! 一貫性がないWebサイトのデメリットとは?
2024年11月14日
Index
サイト制作の軸 「コンセプト」とは?
Webサイト制作には、戦略、設計、コンテンツ企画、デザインなど、様々な工程があり、例えばデザインであれば「デザインコンセプト」のように、考え方の軸となる要素が存在します。
制作を進める際には、こうした軸=「コンセプト」を基にブレイクダウンし、各工程を具体化することで、思考の積み上げが容易になり、全体を通じた一貫性も保ちやすくなります。
せっかく費用をかけてリニューアルしたWebサイトでも、コンセプトという軸がなければサイト内のセクションごとに個別最適化されてしまい、サイト全体でチグハグな印象を与えることになってしまいます。
その結果、プロジェクトの進行そのものが滞るといった問題も高確率で発生します。
本記事では、そのような失敗を避けるため、コンセプトをしっかり設定するメリット、疎かにした場合のデメリット、そして良いWebサイトを構築するための具体的なコンセプト設計の方法について詳しく解説していきます。
コンセプトの決定方法
まずコンセプトとは何か、その設定方法や考え方を確認しながら、コンセプトへの理解を深めていきます。
解決すべき課題の明確化
コンセプトは、「そのサイトで解決すべき課題」を起点に考えることが重要です。
課題を具体的なコンセプトに落とし込むためには、漠然とした考えではなく、目に見える形にまとめることから始めてください。
まずは箇条書きで整理することをお勧めします。
例えば「古くなったから新しくしたい」などのようなシンプルな課題でも問題ありませんが、さらに掘り下げて「潜在顧客を開拓したい」「リードの質を高めたい」「自社の強みを広く伝えたい」「既存顧客をファン化したい」「グローバルに通用する情報発信をしたい」といった経営視点、営業視点、ブランディング視点、運用視点からの課題を考えてみてください。
しっかり解決すべき課題を言語化し、関係者間で共通認識を持つことで「リニューアルプロジェクトの真の目的」が明確になり、ブレることがなくなります。
「誰に」伝えるべきか
「誰に」伝えるべきかは、いわゆるターゲットの選定を指します。
普段の生活で、大人に対する話題や口調が子どもに対するものと異なるように、Webサイトでのコミュニケーションにおいても、伝えたい相手が受け取りやすいアプローチを取ることが重要です。
例えば、ターゲットを以下のように分類することができます。
- 顧客 or 投資家 or 求職者
- 潜在層 or 顕在層 or 既存顧客
- 若年層 or 熟年層
- 実務層 or 経営層
ターゲットの分け方や粒度はさまざまですが、リアリティを持たせつつ、あまり欲張りすぎず、できるだけ具体的に絞り込むことをお勧めします。
さらに例を挙げると、ターゲットがベテランなのか若手なのかによって、トレンドの採用量や読みやすさが変わってきます。
また、潜在層と顕在層とでは、目的とする情報へのスピード感や導線設計にも違いが出てきます。
このように、ターゲットが具体的であればあるほど、サイトの情報設計、コンテンツ企画、原稿執筆、デザイン制作における参考情報として活用しやすくなり、結果的にそれがWebサイトの一貫性にもつながっていきます。
「何を」伝えるべきか
ターゲットが決まったら、そのターゲットに対して「何を」伝えるべきかを明確にします。
具体的には、設定したターゲットに対し、何を伝えれば思いが届き、相手の課題も効果的に解決できるかを考えてみましょう。
伝えるべきコンテンツ表現の一例
- ブランドページ・ブランドムービー
- ホワイトペーパー
- 製品紹介動画
- ECコンテンツ
Webサイトの構成要素や表現には多くの選択肢がありますが、コンテンツの選定を行う際には、発信者の意図が先行しがちです。
情報発信の主目的は、自らの伝えたいことを効果的に届けることですが、それだけでは一方通行なコミュニケーションになり、ターゲットユーザーの関心を引くことが難しくなります。
大切なのは、一歩引いた視点で発信者の意図とターゲットユーザーの興味が交わるポイントを見極めることです。
「どう」伝えるべきか
「どう」伝えるべきかは、いわゆる「トーン&マナー」や「ボイス&トーン」に関連します。
表現面に直結する「サイトで解決すべき課題」としてよく話題になるのはWebサイトや企業そのものの印象変化です。
印象変化のためには、どのように語りかけ、どのような姿を見せるかを考えることが重要です。
具体的には次のような印象を求めことがあります。
- 先進的に見せる
- わかりやすさを重視する
- 優しい雰囲気を伝える
- 誠実さを表現する
実際に私が携わったプロジェクトの一例としては、祖業の事業イメージからの脱却をテーマとした企業のサービスサイトがあります。
このプロジェクトでは、Webサイトの顔であるトップページに未来志向の事業を表現した3Dアニメーションを配置し、ユーザーに対して大きな印象変化をもたらしました。
このように、求める印象を具体化することで、ターゲットへの訴求力を高めることが可能になります。
見える課題が制作に与える影響
ここからはコンセプト、つまり可視化された課題が具体的な制作フェーズにどのように反映されるのかを考えてみましょう。
例えばターゲットが実務職種の既存顧客であり、製品検索を使う方々であれば、すでに購買済みのサービスや商材への理解が進んでいると考えられます。
この場合、サイトの目的は別の商材への横展開やサイト内での回遊を促進することが重要な目的になります。
この目的を達成するためには、ページ設計時に関連リンクやピックアップコンテンツを要所に配置し、そこに組み込まれた遷移ボタンのデザインを主張度の高いものにすることが求められます。
また、実務職種のターゲットには比較的若い層が多く、現代的なトレンドを取り入れたコンテンツや表現手法が響くと考えられます。
このように、設定したコンセプトに基づいて制作物の形が大きく変化するため、アウトプットを具体的にイメージしながらコンセプト設計を行うことが非常に重要なポイントになります。
一貫したコンセプトが不在のWebサイトのデメリット
もしもコンセプトが存在せず、Webサイト全体の一貫性が欠如している場合、どのような問題が起こりうるでしょうか。
以下に代表的な4つのデメリットを説明します。
1. ユーザーの印象を損なう
ブランディングの基本的な考え方には「すべてのタッチポイント(ターゲットとの接点)で同じ印象を持たれること」があります。
発言に一貫性がない人物の言葉は信用されにくいものですが、企業ブランディングやWebサイトでも同様のことが言えます。
例えば、ある企業が企業メッセージで「顧客に優しい企業」を謳いながら、問い合わせフォームが見つけにくい不親切な構造だった場合、ユーザーは混乱しかえって信頼を損なう可能性が高まります。
このような状況を避けるためには、明確なコンセプトを定め、一貫したコミュニケーションを実現することが不可欠です。
2. 利用者が使いづらいと感じる
Webサイトにはボタンや見出し、ラベルなど、UI(ユーザーインターフェイス)と言われる要素があります。
仮にこれらの要素がページごとにコロコロ異なると、ユーザーは再学習を強いられストレスが溜まります。
例えば、Aページで「見出し」と認識した要素が、Bページで異なれば「Aページで認識したものと同等の要素はどれ?」と再度探す必要が出てきます。
このような小さなストレスが積み重なると、「このサイトは使いづらい」という印象を持たせる結果につながります。
従って、ユーザビリティの観点からも、一貫したコンセプトが重要となるのです。
3. プロジェクト進行が遅延する
Webサイトの制作プロジェクトには、プロジェクトチーム、事業部、広報部、デザインセンター、経営層など、さまざまなステークホルダーが関与します。
各ステークホルダーがそれぞれの主観で好き勝手に発言をすれば、収拾がつかなくなり、設定したスケジュールに間に合わなくなるリスクが容易に想像できます。
このような事態を避けるために、「その発言はコンセプトに沿っているのか」の一点を判断基準と定め、ステークホルダー全体に強く意識させることがプロジェクトの円滑な進行に寄与します。
4. 運用が滞るリスク
Webサイトは、完成したことがゴールではなく、そこから運用が始まります。
そういう意味では、むしろ完成時が本当のスタートラインとも言えます。
しかし、明確なコンセプトやルールが定められていない場合、各担当者が独自の判断で運用や更新作業を進めてしまうことがあります。
例えば、新規で自社の強みを語るページを追加することになったとしましょう。
その際、コンセプトやルールが存在しなかったら、コピーの語り口はどうすれば良いのか、メインで使うべきカラーは何色かといった判断を追加や更新のたびに一から考えなくてはならず、結果、それが運用のもたつきにつながってしまいます。
これを防ぐためにはWebサイト全体のベースとなる考え方であるコンセプトや、また、それに基づく制作やデザインのルールを定めることが重要です。
コンセプトの全体構造
では、どのようにコンセプトを立てていけば良いのか、全体像を把握しましょう。
コンセプトワーク全体を理解する
コンセプトは、大きな概念から具体的な実制作の基準となる小さな概念まで、階層構造を持っています。
それら企業の最上位概念である企業理念やMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)から始まり、マーケティング戦略やブランドガイドラインなど、企業全体を包括したものから、Webサイト独自の方針やルールに至るまで、さまざまな粒度の考え方をもとに設計を行います。
また、社内だけでなく業界全体における位置付けや競合他社との比較、ターゲットとの関係性も重要な要素です。さらに、これらの領域の幅だけでなく、未来に向けた計画など、時間軸を伴う考え方も関わってきます。そのため、広い視野で大きく捉えることが求められます。
無理せず行うことが肝心!
ここで大切なのは、革新的なアイデアを追求するあまり無理な計画を立てず、まずは実現可能な範囲で進めるべきだということです。
例えば、UX調査やマーケティング、ブランディングなど、コンセプトワークとして深掘りできる要素は多岐にわたります。もちろん、これらをすべて掘り下げて完璧なサイトコンセプトを目指すことは素晴らしいですが、予算やスケジュールの観点から考えると、ほとんどの場合それは現実的な選択とは言えません。
これまでさまざまなプロジェクトに関わった私の実感としても、改めて詳細なリサーチを行わなくても、経営方針やMVV、中期経営計画などの材料でコンセプトの筋道を立てられることが意外に多いと感じています。
まずは、既存の資産を最大限に活かし、無理のないコンセプト設計を進めましょう。
コンセプト設計の具体的な手法
ここからは、コンセプト設計を行う際に必要な、代表的な5つの手法を具体的にご紹介します。
他にもさまざまな手法がありますが、プロジェクトの方向性や質に応じて適切な手法を追加・削除することが可能ということを念頭にお読みください。
1.リサーチ
いわゆる3C(自社、競合他社、ターゲット)や業界内でのポジショニングを調査します。
前述した企業理念やMVVなど、既存の情報資産を整理し、Webサイトの方向性に合致する要素を見つけてまとめることが重要です。
とても有用な工程なので、スケジュールや予算制約があってこの調査のみの実施になったとしても、コンセプト設計の効果を十分に実感できるでしょう。
2.ヒアリング・アンケート
プロジェクトメンバーや経営層、現場の社員に至るまで、さまざまな視点からインタビューを通じて生の声を収集します。
時間が限られている場合や、より多くの意見を集めたい場合は、アンケート方式にするなど、状況に応じた手法の選択が重要です。
また、質問内容を工夫することで、自社の印象調査としてインナーブランディングに活用することもできます。
3.ワークショップ
自社の印象を客観的に理解できている社員は意外と少なく、外部からのアプローチによって潜在的なイメージが顕在化することがよくあります。
例えば手法のひとつ「ブランドビンゴ」では、単に問いかけるのではなく、考えるきっかけを生み、自社に対する認識を深堀りすることができます。
この工程は一定の人数と時間(まる1日かかることもあります)を要するため、施策としてのハードルはやや高いですが、潜在的な課題を拾えるだけでなく、参加型のアプローチにより社員の自分事化が促進されるため非常にお勧めの施策です。
4.ワーディング
コンセプトの役割は、すべての関係者が同じゴールに向かうための旗印となりますが、調査結果や気づきが漠然としたままでは、明確な指針にはなりません。
そこで、すべてのステークホルダーが理解できる分かりやすい言葉で、短く具体的なフレーズに落とし込む「ワーディング」が重要となります。
この工程は非常に繊細であり、ニュアンスを慎重に調整し、全員が共通理解できる言葉を選ぶ必要があります。
ですので言葉だけでは理解が難しい場合、複数のフレーズを組み合わせたり、図にして視覚的に示したりすることで、より分かりやすくするといった工夫も有効です。
5.ガイドライン化
ワーディングで設定されたフレーズは全体の方向性を示しますが、各要素の具体的な指針としては抽象的すぎることがほとんどです。
例えば、「明るい」という言葉がフレーズに含まれていても、それに相応しいカラーやデザインが何に当たるのか、すぐに結びつかない場合があります。
そのため、各工程での明確な指標となるトーン&マナー、ボイス&トーン、ルールといった具体的な指標への具体化が必要となります。
これが「ガイドライン化」で、このガイドラインによりブレのない一貫性のある進行をスムーズに行うことができるのです。
一貫したコンセプトでWebサイトを構築するイントリックス
コンセプトなしでWebサイトを作成することは、コンパスなしで大海原を航海するようなものです。
この指針の有無によって、規模や要素の多寡に差はあれど、アウトプットの質が大きく左右されることを理解してください。
イントリックスでは、以下の図のようなさまざまな分野のプロフェッショナルがそれぞれの専門領域を深掘りし、横方向に連携してWebサイトを構築します。
とくに特徴的なのは、一般的なWebサイト制作プロダクションに比べ、調査・戦略・設計などのコンセプトや思想分野に特化したプロフェッショナル人材が豊富なことです。
それによりマクロとミクロ、全体とディティール、それぞれのバランスを保ちながら、一貫したコンセプト設計を行うことができ、結果としてスムーズな進行を実現しています。
時間と労力を無駄にしないために
ここまでお読みいただいた皆さまの中には、「難しそうだし、時間がないから、何でもいいから形にしてほしい」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、本記事で紹介した工程がなくても、Webサイトを形にすることは可能です。
しかし、もしコンセプト不在が原因で、異なるターゲットに向けた発信を行なった場合、大きな時間と予算をかけたそのコンテンツには果たしてどれほどの価値があるのでしょうか?
スケジュールや予算など、プロジェクトごとの事情に応じて、コンセプトワークのボリュームや進め方は調整できます。まずは、難しく考えずにプロに相談してみてください。
意外と少ない工数で、成果につながる方法を見つけられるかもしれません。
著者プロフィール
多摩美術大学を卒業後、番組制作やMV制作に携わったのちにWebデザイナーとなる。
その後、アートディレクターとして2019年にイントリックス株式会社に入社。
大規模なサイトリニューアルプロジェクトにおいて、デザインルール策定から個々のページデザインまで通してアートディレクションを行っている。
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